dark of exorcist ~穢れた聖職者~
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第18話「パトリック・キリシマペア 風の悪魔再び」
―――【フランス・パリ市街地】
―――PM 10:49
「もしもし? ……あぁ、そっち終わったか」
パトリックは長槍を担ぎながら、携帯で誰かと話している。
『はい、フランさんと………ブライアンさんが乱入してきたおかげで、なんとかこっちの仕事は
損害無く終わりました』
「ブライアンさんが? あの人放浪してたんじゃなかったのか?……アリシアが聞いたらキレるだろうな…」
『アハハッ……そうですよね………そっちはどうですか?』
「あぁ、こっちは…………」
ふと、パトリックは後ろを見た。
そこにあったのは、悪魔の死骸の山と、血の海。
そして…………死骸の山の上で、悪魔の頭を踏みつけながら立っている一人の悪魔狩り。
その悪魔狩りの右手には、血塗れの日本刀。左手には、黒塗りの鞘。
「………キリシマがほとんど斬っちまった……それなりに強い奴もいたけど、お構い無しだ」
パトリックがキリシマに視線を向けると、キリシマは顔に付いた返り血を袖で拭っている。
「俺はまともに活躍出来ずに仕事が終わったよ……」
『キリシマさんがペアなら仕方ないですよ。じゃあ僕達は先に帰還します。待ってますよ』
パトリックは携帯をしまい、もう一度キリシマに視線を向ける。
返り血を拭い終えて、日本刀を勢い良く振った。
日本刀に付いた大量の血が、ビシャッと音をたてて落ちた。
「………………雑魚共が」
悪魔の死骸を冷たく見下し、日本刀を鞘に納める。
キリシマ ソウヤ。
ヴァチカンの悪魔狩り連盟“ルークス・ソーリエ”の中でも最強クラスの悪魔狩り。
彼の経歴を知る者はほとんどいない。
彼がどういう経緯でヴァチカンに来たのか。何故、悪魔狩りになったのか。
それらの一切が謎となっている。
―――翌日 AM 9:15
パトリックとキリシマは、小さなカフェで朝食を食べていた。
パトリックはコーヒーをゆったり飲んでいる。
対してキリシマは、大量の皿をタワーのように並べていた。
「お前………結構食うんだな……」
無表情のまま、キリシマは水を飲み干す。
パトリックも皿のタワーを作った本人も、何をどれほど食ったのか覚えていない。
下手をすれば、カフェのメニューを制覇したかも知れない。
「……………お前は少食なんだな、パトリック」
皿のタワーの反対側は、コーヒーと、野菜を挟んだサンドイッチだけ。
「朝って何も食いたくない気分にならないか?」
「………………俺はならない」
「えぇ~………まぁいいや。さて、そろそろ行こうか………どうした?」
パトリックはキリシマの様子が変わったことに気づく。
キリシマはじっとある一点を見つめている。キリシマが纏う空気が劇的に変わった。
その空気を一言で表すなら………………殺気。
パトリックは全身から血の気が引いた。
自分と同じ人間が、一体どうしたらこんな殺気を放つことが出来るのだろうか。
「……………………見ろ」
パトリックはキリシマの視線を辿って、同じ方向に目を向けた。
そこには、黒いYシャツを着た灰髪の若い男。
2人はその男に見覚えがあった。
「………………フォカロル!!」
べリアルと対立していた“風の悪魔”。
何故、こんな所にいる?
「………………追うぞ。追って奴を斬り殺す」
キリシマはカフェの飲食代をテーブルに叩きつけ、早足でフォカロルの後を追い始めた。
パトリックも飲食代をテーブルに置き、キリシマの後を追う。
「早いな、アイツ………」
歩いているにも関わらず、キリシマの歩行速度は信じられないくらい早い。
「あれ、アイツ走ってない?」
パトリックが気づいた時にはもう遅かった。
キリシマは歩くのをやめ、走ってフォカロルを追い始めた。
歩きですら追いつけないのに、走られてはもう敵わない。
「ちょっと待…………早すぎだろアイツ!」
フォカロルは人気の無い工事現場のような場所で足を止めた。
周囲に見えるのは、工事の過程で出た瓦礫の山と、最近も使われていた重機。
「………………いつまで付いてくる気だ? 悪魔狩り」
フォカロルは心底鬱陶しそうな表情を浮かべながら言う。
その後ろから出てきたのは、左手に日本刀を持ち、眼に殺意のみを宿した悪魔狩り。
「………………殺し損ねた奴を見かけたものでな」
「そうか、貴様も同じことを考えていたのか、奇遇だな」
「…………………今度こそズタズタに斬り刻んで……肉片に変えてやる」
「…………地の果てまで吹き飛べ、屑が」
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