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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十三章 幕間劇
  烏と雀×りんごのむき方

ふむ今日もいい天気だ。久々の休日だから、トレミーで趣味をやるとかはいいけど、たまには地上で過ごすのもいいかもな。

「ん?あれはりんごの木のようだな」

ここでは品種改良されてないから、味は期待しない。考えているとりんごが落ちてきたので、キャッチする。

「ありゃー、落としちゃった。あ、お姉ちゃん、そこのも美味しそうだよ!そうそう、その左側の!」

何だと思って上を見たら。

「・・・・あれ?あれあれー!お兄ちゃーん!わーい!ここ、ここ!雀達はここだよー!」

「・・・・」

叫ばなくても見えてるし。

「ちょうどよかった!今からりんごを投げるから、全部受け取ってね!えーい!」

「おっと」

雀は、りんごを枝からちぎって投げてちぎっては投げっていう感じで投げてくる。全部は受け取れないからか、風術でりんごを一塊にした。

「おー!すごーい!まだまだ行くよー!ぽいぽいぽいっ!」

「ほいほいっと」

「ほーら、ほらほらー」

「ほっと、よっと」

「んー、これで十分かな、お姉ちゃん」

「(こくこく)」

これで最後かと思ったけど違ったようだ。

「じゃあこれで最後!ちゃんと受け止めてね?えーい!」

枝を蹴って勢いを付けたと思えば雀は、思い切り飛び降りた。俺に向かってだが、りんごは全て風術で受け止められている。烏がりんごを雀に投げたから、俺が受け止めようとしたらその前で落ちた。

「ふにゃぁ、いたたたぁ・・・・」

地面に打ちつけた腰をさすり、涙目になる雀は烏を見上げた。

「むう!お姉ちゃん、何するの!」

「(ふるふる)」

「うー、そうかもしれないけど・・・・」

「何て言われたんだ?調子に乗りすぎるなとか」

「ううん。公方様の大切な人にそんな事しちゃダメ、って怒ってるの」

「・・・・」

頷くと烏も木から降りてきた。そして雀の後ろからひそひそ話が聞こえるけど、多分謝れとか言われたのだろう。雀は俺に向き直ると、腰を折り曲げた。

「失礼な事しちゃってごめんなさい!」

烏も一緒になって深く頭を下げるけど、俺は別にそこまで偉くはない。今の姿はだけどな。

『今の相棒は人間だからか?』

『そうだ。この世界では大天使化になると神の姿なんだと』

「そこまで恐縮する事はないぞ。俺は別に気にしてないし」

「でもお兄ちゃんは偉い人だから、雀達は身分を弁えないとならないの。・・・・ってお姉ちゃんが言ってるよ」

「(こくこく)」

俺は俺だから気にしてないが、本当にこの時代は身分が厳しいのか。

「でも雀は可愛い、ちょっとぐらい甘えてもお兄ちゃんは許してくれるんじゃない?ってお姉ちゃんが言ってくれたの!えへへっ♪」

「(ぶんぶん)」

雀はこう言ってるが、烏は否定をしている。たまに烏が言ってないのに通訳してしまうんだが。

「本当に気にしなくてもいいんだが。ここは一葉の庭だが、勝手にりんごを取ってもいいのか?」

本来の理由としてはそれなんだけど。

「構わぬ。余が烏達に頼んだのじゃ」

「あ、一葉様!」

「・・・・」

凜と響いた声を聞いた途端に、二人の背筋がぴんっと伸びた。表情が少し緊張をした顔になってるな。

「一葉様、りんご沢山採った!お姉ちゃんと沢山採ったの!だから、たーくさん食べられるよ!」

「ほう、これは立派な実じゃの。美味そうじゃ」

既に風術ではなく、俺が抱えている。抱えているりんごを一つ取る。

「では、頂くとするか。あむ・・・・うーん、これは美味じゃ!」

甘酸っぱい香りのする果実を大きな口で頬張り、一葉はあっという間にそれを飲み込んだ。俺だったらそのまま食べないで、ジュースにするかアップルパイでも作る。

「ほれ主様、一つ食べるか?ただし、幽には絶対に内緒にするんじゃぞ」

「何で?怒られるからか。だがここは一葉の庭だろ」

「しかしりんごは基本的には、供え物として神や仏に供える物なのじゃ」

「その神なら目の前にいるが?」

「大丈夫じゃ。一つくらい食べてもバチは当たらんじゃろうに。それに幽に見つかりさえしなければ」

一葉は得意げに笑っていたが、神界ではどうなのか?みたいな議論してたようだ。俺が許してるから、問題はなさそうだけどな。二つ目のりんごを取って俺に食べるように勧めたが断った。

「公方様っ!」

りんごを咥えたまま、一葉がびくっと首をすくめる。あーあ、やはりバチが当たったようだな。

「りんごを召されてはなりませんと、何度言えば分って下さるのか」

「分かってはいるがやめられんのじゃ」

「開き直るおつもりですか?」

「説教なら後で聞くわ。これを食べ終わった後でな!」

俺の手から持てるだけのりんごを奪い取ると、一葉は一目散に逃げ出した。

「お待ち下さい、公方様!」

後を追いかけて行ったはずの幽が戻ってきた。

「ご迷惑をお掛けして申し訳ございません、一真様」

「別に掛けてはいないがな」

俺はただりんごを持ってただけだし。

「時に烏、雀」

「はいっ!?」

「(どきっ)」

怒られると思っているのか、二人は顔を強張らせ、真っ直ぐに幽の方に向いた。

「そんなに緊張せずとも良い。公方様に命じられてやった事、咎めはしませぬ」

「よかった・・・・」

「(ほっ)」

「ただし!」

「はい!」

「(どきっ)」

「公方様の我が儘を全て聞き入れる事は、今後はなさらぬよう。公方様の為にもなりませぬので。それと一真様は、神仏と通じ合っているので例え神仏に供えるりんごを取っていたであろうが、一真様がお許しになったとしても、他の神仏がお許しにはならないので」

「は、はい・・・・」

「・・・・」

「では失礼。公方様にお灸を据える仕事が残っておりますゆえ・・・・」

踵を返して、何かを思い出したかのように、また振り返る。

「もいでしまったものは仕方がない。そのりんごは供え物用にいくつか残して、後は皆で食べても構いませぬ」

今度こそ本当に幽の姿が庭の奥へと見届けると、二人は大きく息を吐き出した。無邪気に見えても、こういう時は緊張するんだな。神界では一葉の事で、少し不運にしようとしていたようだから俺が止めといた。

「じゃあお許しも出たし、りんごを食べるか。二人とも食べるだろう?」

「うん!」

「(こくこく)」

二人とも嬉しそうだった。なのであそこの縁側に座り込み、二人を呼んだら烏が雀を止めた。

「どうした?」

「お兄ちゃんの隣に座るのはダメなの。お姉ちゃんがそう言ってるよ」

「おいおいそんなに厳しいのかよ。じゃあお前らは、どこに座るんだ?」

「雀達は、お兄ちゃんの足元に座るから大丈夫だよ!」

参ったな。俺は別に構わないのにそうなるのか。

「俺、一人で食べていても寂しいだろう。だったら隣で座ってくれよ」

俺の言葉に何か期待してるのか、雀が烏を見る。だけど烏は無表情だけど。

「俺が願うなら、隣に座ってくれるか?俺に対して余り畏まれると、こちらが困るから普通に接してほしいんだが」

「じーっ」

「・・・・」

烏は諦めたように、ため息を吐いた。

「(こくん)」

「やったー!雀、お兄ちゃんの隣に座るー!」

ウサギのように飛び跳ねてきた雀は、俺の隣にちょこんと座る。あとから烏もやってきて、遠慮がちに反対側に少し離れて座った。

「お姉ちゃんね、果物の皮をむくの得意なの!するするするって、上手にむけるんだよ!」

「(うんうん)」

「ほほう、では勝負をするか?俺も得意だからな」

「・・・・・」

「お姉ちゃんが勝負しようだって。ちょっと待ってね」

雀は肩から掛けていた大きなバッグを下ろすと、手を突っ込んで中を探り始めた。俺は空間から、調理用ナイフを手に取った。

「うーんと、小刀、小刀・・・・これかな?えいっ!」

雀が引っ張り出したのは、孫の手みたいなのが出てきた。

「あれ、間違えちゃった。こっちかな?・・・・えいっ!」

次に出てきたのは、なぜかすりこぎ。

「おっかしーなあ。じゃあ、こっち!やあっ!」

次に出てきたのは・・・・。

「おいおい。何で大砲の弾が出てくるんだよっ!?」

「ふえ?あ、心配しなくても大丈夫だよ!これでりんごをむく訳じゃないから!」

それは分かっている。何で危険物をバッグに入っているんだろ。

「うーん、どこに入れたんだっけー。おーい、小刀さーん」

ハサミ、裁縫道具、ビー玉、お菓子、あやとりの紐に筆と和紙セット。雀は袋の中身を掴んでは出し、掴んでは出し、自分の周りはあっという間にガラクタ・・・・じゃなくて、私物で一杯になった。

「こんなに持っていると重くないのか?」

「もう慣れっこだもん!雀達は傭兵だから、呼ばれればどんな戦場にも行くの。だから大事な物は、持ち歩いているんだよ!」

「傭兵・・・・正規軍ではないから、って事は」

「八咫烏隊の今の雇い主は、公方様!足利家に雇ってもらってるの」

「でもあの時の戦いは・・・・なるほどな。足利家が織田家と同盟したからか」

「そう、そのまま雀達八咫烏隊も、織田家に加勢する事になったんだ!」

「(うんうん)」

「八咫烏隊は鉄砲の扱いに慣れてる兵士が多いから。今は梅ちゃんの指揮下で動く事が多いの。ね、お姉ちゃん」

「(こっくん)」

ふと、雀が背負っている大砲を見た。一見すると家紋が入ると思うのだが、よく見ると雀のマークがついてるからオリジナルの紋なのだろう。

「そういえば京の町で、一葉が悪漢に襲われた時に俺がこれで脳天に当てた時に、仲間が来たけどあの時撃ったのは八咫烏隊の誰かか?」

「あれはお姉ちゃんだよ!」

「・・・・」

「お姉ちゃんは、凄ーく腕のいい狙撃手なの。狙った物は百発百中!ズキューンなの!ねー、お姉ちゃん!」

自分の事のように雀は誇らしげに言ってる。さっき俺に飛びかかろうとした時も、雀に向かってりんごを投げたのもよかったから動体視力がいいのかな。ウチの隊でも百発百中の狙撃手はいる。

「火縄銃って、威力はあるけど命中させるのは難しいだろう?」

「・・・・」

「それがお姉ちゃんの凄い所なんだよ!火薬の量がちょっと違っただけで、軸がぶれちゃうんだから」

「火薬から学んでるのか。だけど、ウチの隊だって負けていられんぞ」

「・・・・」

烏は嬉しそうにしていると、背負っている銃を下ろし俺に見せてくれた。その代り、俺達の隊で使われている狙撃銃を空間から取り出して見せ合いっこした。一般的な火縄銃は、弾を込めてから発射までのタイムラグが生じるため、構えていて敵が来たら撃つようになっている。

なので織田信長の三段撃ちが有名だ。悪漢を倒した時のように正確に狙うとなると、一発外したり不発だったらアウトだ。烏は火薬の量もだけど、発射のタイミングも逆算しているんだろう。これは名手と言われる程、経験が必要だけど。

「俺らの使ってる銃、触っていいからそっちの触ってもいい?」

「(こくん)」

触ってみると、俺らで使っているのと全然違う。烏も雀も俺らが使っているライフルを触っている。銃身は長い。

「これ、普通のより銃身が長いな。特注品か」

「・・・・」

「お姉ちゃんが設計して、特注で作らせたんだって。銃身が長いと威力や射程距離も上がるんだけど、お兄ちゃん達が使ってるのとあんまり変わらないような」

「そりゃそうだろうな。ちなみに俺らの銃で狙撃するなら、ここからあそこの山の所まで撃てる。ここを覗きながら」

「・・・・・」

「・・・・ふむふむ。あっ、そうだね」

「どうした?」

「えっとね、お兄ちゃん達の隊の鉄砲見た事あるけど、お姉ちゃん以外にも狙撃手がいた事に驚いてるって」

「そりゃそうだろな。狙撃手はウチの隊、一真隊ではなく黒鮫隊な。そいつらは狙撃の腕は持っているよ」

「・・・・・」

「お姉ちゃんが、私以外にも狙撃手いるんだと感心しましたって!わーい、お姉ちゃんがお兄ちゃんの事褒めてる!雀凄く嬉しい!」

「烏に褒められるとはな。俺もこれで近くにいる者の脳天に撃てるよ」

と言って、左腰にあるホルスターからハンドガンを取り出した。今は、セーフティーをロックしてるから問題はない。俺は烏の銃を返してもらってから、ライフルをもらって空間に入れた。

「こんなに小型化してるなんて、不思議だね!お姉ちゃん!」

「・・・・・」

「お姉ちゃんも不思議って言ってる。ん?ああっ!小刀みつけたーっ!鞄の一番奥に入ってたよ!はい、お姉ちゃん!」

「・・・・・」

小刀が見つかったので、俺は銃をホルスターに戻してから、手にあるナイフでりんごをむき始めると、烏も始めた。俺がむき終えるとちょうど烏も終えたみたいだ。

「お姉ちゃんも器用だけどお兄ちゃんも器用だねー!」

「まあな、こんなのも作れるぞ」

りんごを八等分に切る。それから皮を三分の一だけつなげてっと。

「はいよ。りんごのウサギ完成!」

「わっ!わわわわっ!お兄ちゃんって凄い!こんなむき方初めて見た!」

「(うんうん)」

「どうだ?」

「ウサギさん可愛い!お兄ちゃん、タコさんも作れる?」

「タコ?」

ウインナーだったら作れるんだけどな。

「・・・・」

「お姉ちゃんは、蝶々にしてほしいって!」

「おいおい。無茶振りだな」

「「わくわく」」

ふむ。確かりんごのでアップルスワンってのがあったな。調べて見てると視線を感じたら・・・・。

「・・・・」

「「わくわく」」

「と言われてもな。タコや蝶々もたぶん出来ると思うけど白鳥ならできるぞ」

「やったー!」

「・・・・」

とりあえず、アップルスワンを作った後に作ってみたタコと蝶々。タコと蝶々は何とか出来たけど、二人とも拍手をしてたからいいのかな?のんびりと過ごそうかと思ったが、これはこれで良い。烏と雀と仲良くなれたし、同じ銃の使い手としては良いライバルになれた。またこうやって三人と過ごせればいいなと思った。 
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