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久遠の神話

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第百話 加藤との話その十

「子供が」
「じゃあ僕の弟か妹が」
「欲しいと思ってるのよ。いいわよねあんたも」
「うん、僕はね」
 いいというのだった、彼も。
「というか是非ね」
「欲しいのね」
「一人っ子じゃない、僕って」
「それで余計になのね」
「弟か妹が欲しいって思ってるよ」
 こう母に言った、はっきりと。
「昔からね」
「そうよね。けれどね」
「ずっと僕一人だよね」
「子供は授かりものよ」
 母もだ、こう彼に言った。
「だからね」
「欲しくてもなんだ」
「貰えないのよ。逆の場合もあるわよ」
「欲しくなくてもなんだ」
「そう、貰ったりもするし」
「じゃあ僕は」
「あんたは欲しかったのよ」
 息子にはっきりと告げた言葉だった。
「お父さんもお母さんもね」
「それで出来た子供なんだね、僕は」
「そうよ。けれどね」
「それからはなんだ」
「出来ていないわ」
 苦笑いで言う母だった。
「ずっとね」
「そうなんだね」
「何度も言うけれど子供は神様からの授かりものだから」
「欲しいって思ってもなんだ」
「出来るとは限らないのよ」
 そうしたものだというのだ、そしてだった。
 母は餃子をタレに漬けてから口に入れてそれで御飯を食べつつだ、同じ様にして餃子と御飯を食べている我が子に言った。
「あんたもよ」
「僕も?」
「あんたも将来結婚するわよね」
「そのつもりだけれど「
「樹里ちゃんと結婚しても」
「いや、村山さんとは」
「いいから聞きなさい」
 母として強引に話を進めた、親子の関係は時としてこうした力技も必要なのだ。
「とにかく結婚してもね」
「子供は欲しくても」
「絶対に貰えるとは限らないのよ」
「本当に授かりものなんだね」
「何でも計画通りにいくなんてないから」
 これは絶対にというのだ。
「計画経済とかにはならないのよ」
「何がどうなるかわからないんだ」
「人間なんてちっぽけよ」
 こうも言う母だった。
「何でも人間の計画通りにいうと思ったら大間違い」
「だから結婚してもなんだ」
「子供が出来るとは限らないの」
「そういうものなんだ」
「そう、けれどね」
「けれど?」
「子供が欲しくて出来なくても」
 それでもだというのだ。
「子供が沢山いる人は羨んだら駄目よ」
「嫉妬したらなんだ」
「羨んでも仕方ないわよ」
 そうしたことでは特にだというのだ、羨望というものはそう思っても仕方ないものであるが子供のことはとりわけというのだ。 
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