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万華鏡

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第七十一話 おとそその五

「僧兵じゃないんだから」
「日本の話じゃないけれどね」
「お坊さんがそうして暴れるってよくないでしょ」
「その国じゃお寺同士の抗争もしょっちゅうらしいわ」
「殆ど戦国時代ね」
 戦国時代の寺社の争いそのものだというのだ。
「それじゃあ」
「何でもその国一回仏教が徹底弾圧されたらしいのよ」
「徹底的に?」
「何か仏教を信仰したら弊害がひどくて次に政権で徹底的に弾圧されたらしいのよ」
「そんなに凄い弾圧だったの」
「みたいね、お寺全部山奥に押し込んでまでしたっていうから」
 全て歴史にあることだ、そこまでした国もあるのだ。
「それで今じゃ仏教がそれなりに力を取り戻してきたけれど」
「お坊さんが集団で暴れてお寺同士で喧嘩するのね」
「そうなの」
「日本じゃ考えられないことね」
「日本の宗教界は平和よ」
 例え様々な問題がその中にあろうとも、というのだ。
「説法での言い合いはあってもね」
「それも滅多にないだろ」
 美優が景子にこう言ってきた。
「そういうのも」
「そうね。解釈の違いなんて言っても仕方ないからね」
「そうだよな」
「宗派が違ってもね」 
 その違いも、というのだ。
「あまりね」
「違わないか」
「仲いいわよ」
 そうだというのだ。
「そんな大昔の学生運動みたいなことしないから」
「鉄パイプ持って暴れるとか」
「絶対にないから。それどころかうちの町だと」
 この八条町ではというのだ。
「皆で仲良くすき焼き囲んで新年会だから」
「そうなんだな」
「二日酔いになったら奥さんに怒られるけれどね」
「それは何処でもだろ」
 理由は簡単だ、夫が二日酔いになって動けなくなれば邪魔だからだ。奥さんが怒らない筈がないことだ。
「お寺じゃなくても」
「ええ、うちでもね」
「景子ちゃんのところの親父さんもか」
「飲み過ぎて二日酔いになったらね」
「その時はだよな」
「お母さん怒るから」
「だよな、やっぱり」
「お母さん曰くお酒は飲んでも飲まれるな」
 定番の言葉だ、酒を飲むにあたって。
「二日酔いなんてもっとの他ってね」
「そうなるよな」
「そうなの、私達にしてもね」
 そのおとそを今も飲みながら言う景子だった。
「二日酔いになったら怒られるから」
「じゃあまたよね」
 彩夏も飲みつつ言う。
「これ飲んで食べた後は」
「そう、お風呂に入ってね」
「お酒抜くのね」
「そうしましょう、今すぐでなくてもいいから」
「次の日の朝とか?」
「何だかんだでお酒飲んですぐのお風呂って危ないからね」
 プラネッツの五人がよく無視することだが実際にはそうなのだ、酒と風呂の組み合わせは決していいものではないのだ。
「だからね」
「明日の朝ね」
「そう、明日にでも入ればいいから」
 真っ赤になっている顔でだ、景子は彩夏にこう語る。既に五人共その顔は赤く目も酒でとろんとしだしている。
 その中でだ、里香も言う。
「いや、それにしてもね」
「それにしても?」
「どうしたの、里香ちゃん」
「いや、今日もかなり飲んで食べてるわね」
 こう話すのだった、四人に。 
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