覇王と修羅王
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合宿編
十六話
「おーおー、ちびっ子組は最初から飛ばしてるねぇ」
「元気よねぇ」
飛ばし飛ばされてのアレク等を眺めて言うセインに、メガーヌも同意した。
他にも同じアタッカーのスバルとノーヴェも激しくぶつかり合っているが、両者ともLIFEは3000から2900に減っただけ。フェイトとエリオは至っては未だノーダメージで、均衡は保たれている。
だが、FBのキャロとルーテシアの支援準備も整いつつあるので、何時崩れても可笑しくない。
「でも、そろそろアタッカーの均衡が崩れ始めるわ」
「それは見物だ。最初に崩れるのは……ヴィヴィオ達んとこかな?」
「ええ、たぶんだけどね」
セインとメガーヌが視線を向けた時、ヴィヴィオとリオが攻撃を開始した。
舞い踊りアレクとアインハルトへ往く炎と雷の龍、その道筋を避け七色の弾が乱流のように弧を描く。
双龍円舞!
ソニックシューター!
対するアレクは半身の儘で、ジャブのように左拳を突き出す。当然ながら拳は空を切るが、其処に覇気の波紋のようなものが浮かぶ。
アレクは生じた波紋が収まらぬうちに、その中心を右拳で撃ち抜いた。
機神双獣撃!
生まれ出るは青白い覇気の龍、其れが二頭。
邪魔な弾を咬み砕き、炎と雷の龍へ喰らい付くが、リオとてそのまま喰われる事を良しとしない。炎と雷の龍を巧みに操り、覇気の龍へと喰い付かせる。
片や噛み砕き、片や千切り。荒れた音を断末魔に、龍の姿は揃って消えて逝く。
だが、まだ攻撃が途絶えた訳では無い。
ヴィヴィオが放った弾はアレクを目標にしているらしく、勢いよく飛来する。そして着弾する――――前にアインハルトの腕が伸びた。
弾の軌道に合わせ腕を回し、弾殻を壊さずに次々と難無く受け止める。
アインハルトは最後の一つまで受け止めきると、返球するようにヴィヴィオに向け――――
覇王流 旋衝破!
「おぉ! 何々今の!? 弾丸反射!?」
「……見ての通り、受け止めて投げ返したのよ」
「そんな事できんの?」
「出来るわ、真正古代ベルカの術者なら……」
……理論上はね、とメガーヌは呟きながらも驚いていた。難無く行っているように見えるが、壊さぬよう受け止める事は難しい事を知っている故に。
そして、驚愕は放った術者側も同様である。
返球に誘導性こそ無いがその分格段に早く、驚き呆気にとられていたヴィヴィオは防御が疎かに成ってしまい、LIFEを1800まで削られてしまった。
更に、これで終わらせないとばかりにアインハルトは受け止めて残った弾を次々と投げていくが、二球目からはコロナがゴライアスを前に出し、壁と成り遮断した。
その様子を目にしたアレクは、攻撃が通らないと判ると即座に飛び出した。
覇気を全身に纏い弾丸のように進撃する先はゴライアス。弾を防いだ後の苦し紛れのような拳に自身の拳を合わせ、その反動で進路を変えてターゲットへ向かう。本命はまだ体勢の整わないヴィヴィオ、反射的に構えたリオを素通りして変わらぬ速度で突き進む。
対し、回避も間に合わないとヴィヴィオは咄嗟に防御を固めるが、アレクが身を低くした事に気付き見開いた瞬間、足が低空のタックルに攫われ宙を舞った。
だが、この速度で通過したならば連撃は不可能。LIFEを1000まで減らされながらも次に備えようとするが、地に着く前に襲い掛かる拳が在った。アインハルトが覇王流の歩法を駆使し、更にリップストリームの要領でアレクの後を追い迫っていた。
不味い! そうヴィヴィオは思うが既に遅く、振り下ろされた拳を食らい地に叩き落とされた。
LIFEの残りは500。アインハルトの更なる追撃が……という所で、黒いダガーが飛来した。
トーデス・ドルヒ!
ダガーの形をしたルーテシアの射撃魔法。着弾と同時に爆裂し、アインハルトのLIFEを2550に減らして遠ざけた。
◆ ◇ ◆
一瞬で塗り替わった視界に瞬きするヴィヴィオに、ひらひらと手を振る姿が映る。
見渡してみるとルーテシアが居る青組陣営最後尾で、召喚による転送だと遅れて理解した。
「あの二人はどうだった?」
「……強かった」
ルーテシアの質問に、ヴィヴィオは噛み締めるように答えた。
格闘技ではまだまだ敵わないからと魔法戦で挑んだが、予期せぬ手段で返された。その矢先のアレクによる襲撃も、予想以上に早かった。
だが、まだ敵わない……、とヴィヴィオは項垂れるような精神をしていない。
「……でも、もっと知りたい、もっともっと戦いたい!」
また機会があれば、と言ったアインハルトに応える為に、戦ってみたいと思っていたアレクとも向き合う為に。二人が本気で向かってきているのだから、応えなければ寧ろ失礼というものだ。
まだ自分も見せてないものだってある。これが通じるか判らないが、凄く試してみたい。すぐさま飛び出そうとするヴィヴィオに、ルーテシアが待ったを掛ける。
「行くのは治療してからね」
「ええー!」
「こんな序盤でアタッカーが墜ちたら大変でしょ。全快するまであの二人の攻略法でも考えてなさい」
「……はぁ~い」
ヴィヴィオはルーテシアの言に頷きモニタに映るアレクとアインハルトをガン見するが、すぐにうずうずそわそわと落ち着きがない。完全に火が点いた状態だ。
そんなヴィヴィオを横目に、ルーテシアは戦力分析を開始する。
現在アレクとアインハルトのLIFEは2500。戦力はヴィヴィオ等を上回っていると明白になったが、それはあくまで個々の戦力に過ぎない。先程の連携も協力し合っていた様に見えるが、傍から見ればアインハルトが合わせていたと十分に判る。でなければトーデス・ドルヒをアレクが対処出来ていた筈だ。
なので、二人が組んだ場合はアインハルトを狙っていくのが定石だろう。旋衝破も、アインハルトが直接触れてこそ成り立つ技と見れるので、射撃に関してもやりようはある。
そしてアレクの行動を顧みると、二対一だと分が悪い、若しくはゴライアスのような人外とは相性が悪いのかもしれない。
だが、確信まで行かないので、もう少し判断材料が欲しい。そう思っていると、丁度モニターにゴライアスへ向かって行くアレクが映った。
コロナは操るゴライアスの巨大な右拳でアレクを叩き潰さんと放つが、アレクは防ごうとも避けようとしない。
覇皇空円脚!
巨拳に向かい、円を描く蹴りを放った。
覇気と魔力付与が合わさる轟なる蹴りがゴライアスの拳を粉砕するが、その一撃では終わらない。脚が何重にも円を描き、手首へ、腕へ、肘へと砕き進む。
そして残った上腕を足場に跳び、腕を振り上げる。狙うは左肩に居るコロナ、頭上から叩き斬らんと振り下ろす。
覇皇両断刀!!
研ぎ澄まされた覇気を纏い魔力付与も籠もった手刀は、全てを断つ絶刀のよう。
だがコロナとて格闘技を学んでいる。感知した悪寒に従い後ろへ跳び、LIFEを2500から2400と掠る程度に抑えた。
目標を外した手刀は肩を裂くだけでは飽き足らず、そのまま真下に斬り進み身体を二つに裂いて行き、オマケとばかりに地を穿つ。
裂かれたゴライアスは倒れ行く……が、コロナに創成された物である。
『甦れ巨神!』
『ちょっ、おまっ!?』
殆んどの部分が残った上での再構築なので創成はとても早く、アレクの徒労を無に変えた。
次いで反撃を開始する様とアレクの悲鳴を聞く限り、コロナはまだまだ保つだろう。
だが、アインハルトを相手するリオは危なくなってきた。
お互い本領の打撃戦に成っていて同じようにLIFEが少しずつ減っているが、差は埋まってない。LIFEがまだ2250あるアインハルトに比べ、リオは1050まで削られている。
一端下げて様子を窺おう。それでアレクと共にコロナを狙うなら気を見て再戦させ、他へ行くならば他の人にちょっと頑張ってもらおう。
「リオ、ちょっといい?」
◆ ◇ ◆
(……引いた?)
まだ決着がついた訳ではないというのに、突然下がったリオにアインハルトは眉を顰めた。何か作戦でもあるのだろうか?
だが、今ならアレクと結託してコロナを仕留められる。若しかしたらリオがその隙を狙っているのかもしれないが、好機には変わりない。
アインハルトは横槍の警戒を十分に、コロナへ仕掛けようとするが、ティアナから待ったの声が掛かった。
『アインハルト、ストップ。今の中に先陣突破でなのはさんの所に斬り込んで』
「……ヴィヴィオさんのお母様の所に?」
『向こうが何企んでるか判らないけど、恐らく要に成るのはなのはさんよ。全力で止めに行って』
「――――はい、承りました」
アインハルトはティアナの言に頷き駆け出しながら、チラリとアレクの方を見る。
アレクはゴライアスの対処に苦労しているが、今のところ攻勢に回っている。此処でリオが加わっても、そう簡単に墜ちはしない……だろう。
そう思いなのはに向かうが、どうにも後ろに気を引かれる。クラウスの、オリヴィエに置き去りにされた記憶があるからか。
だが此れは生死と関係無い試合で、昔とは違う。アインハルトは頭を振り、先に居るなのはを見据えた。
「ヴィヴィオさんのお母様、一槍お願い致します!」
「私で良ければ、喜んで!」
アインハルトが中距離に差し掛かった所で、なのはは射砲支援を止めレイジングハートの切っ先を向ける。
そして、先ずは足を止めようと弾幕を集中させる。
アクセルシューター!
幾つもの弾が上下左右からアインハルトを襲うが通らない、旋を描いた手で捌かれる。
だがヴィヴィオ等とのやり取りを見ていたので、此れはなのはも承知でやった事。狙いは次の一撃だ。
フォトン・スマッシャー!
今度は弾ではなく砲撃、これはどう捌くのか。なのはは若干の興味を含みながら狙い撃つ。
砲撃に対しアインハルトは、弾を捌ききった後に拳を突き出すだけだけ。ただ其れだけで砲撃を相殺し、あら、と驚くなのはに進撃した。
「はあっ!」
「おっと!」
なのはは顔面を狙うストレートを躱し、次いで来るリバーブローをレイジングハートの柄で防ぐ。
やや前姿勢であるが、左右どちらの拳も強打であり、打っても姿勢が崩れない。それに途切れない事から、地道な基礎トレーニングを続け、確りとした土台作りをしてきたのだろう。
なのはは続く拳打を捌きながら、アインハルトの分析を続ける。
一方、アインハルトは強固な壁に向かい打ち続けているような気分だった。
ボディを狙う拳は防がれ、顔を狙えば捌かれる上に、後退すらさせられない。思考を読まれているかのようだ。
だが、このまま攻め続ければ――――。
『アインハルト、あんまり攻撃一辺倒だとなのはさんのアレが!』
『おまえ敵チームだろ!?』
何故か青組のスバルの注意とノーヴェの野次があったが、アインハルトの耳に届いていない。
なのはの腕を打ち飛ばして防御を開かせ、空いた身体に右拳廻打を叩き込む……が、身体を打ったにしてはやけに硬い感触がした。
バインディングシールド!
シールドから発生したチェーンがアインハルトの腕に絡みつく。
なのははその隙に後ろへ跳び、レイジングハートの切っ先を向け、再び砲撃体勢に入る。接近封じをした上の必勝パターンである。
アインハルトはそうはさせまいと腕に力を込めるが、ビクともしない。これでは避ける事は愚か、防御も儘ならない。
『そうじゃねぇ、昨日覚えた事を思い出せ』
――――昨日覚えた事、それは水切り。
脱力静止した状態から身体を回転させ、拳を押しだす動作。踏み込みが出来ぬ分確りと足を着き、その力を足先から下半身へ、下半身から上半身へ流す様に伝え、最後のインパクトの瞬間だけ撃ち抜く!
エクセリオン――――ッ!?
バインドを砕き、突き出した拳が生んだ衝撃が砲撃を裂き、なのはのLIFEを2500から2000まで削った。
(今の……)
足先から拳に力がスムーズに流れていったような、それでいて何もかも砕けそうな感覚。
繰り出した一撃の余韻がアインハルトに走る……が、致命的な隙と成った。まだなのはは健在なのだ。
再び迫る砲撃を辛うじて躱すが、それを見越した様になのはが背に現れた。
ストライク・スターズ!
旋――――
周囲に展開したスフィアからの射撃と砲撃の合わせ技。
アインハルトは旋衝破で受け流そうとするが体勢を整える事も叶わず、砲撃に呑まれウイングロードも裂き地に沈んだ。
(凄い子だな……)
そうなのはは倒れるアインハルトを見て思う。
バインディングシールドを砕いた上に砲撃を突き裂いた。其れが出来たのは膨大なトレーニングで築かれた土台が在ってこそ。
ヴィヴィオが賛美する訳だ、となのはは多少親バカな事を思いながらレイジングハートを振り上げる。
現在アインハルトのLIFEは15、辛うじてであるが生き延びている。LIFEが100未満なので行動不可だが、放っておくと転送され回復されるだろう。
これでトドメ――――という所で徹甲狙撃弾が飛来し、LIFEが2000から1100に減らされた。
「いっったぁ~! この弾丸……ティアナ?」
後頭部を擦りティアナの方を見ると、幾つものスフィアを展開し、既に発射体勢に入っていた。
クロスファイア・フルバースト!
辺り一帯の面攻撃。
青組前線メンバーがLIFEを200から300程削られる中、なのははシールドで防いだがその隙を突いたキャロにアインハルトが召喚された。
◆ ◇ ◆
「……ありゃ? ノーヴェが突っ込んでくる」
クロスファイアから避けるスバルを放り、そのまま全速力で向かってくるノーヴェの姿がモニターに映る。その速度は追い駆け始めたスバルより上で、少しずつ離されつつある。
コロナの後ろからアレクにちょっかいを出すリオに今から向かってもらっても、間に合わないだろう。
「ルールー、わたしはこんだけ治ってるからもーへいき!」
ヴィヴィオのLIFEは2600まで回復したので、十分と言えば十分だろう。
迫るノーヴェは2100で追うスバルは1950。エリオは1800で対するフェイトは2050。
そしてコロナは2300でリオは1050、その相手をするアレクはキャロからブーストアップ・アクセラレイションを受け俊敏性が上がっている所為か、上手く捌き2200への減少で済んでいる。
だがアインハルトは治療中なので、好機には違いない。潰しきる事は可能だろう、とルーテシアは一つ頷き、発令した。
「じゃあ青組の皆さん、予定よりちょっと早いですが作戦を発動します!」
『了解!』
後書き
チーム戦ムズイッ!!
フェイトとエリオの戦闘も挿もうとしたけど、ど~もタイミングが掴めんで書いたり消したりしてた。
区切るタイミングも掴めんで書いたり消したりして遅れてしもーた。
SLB合戦は次回でヤンス。
あと今更な気もしますが、オリキャラ紹介的なこと書いた方がいいんですかね?
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