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転生者物語 in ハイスクールD×D

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第一章・その名は邪王真眼 小鳥遊六花(高校一年間)
  第五話


六花達が高校に入学して、数週間が経った。この頃になると、銀髪赤目や眼帯という目立つ容姿のメイと六花の噂、さらに丹生谷が幽霊憑きだという噂も同学年では広まり、上級生そして中等部の方にも少しだけ広まっていた。そんなある日の昼休み。そいつはやって来た。




入学直後に出会って以来、すっかり仲良くなった六花、メイ、丹生谷、風鈴そして七宮の五人は昼休みにはよく机をくっつけて一緒に昼食をとっていた。

「六花ちゃんとメイちゃんのお弁当は今日もお姉さんのですか?」

「そう。」

風鈴の質問に六花は素っ気なく答える。だが、最近は風鈴もこれが六花のつくったキャラだと理解しているので不快には感じない。

「だが、このコロッケは私も手伝ったぞ。」

すると、メイが自慢げに言った。以前彼女が居たシーキューブの世界では、彼女は夜知家という場所で呪いを解いていた。その際、よく家事の手伝いをしていたので、人並みには出来るレベルである。

「そうなのですか。で、六花ちゃんはどれを手伝ったのですか?」

「あぅ・・・」

メイの言葉を聞いた風鈴が六花に尋ねると、彼女は俯いてしまった。心なしか、アホ毛が萎れているようにも見える。すると、メイが風鈴に言った。

「風鈴。お前ももう知っているであろう。六花は裁縫以外の家事はてんでダメだと言うことを。」

「あぅ!?」

「って、それフォローじゃなくてトドメになってるじゃない。」

ダメージを受けた六花を見て、丹生谷がツッコミを入れた。
メイの言う通り、六花は裁縫以外の家事がてんでダメで、人並みレベルなメイよりも下回っている。
そんな感じに盛り上がる五人であった。だがその時、教室の扉絵がガラリと開いた。

「ここデスか。ネクロマンサーの巣食う場所と言うのは。」

入って来たのは、この学校の中等部の制服を着て、髪型をツインテールにしその先端に巾着袋のようなものをつけた少女だった。左手には何やらファイルらしき物の入った手さげ袋を持っている。

「何よあれ?」

「さあ?」

突然の闖入者に困惑するクラスメイト達。すると、一人の女子生徒が彼女の前に出た。

「ちょっと。ここは高等部の教室よ。中等部の生徒が勝手に入って来たら駄目じゃない。」

彼女の名は『佐伯玲子』。このクラスの風紀委員をしている少女である。

「何デスか、お前は。凸守はネクロマンサーに用があって来たのデース。とっとと退くか、ネクロマンサーを連れて来るデース。」

「全く。年上への礼儀が成ってない子ね。」

生意気な口調の中学生に呆れる佐伯。すると、丹生谷が席から立ち上がりながら六花達に言った。

「ごめん。私も行って来る。」

「うん、行ってらっしゃい。」

実は丹生谷はこのクラスの学級委員長をやっているのだ。

「そこの君、誰?ここには何の用で来たのかしら?」

「凸守の名はミョルニルハンマーの使い手、凸守早苗デース!!そして、ここに居ると言うネクロマンサーに会いに来たのデース!!!」

巾着袋のついたツインテールを振り回しながらそう答える少女、凸守。

「いや、そんなのうちのクラスには居ないし・・・(うわー、こいつ中二病だわ。面倒くさ)」

そんな彼女とその意味不明な要求に頭を悩ませる丹生谷。するとそこへメイがやって来て言った。

「私が思うに、そのネクロマンサーとやらはお前の事ではないのか?」

「はあ?何で私が・・・」

「大方、お前の幽霊憑きという噂が伝わる過程で変化したのだろう。」

『なるほど。それはあり得るね。』

メイの推測に納得する七宮。だが、丹生谷の方は納得がいかなかった。

「何がどう伝わったら幽霊憑きがネクロマンサーになるのよ。」

「お前がネクロマンサーなのデスか?」

すると、凸守が丹生谷に聞いた。

「違うわよ。私はネクロマンサーなんかじゃないわ。」

「ふっふっふ。凸守は騙されないのデスよ。お前がネクロマンサーに違い無いのデース!何故なら・・・そう言う事をしそうな陰湿な感じがするのデース!!!」

「・・・放課後、ちょっとはなしたい事があるんだけど、いいかしら?」

そう言った時の丹生谷の顔は、怖いほどに満面の笑みであった。

「正体を知った凸守を消そうと言うのデスか?そんなまどろっこしい事はせず、今直ぐここで勝負デス!!!」

「うふふ。本当に元気ね。」

未だに、丹生谷は笑顔のままであった。

「メイ!七宮!風鈴!丹生谷が何か怖い!!!」

「ええ。とんでもない威圧感よ・・・」

『まさに螺旋の魔術師・・・』

「面白くなってきたのです。」

そんな彼女に六花は怯え、メイと七宮は慄き、風鈴は面白がっていた。
そんな中、凸守は手さげ袋に入っているファイルを取り出す。

「さあ、凸守とこの『螺旋の書』の力。とくと見るがいいデース!!!」

それは、『螺旋の書』というタイトルの書かれたあちこちに渦巻き模様のシールが貼られている黒いファイルだった。

「なっ!?」

するとどう言う事であろう。螺旋の書の名を聞いた途端、丹生谷が笑顔を崩し、顔を真っ青にして口を金魚のようにパクパクさせ始めたのである。そんな丹生谷の様子を見て、凸守は自慢げに言った。

「ふっふっふ。やはり流石のネクロマンサーも、この螺旋の書には敵わないようデスね。」

「ななな、何であんたがそれを・・・!?」

震える声でそう言う丹生谷。そんな彼女の様子を見て、六花が風鈴と七宮に聞いた。

「あの螺旋の書というのは何?」

「あれはですね。中学生の頃、森夏ちゃんが螺旋の魔術師モリサマーって名乗ってた頃、自分のホームページに掲載していたものなのです。」

『モリサマの祖父である螺旋の大魔導師から受け継いだ理論をモリサマなりに解釈した事が載っているんだ。でも、モリサマーとしての記憶を失い、それから自分でその痕跡を消して行ったんだよ。』

「???」

「なるほど。所謂『黒歴史ノート』と言う奴か。」

二人の説明を聞いた後、六花は主に七宮のせいで理解できなかったが、メイは納得した。

「さあ、モリサマー様の言葉を受けるのデース!!!」

「や、やめてえええええ!!!」

そうこうしている間に、凸守がファイルを開いていた。

「螺旋とは世界の根幹を成す理。この世全て法則は全て螺旋の中にある。」

「いやああああああああ!!!」

そして、凸守の螺旋の書の音読を聞いたとたん、丹生谷は耳を塞いでのたうちまわり始めた。

「ふっふっふ。やはり、邪悪なネクロマンサーにはモリサマー様の言葉は毒のようデスね。」

「ちょっと!丹生谷さん、しっかりして!!」

床を転がる丹生谷を見て、凸守は誇らしげに胸を張り、佐伯は困惑していた。

「懐かしいのです。」

『あの頃のモリサマは本当に良かった。』

一方、風鈴と七宮は丹生谷の中二病時代を懐かしんでいた。そんな中、六花が立ち上がる。

「それくらいにしておけ。丹生谷が嫌がっている。」

「誰デスか、お前は?見た所魔眼使いの類のようデスが。」

「私の名は小鳥遊六花。そこで転がっている丹生谷の友人。それと、これは魔眼ではない。ただの怪我。それより、私の話を聞いていたのか?」

「凸守に指図しようと言うのデスか?面白い奴デース。お前もこのネクロマンサーのように、モリサマー様のお言葉に浄化されるがいいデース!!!」

そして、凸守は六花の方を向いて螺旋の書の音読を始めた。

「螺旋とは繰り返す過去と、流れて行く未来の融合体。それらはあたかもメビウスの輪の表裏のように互いに不可分であり・・・」

「だから何?」

が、それを聞いても六花は平然としていた。だが、その代わり・・・

「もうやめてえええええ!!!」

丹生谷の方が追加のダメージを受けていた。

「む?ネクロマンサーの方には効いているのに、何故お前には効いて無いのデスか!?」

すると、六花が平然としている事に気付いた凸守がやや大げさなリアクションをした。そんな彼女にメイがツッコミを入れる。

「いや。それは多分丹生谷にしか効かないと思うぞ。」

「おのれ・・・今日はこのくらいにしておいてやるのデース!」

すると、凸守は捨て台詞を吐いて教室を出て行くのであった。

「何だったんだ、あいつは?」

「さあ?」

凸守の出て行った扉を眺めながら呑気にそう言うメイと六花。一方、丹生谷はと言うと・・・

「あんの中坊・・・今度来たらタダじゃおかないわよ。」

凸守への復讐を誓っていた。




放課後、六花達は凸守がまた来ると思っていたのだが、結局来なかったので各自部活動に勤しむ事にした。
ここで、六花達がどんな部活に所属しているのか紹介しよう。まず、丹生谷(と七宮)はダンス部、それ以外のメンバーは家庭科部である。家庭科部と言うのは簡単に言えば料理部と裁縫部が一つになったような部活だ。
六花が入ったのは裁縫が得意と言うのもあるが、料理の練習をするためと言うのもある。メイと風鈴はそれについて来たと言う感じだ。
一方、丹生谷がダンス部に入った理由は、中学時代が中二病やら幽霊憑きという噂やらが原因で、彼女的には暗黒時代だったので、その分高校で輝かしい青春を過ごすためらしい。
さて、とりあえず今は家庭科部メンバーの方に視点を当ててみよう。今日は裁縫ではなく料理の日で、この日作るのはホットケーキだ。

「あぅ・・・また焦げた・・・」

ホットケーキをまっ黒焦げにしてしまい、涙目になる六花。そんな彼女をメイと風鈴が励ます。

「大丈夫だ。私も人並みに料理が出来るまで大分時間がかかったからな。」

「焦る必要は無いのです。」

「でも、玄だって料理出来るのに・・・」

そう。六花の言う通り、玄は実は料理が出来るのである。しかも、十花にこそ及ばないものの、充分上手いと言うレベルだ。

「それはちょっと言わないでくれ・・・」

まあ、それだから平均レベルのメイも女のプライドがゆるさないと言う事で、料理部に入った訳なのだが。




部活終了後、結局ホットケーキを三枚も焦がしてしまった六花は意気消沈しながら帰り道を歩いていた。

「うう・・・どうして上手くいかないの・・・」

「まあ、そう焦る必要は無い。」

「・・・メイはそれしか言ってない気がする。」

「そ、そうか?」

ジト目で睨んで来る六花から目を逸らすメイ。すると、その時・・・彼女達が腕に付けているブレスレットからアラーム音が鳴った。

「これは・・・」

「マイナスエネルギー反応!?」

このブレスレットは玄が用意したもので、『太陽の勇者ファイバード』に登場した天野博士が作った装置のようにマイナスエネルギーを探知する事が出来るのである。つまり、『魔』に取り憑かれた転生者を探知出来るのだ。

「反応は・・・向こうからか。行くぞ、六花!!!」

「了解した。」

そして、二人は反応のある場所へと急行した。




マイナスエネルギー反応のあった場所。そこで二人が見たものとは・・・

「何日も観察したから分かったけど、あなたのその純粋さ・・・まさに本物のサーニャだわ!!!」

「は、離すデース!と言うか、お前は誰なのデース!!!」

昼休みに教室に乱入してきた女子中学生、凸守早苗が変な女(美少女)に抱きしめられ、頬ずりされていた。

「メイ。あれって、昼休みの・・・」

「そうだな。だが、悪質転生者の被害に逢っておるのなら、助けねばならん。行くぞ!!!」

その光景に少しばかり戸惑う二人であったが、直ぐに気を取り直して介入した。

「そこまでだ!!!」

「あら?あなた達、誰かしら?邪魔をしないで欲しいのだけれど。」

飛び出して来たメイと六花を見てそう言う悪質転生者。だが、直ぐに六花の存在に気付いた。

「あら?六花ちゃんも居るじゃない。なら、あなたもこっちに来て。一緒に百合百合しましょ♡」

「断る!!」

悪質転生者の誘いを即答で断る六花。すると、悪質転生者は目を細めた。

「そう。なら、力強くで私の物にするわ!!!」

そして、凸守を一旦黒い触手のような物で拘束する。

「うわっ!?これは何デス!?ヌメヌメして気持ち悪いデース!!!」

触手の感触に身をよじる凸守。そんな彼女を他所に悪質転生者は六花の前に立った。

「出来るのならばやってみるといい。」

すると、六花は眼帯に手をかけながら呪文を詠唱する。

「爆ぜろリアル!弾けろシナプス!バニッシュメント・ディス・ワールド!!!」

そして、眼帯を取り払った。すると、彼女達の周囲が六花の心象風景により塗り潰された。そう、これこそが神器『邪王真眼』の能力、使用者の心象風景を映し出す『固有結界』を展開するものなのだ。

「驚いたわ。本当にバニッシュメント・ディス・ワールドが使えるなんて。」

「それだけでは無い。」

感心する悪質転生者に対し、六花は黒い堕天使の翼を広げた。

「これは・・・!?まさか、本当に漆黒の堕天使だなんて・・・最高ね!何が何でも私のモノにして見せるわ!!!」

六花の真の姿を見た悪質転生者は歓喜し、触手を六花に向けて放った。

「六花!私を使え!!!」

すると、メイが本来の姿であるサイレンサー、アンクルストックそしてスコープが装着されたワルサーP38へと姿を変え、六花の手に収まった。六花はその狙いを触手に定めて引き金を引く。すると、銃口から放たれたビームが触手を貫き、無料化させた。

「やるわね。なら、これならばどう!!!」

すると、悪質転生者は大量の触手を召喚し、六花に突撃させた。だが、六花は翼で飛び上がる事でそれを回避する。触手はさらに追いかけて来るが、六花はそれを回避し続けた。

「くっ、ちょこまかと・・・なら、これはどうかしら!!!」

痺れを切らした悪質転生者はさらに触手の数を増やす。そして、ついに六花は触手に捕まってしまった。

「しまった!!」

「さあ、この後どうしましょうか。まず、その物騒な物から・・・」

悪質転生者はまずメイを持った右腕を締め上げる。それにより、六花はメイを落としてしまった。落下したメイは地面でバウンドし、悪質転生者の足元まで来る。

「さあ。どうしてあげましょうか?」

そのまま動けない六花を眺める悪質転生者。すると、メイが人間態になり、奴を拘束する。

「くっ、何を!?」

悪質転生者はそれを振りほどこうとするが、人外の力を発揮しているメイ相手にそれは無意味だった。

「今だ、六花!!!」

「無駄よ!その触手は簡単には千切れないわ!」

「そうだろうな。だが、それも普通の空間ではの話だ。」

「何ですって?」

メイの言葉を聞いて視線を六花に向ける転生者。すると、六花が触手を引きちぎり、振りほどいていた。

「どうして・・・」

「この邪王真眼の能力により発動される固有結界、バニッシュメント・ディス・ワールドの効果は、使用者の力をそのイメージの限界まで引き上げると言うもの。」

驚愕する悪質転生者に六花が説明した。それを聞いた奴はさらに驚愕する。

「何よそれ、殆んどチートじゃない・・・」

「だが、欠点もある。先程言った通り、引き上げられる力は使用者のイメージの限界まで。ゆえに、私が絶対に出来ないと思っている事は出来ないし、勝てないと思っている相手に勝つ事も出来ない。」

そう言うと、六花は右手に手の平サイズの光の塊を出した。

「ゆえに、光の力を操るのが苦手と思い続けている私には固有結界の中でもこれが限界。」

以前説明した通り、六花は堕天使としての光の力を操るのが苦手だ。それゆえ、光の槍を出す事は出来ず、このように手の平サイズの塊を出すのが精一杯である。しかも、殺傷能力はほぼ皆無で、光が天敵である悪魔が相手でも、軽い火傷を負わせる事しか出来ない。

「でも、あなたに取り憑いた魔を追い出すには、十分!!!」

そして、六花は光の塊を悪質転生者の胸のあたりに叩きつける。

『キシャアアアアアア!!!』

すると、彼女から黒い煙のようなもの・・・取り憑いていた魔が飛び出した。

「メイ!!」

「分かっておる!!」

すると、再びメイが銃になり六花の手に収まった。そして、彼女は魔に狙いを定めて引き金を引く。

「これで、終わり!!!」

ダーン!!!

『キシャアアアアアア!!!』

そして、銃口から放たれた科学ではなくファンタジーな力によるビームは魔を消滅させた。




「大丈夫か?」

魔を消滅させた後、六花は翼と邪王真眼を隠してから固有結界を解除し、転生者に手を伸ばした。

「・・・はい。でも、あなたとサーニャには迷惑をかけてしまいました。」

俯いてしまう転生者。そんな彼女の姿は先程までの煌びやかな美少女から、黒髪を三つ編みのお下げにして、丸眼鏡をかけた地味なものへと変化していた。

「気にする事は無い。全ては魔のせい。」

そんな彼女を六花は励ます。すると、メイが彼女に聞いた。

「それで、お前の本当の願いというのは何だ?」

「私の願いは・・・ただ、『中二病でも恋がしたい!』のキャラクター達と友達になって、日常を楽しみたかっただけなんです。確かに、私自身に多少の百合っ気があるのは自覚してはいましたけど・・・」

「そこを付け込まれた訳か・・・」

悪質な神の所業に静かに怒りを露わにするメイ。そんな中、六花が彼女に言った。

「なら、友達になってあげる。」

「え?いいんですか?」

「もちろん。だから、名前を教えて。」

「私は・・・桃園瑠奈といいます。」

「うむ。これからよろしく頼む。桃園。」

「はい。」

そして、転生者…桃園は六花の手をとったのであった。

「それより、あいつはどうするのだ?」

そんないい雰囲気の中、メイが凸守を指差しながら言った。

「そう言えばそうだったな。とりあえず、記憶を消さなければ・・・」

そう言って凸守に近付く六花。すると、凸守は・・・

「お姉様と呼ばせて下さい!」

なんと、目を輝かせながら六花にそう言った。

「は?」

これには六花はもちろん、メイと瑠奈まで固まってしまう。

「黒き翼と、輝く金色の瞳・・・そして、戦う勇ましい姿!!それを見てしまった凸守はもうお姉様の事以外を考える事が出来ないのデース!!!」

「六花。ひとまず記憶消去だ。」

めんどくさそうな気配を感じたメイは、直様六花に記憶消去を命じた。

「分かった。」

「ま、待って下さいデース!凸守はお姉様に対するこの敬意を忘れたくなど無いのデース!」

すると、凸守は涙ぐみながらうったえてきた。これには六花も困ってしまう。

「とにかく消去だ!」

「お願いです、お姉様!!」

「あぅ・・・」

前後から真逆の事を言われ、戸惑う六花。その時、瑠奈が言った。

「あの、記憶の改ざんとかは出来るんですか?」

「改ざん?」

「はい。例えば、私の所を不良とかに置き換えて、戦っていた所の記憶を消すとか・・・」

「分かった。それで行く。」

速攻で瑠奈の提案を採用する六花。そんな彼女にメイが心配そうに言った。

「大丈夫なのか。それで?」

「わからない。初めてだから。」

「初めてだと!?」

「改ざん、開始。」

「おい!話を聞け!!」




翌日の朝のホームルーム。六花達のクラスではあるイベントがあった。

「今日は転校生を紹介します。」

「桃園瑠奈です。よろしくお願いします。」

瑠奈が転校してきた。そして、六花とメイの知り合いと言う事で、直ぐに彼女達のグループに馴染む。

「にしても、桃園さんにも七宮が見えたのね。」

丹生谷が瑠奈に言った。彼女からはもう黒い触手を操る異能は失われていた。にも関わらず七宮の姿が見えるのは彼女の願い『【中二病でも恋がしたい!】のキャラクター達と友達になって、日常を楽しみたい』というものから来ているのではないかとメイは推測している。
だが、この日に起こったイベントはこれだけでは無かった。




昼休み。新たなメンバーである瑠奈を加えた六花達のグループが昼食を摂っていると、またしても今日に凸守がやって来た。

「来たわね、中坊。」

彼女の姿を確認した丹生谷が拳をポキポキと鳴らして前に立ちはだかる。だが、凸守は丹生谷の横を素通りして行った。そして・・・

「こんにちはデス。お姉様!」

六花の手をとって挨拶をした。その光景にクラス一同が固まる。

「はあ?お姉様って、昨日の今日で何があったのよ。」

凸守の六花に対する態度が昨日とはあまりにも違い過ぎる事を怪訝に思う丹生谷。すると、凸守が説明を始めた。

「あれは昨日の事デース。凸守が悪漢に襲われていた所を、お姉様は颯爽と現れて救ってくれたのデース!!」

「小鳥遊さんが?」

凸守の言葉が信じられなかったのか、丹生谷は六花の方を見た。

「今の話は本当。でも、大した相手では無かった。」

「うっ・・・」

六花の答えにその『相手』であった瑠奈は複雑な気持ちになる。すると、凸守が興奮しながら説明の続きを始めた。

「あの勇ましく戦い、舞う姿はとても素晴らしかったデース!まさに『漆黒の堕天使』!!!」

「「「ぶっ!!!」」」

それを聞いた六花、メイそして瑠奈の三人は思わず飲んでいたお茶を吹き出してしまう。

「うわっ!?どうしたのですか!?」

『まさか、ミョルニルハンマーの精神攻撃!?』

それを見た風鈴と七宮が騒ぐが、六花が「何でも無い」と言い、三人は顔を寄せ合って小声で話し合った。

「どう言う事だ六花。ちゃんと記憶を改ざんしたのでは無かったのか!?」

「ちゃんと消した。でも多分、凸守の中にある私が堕天使というイメージがあまりにも強烈なせいで、そこだけ残ってしまったのかもしれない。」

「それだけ、サーニャは六花の事が好きになってしまった訳ですね。」

何とも言えない状況に頭を抱える三人。そんな中、凸守はズケズケと六花の隣にやって来る。

「さあ、お姉様。これからご一緒に昼食を・・・」

「ダメに決まっているでしょう。」

だが、そこで待ったをかける者が居た。このクラスの風紀委員、佐伯玲子である。

「前にも言ったけど、中等部の生徒が勝手に入って来たら・・・」

「何デスか、お前は?凸守とお姉様の仲を邪魔するとでも言うのデスか?さっさと何処かへ行くデース!さもなくば、痛い目に合うデスよ?」

すると凸守は螺旋の書を取り出した。それを見た丹生谷が顔を青くして「ひっ」と小さな悲鳴を上げる。

「螺旋とは世界の根幹を成す理。この世全て法則は全て螺旋の中にある。」

「いやああああああああ!!!聞きたくないいいいいいいい!!!」

そして、凸守の音読を聞いて、丹生谷は転げ回るのであった。今日もまた、このクラスは平和である。



続く
 
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