戦国異伝
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第百六十二話 ならず聖その七
「あれじゃ」
「あれですか」
蒲生も知っていた、『あれ』のことを。あれのことは織田家においてもかねてより知られているものである。
そしてだ、それもだというのだ。
「天下の結界ですか」
「その意味もある、あの城で天下を守るのじゃ」
「政と武で」
「そして天の力も借りてじゃ」
それもだというのだ。
「怪しき者を寄せず天下を守る」
「そうされますか、では安土と」
「南西じゃ、摂津じゃな」
今度はこの国の名前が出た。
「あの国に城を築く」
「安土と同じだけの城を」
「そこも織田家の拠点となる」
天下布武、そして天下を治める城になるというのだ。
「あの城もまたな」
「天下を治める城は二つですか」
「さて、どちらが主でどちらを従とすべきか」
その二つの城のだというのだ。
「それも考えねばな」
「では摂津がよいかと」
蒲生は信長にすぐに答えた。
「あの国がよいかと」
「摂津か」
「はい、しかも大坂の地です」
そこだというのだ。
「あの地が最もよいと思われます」
「天下を治める為にはか」
「あの地は前に瀬戸内があり淀川から都、そしてすぐに奈良にも行けます」
「便がよいな」
「そして西国全土を見ることが出来東国への道も東海が使えます」
「それもあってじゃな」
「しかも土地は肥え人は集まりやすく」
多くの田を持つことが出来しかもだというのだ。
「商売も栄えまする」
「よいことばかりじゃな」
「あの地に城を築けば」
それでだとだ、蒲生はさらに言う。
「天下を治めやすいです」
「では大坂じゃな」
「そう思いまする」
「ふむ。まずは安土を築きそこから天下布武を進め」
ここで信長はこれからの手順を頭の中で整えた、まずはそうしてだった。
「それからじゃな」
「大坂にも」
「そうするとしよう」
確かな笑みでの言葉だった。
「それではな」
「はい、それでは」
蒲生も確かな顔で応える、そしてだった。
信長は政のことを念頭に置きつつ紀伊での戦を進めていく、織田軍は平手が篭っている城に入りそこで平手から本願寺の動きを聞いた。今の彼等はというと。
「ふむ、それではか」
「はい、集結を進めています」
「思ったより動きが遅いのう」
「ただ数は」
ここで平手は門徒達の数について言った。
「天王寺の時は二十万程でしたが」
「どれ位おる」
「物見の報告によれば二十三万」
それだけいるというのだ。
「増えております」
「三万程多いのう」
「はい、どうやら」
こう言うのだった。
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