勇者達
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第四章
「今からそれを森に宣告する、いいな」
「好きにしろ」
長老は武装し赤く濁った目で勝利を確信している下卑た目で見ているゴブリン達に応えた、彼は今も冷静なままだった。
程なくして森にゴブリン達の『命令』が伝えられる。それを聞いてだった。
エルフ達は最初は戸惑った、だがだった。
既に森の周縁に来ていた彼等はそれぞれ顔を見合わせてこう言い合った。
「ではな」
「長老が仰ったことを信じよう」
「ああ、今からな」
「攻めよう」
「こうしよう」
こう話してだった、彼等は。
ゴブリンの陣地に総攻撃を仕掛けた、まずはその魔法と弓矢で。様々な種類の攻撃魔法が陣地に炸裂する。
炎に風、雷、吹雪に木が光が。その全てがゴブリン達を襲った。
そしてそこにさらに矢が来る、魔法に吹き飛ばされ身体を裂かれる彼等をさらに貫いていく。
これにはゴブリン達も驚いた、それで多くの者が首領に言った。
「首領、人質を無視してきました」
「こうなれば」
「ああ、わかってる」
首領も彼等にすぐに返す。
「最初からそのつもりだったしな」
「こいつを殺しましょう」
「今ここで」
ゴブリン達は長老を見て言った、
「エルフは指導者をなくします」
「そうなれば後が楽です」
「よし、じゃあな」
巨大な刀を抜いてだ、首領は長老を見据えた。
「御前には死んでもらう」
「その刀でわしを斬るか」
「その首を叩き落とす」
そうするというのだ。
「出来ればじっくりと嬲り殺しにしたいがな」
「悪趣味じゃのう」
「そんなことを言っていられるのもな」
「今のうちじゃな」
長老の方から首領に告げた。
「そうじゃな」
「ああ、手前はすぐに殺さないといけないがな」
それでもだとだ、首領は残忍な笑みで長老に告げた。
「他のエルフはそうしてやる」
「女子供もじゃな」
「ゆっくりとな、地獄でその有様を眺めるんだな」
「生憎じゃがそれは出来ぬ」
冷静そのものの声でだ、長老は返した。
「御前さんにとっては残念じゃがな」
「減らず口か」
「エルフは減らず口は言わぬ」
長老はエルフの倫理観から答えた。
「嘘も言わぬしな、真実しか言わぬ」
「じゃあ今の言葉はどういう意味だ」
「わしは御前さんには殺されぬ」
長老は今度ははっきりと言い切った。
「そして地獄に落ちるのは御前さん達じゃよ」
「何っ!?」
「今からそうなることを見せよう」
こう言ってだった、長老は全身に黄金の光を宿らせた。そのうえで言うのだった。
「この陣地にこの魔法を使ってな」
「!?その魔法は」
「雷系の最高の魔法じゃよ」
それを使うというのだ、今から。
「敵だけを狙って辺り一体を吹き飛ばすな」
「なっ、それを使ってか」
「御前さん達を吹き飛ばす、安心せよ」
このことも真実だった、やはり長老は嘘を言わない。
「エルフは嬲り殺しにはせぬ」
「くっ、手前最初からそう呼んでいてか」
「魔法は使えるからのう、封じられぬ限り」
ゴブリン達は自身の策略に慢心していた、長老にそれを行うことを忘れていた。だがそれでもだった。魔法を封じても。
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