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久遠の神話

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第百一話 託すものその十五

「一本気で努力家で」
「彼ならです」
「戦いを終えられるか」
「間違いなく」
「やってくれます」
「そうか、私個人としてもな」 
 ここでだった、一佐は確かな顔で己の考えを述べたのだった。彼のその考えは一体どういったものかというと。
「エゴを求め殺し合う戦いはな」
「あってはなりませんね」
「絶対に」
「戦いは避けられない時もある」
 そうした時もある、このことは自衛官としての言葉だが彼個人としての考えもあった。
「しかしな」
「しかしですね」
「それでもですね」
「そうだ、それは誰かを守る時だ」
 あくまでだ、その時に戦うべきだというのだ。
「自分の目的の為に戦ってはならない」
「だからですね」
「一佐にしましても」
「剣士の戦いはあってはならない戦いだ」
 到底、というのだ。
「絶対にな」
「そうですね、では」
「この戦いは」
「私としてもな」
 真剣な面持ちでだ、二人に話す。
「終わらせるべきだと思っている」
「若しも、ですよね」
 高橋も一佐に述べる。
「凶悪犯が自分が絶対に捕まらないことを願って戦って生き残ったら」
「大変なことになるな」
「世界征服を願う独裁者とか」
「そうした奴も過去にはいただろうな」
「そして生き残ったこともですか」
「あっただろうな、独裁者はいなかった様だがな」
 今まで世界を征服した者は一人もいない、一佐はこのことからそうした人間はいても生き残らなかったというのだ。過去の戦いにおいて。
「しかし極悪人はな」
「いたかも知れませんね」
「そんな奴が捕まらないとな」
「それこそ大変ですね」
「そういうことも有り得る」
 だからだというのだ。
「私は剣士の戦いはな」
「あってはならないとですね」
「そう思っている」
 まさにというのだ。
「絶対にな」
「そういうことですね」
「だからこそ」
「エゴを求める戦いはあってはならない」
「だから一佐も」
「この戦いは」
「ここで終わらせるべきだ」 
 まさにだ、この戦いでだというのだ。
「絶対にな」
「二度とエゴのぶつかり合いが起きない様に」
「それで誰も殺し合わない様に」
「絶対にですね」
「ここで」
「正直君達が悪人でも野心家でもなくてよかった」
 こうも言う一佐だった、今度は二人に。
「若し君達が任務に背いてエゴを求めていたらな」
「その時はですか」
「今以上に厄介なkとになっていましたか」
「五人もな。この戦いを最初から否定している剣士がいてよかった」
「そしてですね」
「他の。エゴを求める剣士の人達も目的が得られれば、という人達だったから」
「エゴを求めてもな」
 それでもだったというのだ、これまで降りた剣士達も。
「まだよかった、悪人はいなかったからな」
「戦う必要がなく求めるものを得られれば満足という剣士ばかりで」
「よかったですね」
「本当にな。よかった」 
 一佐は心から言った。
「私もそう思う」
「厄介なのは魔の剣士です」
 加藤、彼だとだ。工藤は一佐に言った。
「彼だけは」
「純粋に戦いたいだけか」
「はい、戦闘狂です」
「そこには倫理はないな」
「人は殺しませんが」
「しかし戦いそのものに快楽を見出している」
 そうなると、というのだ。
「そうした人間はな」
「戦いを止めませんね」
「止めるべきだがな」
「はい、戦いを終わらせる為には」
「そうなるな。まあ話はこれで終わってだ」
 一佐はここで壁にかけられてある時計の時間を無意識のうちにチェックした、そのうえでこう言ったのだった。
「仕事が終わったらな」
「はい、その時は」
「いよいよですね」
「焼き鳥だ、好きなものを好きなだけ飲んで食べてくれ」
 笑ってだ、一佐は二人に述べた。
「そうしてくれ」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
 二人も応える、そしてだった。
 二人はこの日焼き鳥とビールや焼酎を心ゆくまで楽しんだ。そのうえで大石とマガバーンの闘いの結果を聞いてさらなる笑顔になったのだった。


第百一話   完


                             2014・3・4 
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