戦国異伝
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第百六十三話 紀伊での戦その四
「最早」
「そうであろうな。とてもな」
「はい、流石に」
「ではじゃ」
ここまで聞いてだ、また言う顕如だった。
「今はあの者達のことは考えずにじゃ」
「はい、織田家ですな」
「織田信長をですな」
「そうじゃ、仏敵を倒さねばならんが」
それでもだというのだ、今はだ。
「その為には今生きなくてはならぬ」
「だからこそ公方様のご仲裁を受けますか」
「とりあえずは」
「僅かでよい」
仲裁により和議を結ぶがその和議の期間もだというのだ。
「その僅かな間にな」
「他の大名家と手を結ばれるのですな」
「そうじゃ」
まさにその通りだというのだ。
「ここはな」
「そうして、ですか」
「和議の刻限が来れば」
「また兵を挙げる」
他の大名家と結んだうえでだというのだ。
「まずは毛利、そして東の武田にじゃ」
「他にもですか」
「ありますか」
「上杉、北条ともじゃ」
北陸、東国で覇を唱える両家ともだというのだ、手を結ぶというのだ。
「上杉家とはまだ揉めておるがな」
「ではそれもですか」
「こちらが矛を収めて」
「そうする」
まさにだ、そうするというのだ。
「わかったな」
「では」
「その様に」
高僧達も頷いて応える、そうしてだった。
本願寺は義昭の申し出を受けることにした、とはいっても幕府からの使者はまだ都から発ってもいない、その時点でも手を打つことにしたのだ。
本願寺でこのことが決まっている時にだ、対する織田家はというと。
紀伊が門徒達、闇の衣の服を来た彼等と対峙していた。その門徒達の数はこの紀伊においても相当なものだった。
「殿、その数にしまして」
「どれ位じゃ」
物見から帰って来た佐々にその数を問うた。
「一体」
「二十万を越えております」
「そうか、減ってはおらんな」
「では、ですな」
「戦う、しかしじゃ」
「しかしとは」
「ここは敵に攻めさせよ」
ここでこう言った信長だった。
「よいな」
「あちらにですか」
「そうじゃ、先に攻めさせよ」
こう言うのだった。
「それでこちらは退きじゃ」
「では鶴翼ですか」
「違う、左右に兵を置いてじゃ」
あらかじめて、伏兵の様に置いてだというのだ。
「誘き寄せる者達はそこまで逃げてじゃ」
「そして敵が来たところで」
「倒す」
まさにだ、、そうするというのだ。
「言うならば釣り野伏せじゃ」
「では」
「それとじゃ」
さらにだというのだ、信長はさらに言った。
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