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魔法をもらって

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第三章

「わかったわね」
「まずは相手を見付けて」
「一途に好きになるのよ」
 そうすれば綺麗になるとだ、遥は明るい笑顔で菫礼に教えた。菫礼は遥の話を聞いてまずは好きな相手を探した。
 菫礼が知っている優しくて格好いい人というとだ、まずは兄を思いついた。彼女の兄は妹にかなり優しいからだ。
 しかしだ、遥に言われたことを思い出してそれは思いとどまった。
「兄弟は駄目なのよね」
 何故駄目かは深く考えずに止めた。そしてだった。
 浮気をする様な人や意地悪な人も外した、自然と女の人や女の子もだ。
 そうして自分が好きになる相手を探した、だがこれがだった。
 探しても探しても見つからない、周りの男の人にそうした人は見つからなかった。それで菫礼は困った顔で遥に言った。
「すいません、まだ」
「見つからないのね」
「はい、好きな人が」
 それがまだだというのだ。
「見つからないです」
「そうなのね、焦ったら駄目よ」
「すぐに見つけなくてもですか」
「そのうち見つかるから、それまではね」
「それまでは?」
「テニス頑張ってね」
 言うのはこのことだった。
「あと牛乳を飲むことをね」
「そうしてます、どっちも」
 実際に今もテニススクールにいつも通っていて熱心に練習をしている、その為テニスの腕はどんどんよくなっている。
 そして牛乳も飲んでいる、健康なことは健康だ。それで遥にも明るい笑顔ではっきりと答えることが出来たのだ。
「それは続けていいんですね」
「そうよ、どんどんね」
「何か最近」 
 遥を見て言う、遥は今もジャージ姿だ。そして菫礼も遥と同じジャージデザインのサイズが違うだけのジャージを着て髪型もそんな感じにしてきている。
 その外見でだ、こう言うのだ。
「先生みたいになりたいなって。けれど」
「あっ、女の人を好きになることはね」
「駄目ですか?」
「駄目じゃないけれどもうちょっと先よ」
 こう笑顔で言う遥だった。
「男の人に恋をしてからね」
「それからですか」
「そう、女の人を好きになってからね」
 それからだというのだ。
「いいわね」
「わかりました、じゃあ」
 このことについても素直に頷いた菫礼だった。
「女の人は」
「日本は女の子が女の人を好きになってもいいのよ」
 ただ遥はそれが何故かは話さなかった、文化的宗教的な考えが色々と入っていて複雑だからである。だから話さなかった。
「それでもね」
「まだですね」
「そう、まだよ」
 こう話すのだった。
「男の人を好きになるのよ」
「じゃあこれからも」
「ええ、探してね」
「わかりました」
 菫礼はこの時も遥の言葉に頷いた、そしてだった。
 これまで通り好きになる、恋をする相手を探した。そして遂にだった。
 その相手を見つけた、相手は年上だった。しかも。
 年上だ、渋いダークカラーのスーツに白いトレンチコート、角刈りにサングラス、引き締まった顔立ちに鋭い目である。そして口には煙草がある。
 その人を見てだ、菫礼は瞬く間に心を奪われた。その人は菫礼達のいる街の警察署に堂々と入っていた。それですぐにだった。 
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