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セブンス・ヘブン

作者:夢兎
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第0話 捻じ曲がった幸福論

 
前書き
物語の序章です。
一部宗教関連の用語、思想が出ていますので苦手な方はご閲覧をお控えください。 

 
ーー人間は皆平等に幸せになることなどできない。

それはどうして?

彼は答える。
答えは至って単純かつ明快。
ヒトが幸せと感じることは必ずしも一定ではないからだ。

では幸せとは何か、と問いかけると
それは哲学だから僕さえも知ることのない未知の領域なのかもしれないね。

彼は笑っていた。

幸せになることが本当に幸せだと思ったら大間違いだ。
ヒトは幸せになった瞬間、幸せは日常へと変化してしまう。
だってそうだろう?元来、五体満足であることにも幸福を感じてもいいはずなのに、ヒトはそれを「普通」と捉えてしまうんだ。
それと同義だろう、ヒトという生き物は自分が幸せと感じる瞬間なんてほんの一瞬、若しくは断片的に「あの頃は幸せだったなぁ」と遅すぎる余韻に浸ることしかできないのだ。

哲学を未知の領域と形容していた割りに、彼の回答には哲学めいた何かを感じた。

では人間は永遠に幸福になれないんですか

彼はまた笑っていた。
どこか悲しげな面持ちを残しながら。

僕はこれから幸せに感じること、即ち幸福になることなどできないだろう。

だからこそ君たち、若い世代に未来を託したいと思うのだ。

仏教の六道とは聞いたことがないかい?
そうだ、この世以外に他に5つの迷いある世界があると信じられている。

1番下は地獄。文字通りの過酷さだ。

次に餓鬼。ここにいる限り、飢えと渇きに苦しむ。

次は畜生だったか。犬や猫、牛や馬なんかもこの世界の住人だ。

上から3つ目の阿修羅。仏教の守護神なんて俗名もある。

1番上は何か知ってるか?
そうだ、天だよ。
君が小さい頃、天についての話を聞いたことがないかい?
聞く限りでは1番素晴らしい世界だよ。

では人間界は?

上から2番目だよ。
天界の次に素晴らしい世界だぞ?信じられるか?
苦の具現化とも言えるこの世がそんなにいいものなのか?

だからこそ、だ。

彼は一呼吸おいて話を続けた。

元来、人間界はもっと幸せに満ち溢れているべきだと思うのだ。
僕は仏教信者ではないが、この考えだけは尊重したいと考えている。


でも幸せは先程、存在しないとわかったのでは?


存在はするさ。
ただヒトの感性で追いつけるものではないってだけでね。
ならどうすればいいか?

彼は先程の悲しみを含んだ笑みとは一転、人の悪い笑みを浮かべた。


幸せを、継続的に感じさせれば、いいだろう?
 
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