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魔法をもらって

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第五章

「あの爽やかなお顔」
「爽やか!?」
 ここで菫礼は気付いた、遥が自分が見ているサングラスの刑事を見ていないことに。彼女が見ている相手はというと。
「先生、ひょっとして」
「確かにサングラスの刑事さんもいいけれど」
 それでもだというのだ。
「お隣のあの人」
「若い刑事さんですね」
「何あの人、滅茶苦茶格好いいじゃない」 
 目を完全にハートマークにさせての言葉だ。
「デカ長の若い頃そっくりよ」
「また西部警察ですか?」
「そうよ、いやリアルデカ長よ」
 その人の若い頃だというのだ、残念ながら故人になってしまった。このことは日本にとって大きな損失であった。
「美男子過ぎるわ」
「ううん、私はむしろ」
 菫礼も菫礼で言う。
「あのサングラスの人の方が」
「よかったわ、一緒の人を好きにならなくて」
「あっ、そのことは確かに」
「そうよね、いや本当にあの人格好良過ぎよ」
「それで先生確か」
「彼氏いないから」
 だからだというのだ。
「若しあの人に誰かいないならね」
「アタックですか」
「さて、それじゃあね」
 好きな相手が出来た、それなら遥もだった。
「一気にいくから」
「一気にですか」
「そう、お化粧もして服も買って」
 彼氏がいないからそうしたことにこれまではさぼりを決めていたというのだ。
「がんがんやるわよ、ファッション雑誌も買って」
「じゃあ私も」
「一緒にね」
 まさにそうしてだというのだ、菫礼にも言う。
「やっていきましょう」
「わかりました、何か凄いことになってきましたね」
「凄いのよ、恋は」
「魔法だからですか」
「そうよ、じゃあ変身するわよ」
 両目をハートマークにさせたままでの言葉だった、見ればハートマークは周りにもどんどん発散させていた。そうして。
 遥は自分も綺麗にした、ファッション雑誌をどんどん買いそこから自分に合う外見を見付けて飾っていった、菫礼にも彼女の外見を見てからそうした。
 そして二人共お互いを見て言うのだった。
「ばっちりよ、刈谷さん」
「先生も」
 二人共今のお互いを見てにこりと話す。遥はボーイッシュなズボンと上着をアメリカのロッカーの様に着ていてメイクも薄めでそれでいてスポーティな感じにしている。菫礼は背伸びしている感じがあるがピアノの発表会に行く前のお嬢様の様だ。
 その姿をお互いに見てだ、それで話すのだった。
「それならね」
「大丈夫ですよ」
「じゃあ今からね」
「警察署の中に」
 行こうと話してだ、そしてだった。
 二人で警察署の中に行く、すると都合のいいことに入ったすぐそこにある署の受付の前に二人共いた。そこの自動販売機で缶コーヒーを飲んでいる。缶コーヒーを飲むその姿も実に絵になっている。
 その二人にだ、まず遥が声をかけた。
「あの、少しいいでしょうか」
「はい、何か」
 サングラスの刑事が応えて来た、その声も実に渋い。低音でしかも端正である。滲み出るダンディズムがそこにある。
「我々に」
「お名前を聞きたいのですが」
「草加哲也です」
「乾裕次郎です」
 サングラスの刑事だけでなく若い刑事も答えてきた。 
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