検索失敗の異世界録
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そう……巨龍召喚
「おー、おっきな水樹ですね~」
私は手すりから体を乗り出して、見える光景に感動します~。
これはまた、中々ですね~。
「二人もそう思いませんかぁ?」
「アタシとしては、この格好をどうにかして欲しいんだけど・・・」
「いい加減に諦めたら?」
斑ちゃんにまで言われちゃってますね~。
うんうん、もうそろそろ諦めてくださ~い。
「いや、これでもアタシは悪魔なのよ!?」
「知ってますよ~。プリムちゃんは、サタンの娘ですからね~」
「それに、ちょくちょく本拠でも悪魔の姿になってるじゃない」
「だったら・・・!」
プリムちゃんはそう言いながら伏せていた顔を上げ、一言。
「アタシにシスター服を着せるのがおかしいことくらい、分からないのかしら・・・!?」
そう、言ってきました~。
え~、でも・・・
「だからこそ、いいんじゃないですか~」
「相変わらずの自由っぷりね!?」
むしろ、どうせそれを着るなら悪魔の格好になって欲しいんですよね~。
「はぁ・・・まあいいわ。アタシ達は挨拶をする必要も無いんだし、早く宿舎に向かいましょう」
「は~い」
「そうね。ノーネームに挨拶は押し付けたんだものね?」
む~、人聞きが悪いですね~。
「押し付けた、では無くて任せたんですよ~」
「そうそう。同盟関係は上手く使わないと」
「・・・なんだかんだ、貴女たちって似てるわね」
そうですかね~。なんだか嬉しいです~。
△▼△▼
「ふぅ・・・で、どうしますかぁ?まだまだ時間が有り余って増すけど~?」
「そうね・・・巻き込まれるのが面倒だからって、早めに出たのが裏目に出たわ・・・」
とりあえず、私達もフルートちゃんとリバー君を置いてきましたから、そこまで気にしなくてもいいと思うんですよね~。
「どうしますかぁ?何か、することとか有りましたっけ~?」
「何にもないわね。となると、何か暇つぶしを考えないといけないんだけど・・・」
急に言われても、暇つぶしなんて無いですよね~。
倉庫の中にはトランプとかありますけど、このメンバーではルールから教えないとですけど、それさえ覚えてくれれば時間は潰せますかね~。
・・・さすがに、一日中それで、と言うのは無理がありますね~。
「せめて、今日だけでも時間を潰せればいいんですけど・・・」
「・・・あ、そうだ。それなら一つ案があるわ」
プリムちゃんはそう言って、手を上げてきました。
「なんですか~?」
「葵の話を聞かせて」
話し、ですか~。
「それだけのギフトを持ってるんだから、元の世界でも中々に面白いものがありそうだし・・・何より、どんな生活をどこで送ってたのかとか、気になるし」
「確かに、それは有るわね。少なくとも、非日常的な経験くらいはあるはずだし」
「あらあら、何でですか~?」
「だってアンタ、最初ッから自分のギフトについて知ってたじゃない」
なるほど、それは確かにそうですね~。
あのギフトは、普通に生活していたんじゃ使い方なんて分かりませんから~。
「そうですねぇ・・・では、箱庭に来た日のことをメインに、色々とお話でもしましょうか~」
ほんの数ヶ月前のことなのに、もう懐かしいですね~。
▼△▼△
私は元々、捨てられてたそうです~。
覚えてはいませんけど、まだ一歳くらいのころに拾われたんですよね~。富士の樹海、その奥の奥で。
その人は孤児院を経営していて、一応私の父親みたいな立場だったんですよね~。一回も、そう口に出して呼んだ事は無いですけど。
で、その日は父さんが朝食の材料を採りに富士の樹海を歩いていて、そこでたまたま見つけたそうです。たまたまにしては、出来すぎだと思いません?
そのままその人の孤児院で、箱庭に来るまで暮らしていました~。
といっても、数年前に父さんは死んでしまいましたけど。
では、私が元の世界にいたころの、一番の非日常。箱庭に来たその日のことでも語るとしましょうか~。
「さて・・・もう皆寝ちゃいましたね。今日も皆、よく食べたものです~」
食器類から脱ぎ散らかされたものを片付けて、洗濯機と食洗機を回してから、私は紅茶を淹れて・・・
「あらあら、こんな時間にどうしたんですか~?」
「いやいや、むしろこんな時間でもないと落ち着いて話なんて出来ないじゃないか」
いつの間にやらテーブルについていた人を見て、私は声をかけました。
まあ確かに、ちびっ子達が起きているんじゃ真面目な話なんて出来ませんから~。
「あなたも飲みますか、紅茶?」
「うん、貰うよ。いや~、いつもながら悪いね葵ちゃん」
「いえいえ、気にしなくていいんですよ~、ミカさん」
そう言いながら、いつもながらチャライミカさんの前にも紅茶を置いて、ついでに手作りのお菓子も置いておきますかね~。
一応、お世話にはなってますし~。
「ここへの寄付、それにミカさんのお知り合いが後見人をしてくださっていますしぃ。そうでなかったら、ここにいいる皆は後見人がいなかったんですから~」
後見人がいないのは、色々と面倒ですからね~。
お金については最悪、バイトしたり盗んだりすればいいんですけどね~。
「それで、今日はどういったご用件ですか~?」
「ん?ああ、いやいや。今日はここについての用件じゃないよ?」
「違うんですか。珍しいですね~」
「確かにそうかもね。ちなみに、葵ちゃんに用が有ったりする」
「私に、ですか~?」
意外ですね~。
ミカさんは父さんのお友達らしいですけど、だからってあの人みたいな理由ではないと思うんですけど・・・とはいえ、私に、となるとあれ以外にはないんですよね・・・
「うん。ちょっと聞きたいことがあってさ。今日、何か普段とは違うことって無かった?」
「今日、ですか~?」
そうですね~・・・
「ナンパされましたよ~?」
「去年は多かったけど、今年に入ってからは一回目かな?」
「ですね~。まだこの町にあんな人たちがいたとは、意外でした~」
まあ、これじゃないんでしょうけど。
「他には・・・よく分からない手紙が、届きましたね~」
「どんな手紙だい?」
食いついてきました~。
「えっとですね・・・あ、有りました~。これですこれこれ~」
私はそう言いながら、今日拾った手紙をミカさんに渡します。
なんなんでしょうね、あれ~?
「ふむふむ・・・へえ、予定してたよりはちょっと早いかな」
「予定、ですか~?」
「ああ、気にいないで。こっちの話」
気にしないで、と言われると気にしたくなりますよね~。
「何のことなんですか~?」
「・・・気になる?」
「ええ、それはもう。それに・・・そろそろ、そのお手紙も開けたいんですよね~」
手を伸ばして取ろうとすると、手紙を引っ込まれました。
ぶー、なんでですかぁ?
「・・・まあ、そろそろころあいかな。いや、むしろこれだけ時間があったことを喜ぶべきなのかな?」
「ミカさん、何を言ってるんですかぁ?」
「ん?いや、ね。ちょーっと友達の遺言を実行するタイミング、早めることにしたんだ」
ミカさんがそう言って指を鳴らした瞬間に・・・
私は、何もない白い空間にいました。
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