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戦国異伝

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第百六十一話 紀伊へその十

「あの者達は」
「まだ兵を集めきれてはおりませぬ」
「紀伊まで急いで逃げたのじゃな」
「はい、そこから散った様で」
「まだ集まりきっておらぬのじゃな」
「左様です」
 そうだとだ、雪斎は信長に答える。
「それはまだです」
「そうか、それではな」
 本願寺との戦がまだと聞いてだ、信長はすぐに断を下した、その断はというと。
「主力は高野山に向ける、そして高野山と話をする」
「延暦寺でした様に」
「そうじゃ、そうしてじゃ」
 あの時と同じ様にというのだ。
「高野山も治める、よいな」
「ではすぐにあの山の方に向かい」
「囲む」
 まさにだ、そうしてだというのだ。
「高野聖達のことも正させようぞ」
「殿、門徒達にはどうされますか」
 ここで問うたのは池田だった、彼は真剣な顔で信長に問うてきた。
「まだあの者達は集まっていないにしても」
「目付を置くべきだというのじゃな」
「そう思いますが」
「爺に一万の兵を預ける」
 そうしてだというのだ。
「それで目付とする」
「一万ですか」
「無論戦わぬ」
 本願寺の兵二十万と比べると話にならない、だからそれはしないというのだ。
「あくまで目付じゃ。それに紀伊の国人達も集めさせる」
「そうしてですか」
「うむ、爺は高野山のことを収めるまで目付をしてもらう」
「畏まりました」
 平手も信長の言葉に応えてきた。
「ではすぐに一万の兵を率い」
「うむ、手頃な城に入りな」
 そうして目付をせよと言うのだった。
「わかったな」
「畏まりました」
「高野山の話が終わればすぐに向かう」 
 平手のいる場所にだというのだ。
「そうするからな」
「ではそれまでは」
「うむ、頼んだぞ」
「さすれば」
 平手も応えそうしてだった。
 門徒達への備えも為された、織田家の軍勢はそのうえで高野山に向かっていく。そしてその中でだった。
 紀伊の地侍や国人達はどんどん集まって来る、そうして。
「紀伊の者は殆どです」
「当家についた模様です」
 休憩中の本陣でだ、村井と島田が信長に述べる。「
「後は高野山とです」
「そして門徒共です」
「左様か、ではじゃ」
 そう聞いてだ、信長は言った。
「このまままずは高野山じゃ」
「あの寺をですな」
「攻めますか」
「いざとなればな」
 この選択肢は消去しなかった、今も。
「そうするがじゃ」
「とりあえずはですか」
「話をされますか」
「それが第一じゃ」
 戦ではなくそれだというのだ。
「話をしてじゃ」
「そうしてですか」
「若しこちらに従わねば」
「その時はですな」
「この軍勢で以て」
「高野山は完全に囲む」
 こうも言う信長だった。
「あの山全体をな」
「そしてですな」
「いざという時には」
「うむ、攻める」
 実際にだ、そうするというのだ。 
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