妖精の義兄妹の絆
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ギルドへの依頼
あれから1週間がすぎた。
タクヤの体調も大方完治していた。
「…。」
「どうしたの?」
ウェンディがタクヤの顔に近づいて質問した。
「え?いや、なんでもねーよ。」
「ならいいんだけど…、マスターからお使いを頼まれたんだ。
薬草がもうなくなりそうだから森に行って採ってきてって。一緒に行こう?」
「あぁ。」
「じゃあ、私支度してくるからギルドの門の所で待ってて。」
「わかった。」
ウェンディはタクヤにそう言い残すと自分の部屋に行ってしまった。
(「あの森か…。」)
あの森とは1週間前、タクヤが遭難していた場所だ。なにか感慨深いものがある。
10分後
支度を済ませたウェンディが門へやってきた。
「おまたせ。じゃあ、行こっか?」
「そうだな。」
そう言って二人はギルドを後にし、森へと向かった。
「そういえば、タクヤはどんな滅竜魔法使うの?」
タクヤはウェンディの魔法を知っていたが、ウェンディはタクヤの魔法を教えていなかったのだ。
「まだ、教えてなかったな。俺の魔法はこれだよ。」
タクヤは手のひらをウェンディに近づけた。
バシャン、ジャー
音をたて手のひらに現れたのは“水”だった。
「これがタクヤの魔法?」
「あぁ、俺は水の滅竜魔導士。水を自在に操ることができるんだ。」
「へぇ、お花の水やりには便利だね。」
「えっ?」
ウェンディの発言に戸惑いながらも、タクヤはウェンディにも質問した。
「ウェンディは何の滅竜魔法なんだ?治癒魔法ぐらいしか知らないからさ。」
「私は天空魔法なの、天空の滅竜魔導士。」
「じゃあ、空気を食べるのか?」
「そうだよ。」
それは酸素とどう違うのか聞こうとしたが、まだこの年じゃわからないだろうと
タクヤは聞くの諦めた。
「あっ!あそこだよ。あそこでタクヤは倒れてたんだよ。」
そうか…、ここで…。
しばらくタクヤが倒れていたであろう場所を見つめて言った。
「そう考えると俺はラッキーなのかもしれないな…。」
「なんで?」
「だって、ここじゃなく別の場所で倒れてたらウェンディに助けられることなく
俺は死んでたかもしれないんだから。」
「それはそうだけど…」
「だから、ウェンディには感謝してるんだ。ウェンディは俺の命の恩人だ。本当にありがとう。」
改めてタクヤはウェンディに礼を言った。
「え、えへへ。どういたしまして。」
ウェンディはかおを少し赤らめながらにっこり笑った。
「さぁ、早く薬草を採りにいこう。」
「うん。」
そうして、二人は再び薬草収穫に向かった。
「ずいぶん集まったな。」
あれから2時間、タクヤとウェンディは薬草が生い茂っているポイントで収穫していた。
「結構集まったからそろそろ帰ろっか?」
「え?でも、まだこんなにあるぜ。どうせなら全部採ろうぜ。」
確か二人が大量に採ったとはいえ、薬草はまだかなり生い茂っていた。
「全部採っちゃうと次からはここに薬草が生えてこなくなるの。だから必要な分しか採っちゃだめなんだよ。」
「へえ、そうなのか。なら、仕方ないな。」
少し勿体ない気もしたが、そういう理由なら仕方ないとタクヤはポイントから離れた。
「じゃあ、帰るか。」
「!…もうすぐ大雨が降る…。」
「なにいってんだよ。こんなに晴れてるじゃないか。」
タクヤが空に向かって指をさすと青空はたちまち灰色の雲に覆われた。
ポツ
その瞬間、空から大粒の雨が降ってきた。
「マジかよ…。」
タクヤは目を丸くしてその場に固まっていた。
「こっち!この先に洞窟があるからそこで雨宿りしよう。」
ウェンディはタクヤの腕を掴んで走った。
ウェンディが案内した洞窟は大人3人は容易く入れるぐらい広かった。
子供であるタクヤとウェンディだけだとそれ以上に感じられる。
洞窟の中には前もって準備してあったのか薪が段を重ねている。そのほかにも布団や木の実などもあった。
「なんで薪とか布団があるんだ?」
「前に何度か薬草や木の実を採りに行ったときも雨が降っちゃって、そのときにこの洞窟を見つけたの。だから、
いざってときのために薪を用意してたの。」
「はー、しっかりしてるなー。」
「えへへ、…でも、この様子じゃしばらくやみそうにないなー。」
ウェンディは洞窟から外の様子を見た。
依然として雨は規則正しく降り続けている。やむのは明日になるだろう、とウェンディは推測した。
「…まぁ、最悪ここで野宿だな。木の実もあるし、大丈夫だろ。」
「そうだね。」
「まず、火をおこすか。少し肌寒くなってきたからな。」
タクヤはその辺にあった石を二つ拾い、力強く打ち付けた。
「それで火がつくの?」
「あぁ、旅してた時もこーやって火をおこしてたんだ。」
タクヤが石を打ち続けてるうちに火花が散ってきた。
何度もしているうちに火は少しずつまとまってきた。
「よし、これで薪に移せば…。」
タクヤが小さな火種を薪へそっと移した。薪はみるみる火に焼かれ次第に大きな火へと姿を変えていった。
「こんなもんだろ。これで寒いのは完璧だな。」
「わぁ!すごいよ。タクヤ!」
「まぁな♪ざっとこんなもんさ。」
タクヤは鼻をかき自信げになった。
夜
まだ外は大雨に見舞われている。
夕食を食べ終わった二人はなにもやることがないので早々に寝支度をしていた、が、
「…。」
布団をかけて寝ようとしたが布団は一人分しかなかったのだ。
(「元々、ウェンディ一人が野宿する用に準備してんだから一枚しかないのは当然か…。」)
タクヤは諦めて火を絶やさないように一日中起きていることにした。
「いいの?私だけ寝ちゃっても…。」
「あぁ、気にすんなって。一枚しかないんなら仕方ないからさ。
それに火が消えたら寒いだろ?俺が火を絶やさないようにしてるからウェンディは早く寝ちまいな。」
そう言いながら定期的に薪を火の中に投げ入れていた。
「…わかった。」
ウェンディはそう言い残し、布団のなかへ入った。
真夜中
今が何時なのかもわからなくなってきた。相変わらず雨は降っていたが少し弱まったようだ。
あたりも雨音以外なにも聞こえない。ウェンディも規則正しい寝息をたてている。
どうやら熟睡できているようだ。
「こうやってみると、まるで妹みたいだな。」
そう言ってタクヤはウェンディの頭をつい撫でてしまった。
「ん…、」
(「やべっ、起こしちゃったか!?」)
タクヤは慌てたがすぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。
「ふぅ、あぶねー。」
「んー…、ジェラールゥ…。」
「…やっぱり、寂しいんだな。」
「…タクヤァ…。」
「ふ、俺も呼んでくれるのか。」
タクヤはウェンディの頭をまた撫でた。
「…。」
タクヤは薪を加えながら考え事をしていた。
(「俺は一体、いつまでここにいられるんだろう…。」)
タクヤの体調はもう心配するような悪いところはどこにもない。
むしろ、化猫の宿に来てから調子がよくなった方だ。マスターは優しく接してくれてる。
ギルドのみんなだってタクヤのことを我が子のように扱ってくれてる。
何より、ウェンディの献身的な看病のおかげでここまで回復できたのだ。
感謝しても足りないくらいの恩をうけた。
だから尚更、このままここにいてもいいのだろうかと思う。ギルドの人たちに甘えっぱなしでいいのだろうか?
自分には母親である水竜マリーネを探すという目的もある。しかし、探すにも手がかりはひとつもない。
第一、ドラゴンは滅多に目撃されない。実在するかどうかもわからないあやふやな存在なのだ。
だが、それでも探しださなくちゃいけない。会ってどうしていなくなったのか聞きたい。
他にも聞きたいことが山のようにあるんだ。
………俺たちは捨てられたんだ………
「…そんなこと…あるわけない…。」
タクヤはそう言って焚き火に薪を加えた。
『俺たちは捨てられたんだ…。絶対に許さない。
殺してやる…!』
「っ!」
タクヤはその場から起き上がった。顔には大量の汗をかいていた。
「なんであんな夢…。」
タクヤは顔の汗を腕で拭ったとき、自分に掛けられていた布団の存在に気づいた。
(「あれ?たしか、これはウェンディが使ってたはずだけど…。」)
ウェンディが寝ていた場所に目をやると、そこにウェンディの姿はなかった。
「!どこに行ったんだ…?」
タクヤは急いで外に出た。雨はすっかりあがっており、朝日がでかかっていてまだ薄暗かった。
「朝っぱらからどこに行ったんだ…。」
タクヤは全速力で走りウェンディの捜索に出た。
時をさかのぼり、30分前
深い眠りから目を覚ましたウェンディは寝ぼけているのか辺りをキョロキョロしていた。
そして、すぐそばでタクヤが寝ているのを見つけた。
焚き火はまだ燃えている。さっきまで起きていたのは確実だ。
(「私のために、ずっと…。」)
正直、本当に一日中起きているとは思わなかった。
まだ自分と同じぐらいの年のはずなのに、
その姿はとても子供とは思えない風格をかもしだしていた。
(「そうだ!タクヤのために、食べ物を採ってきてやろう!」)
そう思うやいなや、ウェンディは外へ出て森のなかへはいっていった。
時を戻し、現在
タクヤは全速力で森のなかを駆け回っていた。
(「こっち側にはいないか…。次はあっちだな!」)
タクヤは森中をくまなく探していた。今は森の7割は探し尽くしたがウェンディの姿はどこにも見えない。
「どこいっちまったんだよ…。」
そう呟きながら森のなかを駆け回っていたとき、
遠くに小さな影をみつけた。タクヤは目を凝らして見てみる。
すると、それは木の実や果物を大量に抱えたウェンディだった。
「ウェンディ!」
タクヤが叫ぶとウェンディがこちらに振り向き、大声で答えた。
「タクヤー!」
どうやら、ウェンディは無事なようだ。タクヤはそう思うとどっと疲れた。
「…ったく。心配かけやがって。でも、無事ならいいか…。」
そのとき、
ゴゴゴゴゴゴゴ…
突然、足元が揺れ始めた。
「!まさかっ…。」
「タクヤ!」
ウェンディが叫んだ瞬間、ウェンディの足元に亀裂が入った。
「ウェンディ!そこから離れろー!」
時すでに遅し、ウェンディの足元がもろく崩れていった。
「キャャャャャャャ!!!」
そう叫びながら、ウェンディは崖へ落ちていった。
「くそっ!」
タクヤはウェンディの元へ向かった。落ちていくウェンディを追いかけるようにタクヤは崖から飛び降りた。
「タクヤァァァァ!!!」
(「待ってろよ!」)
ギュュュュュュュン
タクヤは体制を変えてスピードを加速させた。
ウェンディとの距離がみるみる縮まっていった。
「あと、すこし…!」
タクヤが手を差し伸べるとウェンディも手を差し伸べてきた。
「っ!」
力を入れて数センチの距離を一気に詰めた。
ガシッ
ウェンディの手を掴んだタクヤはそのまま自分の元へ引き寄せた。
「タクヤァ…」
ウェンディはタクヤをみて涙をポロポロこぼした。
「もう大丈夫だ。俺にしっかり捕まってろよ!」
「うん…!」
タクヤはウェンディを背中へ移動させると口を膨らまし地面へむけて放った。
「水竜の…咆哮!!!」
その瞬間、タクヤの口から大量の激しい水がいきよい良く噴射された。
ザァァァァァ!!!!
タクヤは水の噴射を利用して崖の上へ上ろうと考えていたのだ。
その作戦は見事に成功し、地上へ上がってこれた。
ダンッ!!
タクヤは上手く着地し、ウェンディを背中からおろした。
「大丈夫か?どこか怪我してない…?」
タクヤが言い終わる前に、タクヤを強く抱き締めた。
「ひぐっ、こわかったよぉぉぉ。…うえぇぇぇぇぇん…!」
ウェンディはタクヤの胸の中で泣きじゃくった。
タクヤはウェンディの頭を撫でながら、
「怖かったな。もう大丈夫だからな。俺がついてる。」
「うぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
そう言って慰めるとウェンディはさらに泣きじゃくった。
森の帰り道
タクヤはウェンディをおんぶしながら歩いていた。
ローバウルに頼まれた薬草はウェンディのバックの中にしまっている。
先ほど、ウェンディに怪我がないか確認したところ、右足の膝を切っていた。
おそらく、崖から落ちた際に岩の切れ目で切ったのだと思われる。
その足じゃ歩けないだろうとタクヤがウェンディをおんぶして帰ることとなったのだ。
帰り道はお互い沈黙を守っていたが、先に破ったのはウェンディだった。
「タクヤ…。」
「ん?どうした?」
「さっきは、ありがとう。」
「あぁ…、気にすんなよ。当たり前のことをしただけだし…。
それにしてもなんで一人で森の中に入ったりしたんだ?すげー心配したんだぞ。」
「ごめんなさい…。私…タクヤに食べ物を見つけてこようと思って、でも、落としちゃったし…。」
「だから、一人で森の中に…。」
「タクヤ、私のために一日中起きてくれてたし…。だから、私…。グズッ…。」
今にも泣き出しそうなウェンディをみてタクヤは微笑んだ。
「怒るつもりだったけど…、そんな理由なら怒れないな。ありがとな、ウェンディ。
その気持ちだけ受け取っとくよ。」
「うん。…なんかこうしてるとタクヤが私のお兄ちゃんみたい。」
「俺も、昨日ウェンディの寝顔見ながら同じこと考えたよ。」
「ほんと?」
「あぁ、ほんとほんと。」
「じゃあ、タクヤが私の本当のお兄ちゃんになってよ。」
「はっ?」
まさかこんな返答を言われるとは思わなかった。
「…だめ?このまま一緒にいよーよ。マスターやギルドのみんなだって喜ぶよ。」
一緒に…
タクヤは少し考えた。
(「俺の目的はマリーネをみつけること…。それは変わらない。
でも、俺と同じ境遇のウェンディの存在が俺の中で大きくなっている。
それも事実だ。ウェンディだって本心ではすぐにだってグランディーネを探しにいきたいはずだ…。」)
タクヤはウェンディに質問した。
「…ウェンディは、グランディーネを探しに行きたいと思わないのか?」
「え?」
ウェンディは一瞬戸惑ったが、タクヤの真剣な顔をみて答えた。
「…探しにいきたいよ。今すぐにでも会いたい…。」
「なら、どうして…。」
「私、化猫の宿が好き。ギルドのみんなもマスターも大好きなの。
だから、ギルドから離れたくないって気持ちの方が大きいの。」
ギルドが好き…
「それに、グランディーネがいってたんだ。
‘いつかあなたにもかけがえのない大切な仲間ができる。その仲間を一番大事にしなさい。’って。
だから、あたしはギルドの仲間を大事にしたいの。
グランディーネのことは、手がかりを見つけてから探しだそうと思ってる。」
仲間…か…
「あっ、ギルドが見えてきた!」
ウェンディが指差す方に猫の顔を型どったギルドが見えてきた。
ローバウルの自宅兼ギルド
「なぶら心配したぞ。とにかく無事でなによりじゃ。」
ローバウルがタクヤとウェンディに言った。
「マスター。これ、頼まれていた薬草だよ。」
そう言ってウェンディはバックの中の薬草をローバウルに渡した。
「おぉ、すまんのぉ。これだけあれば当分はもつじゃろう。ありがとな、二人とも。」
ローバウルは薬草を受け取り、タクヤとウェンディに礼を言った。
「えへへ。」
「…。」
「?どうしたんじゃね?」
「ここは魔導士ギルドですよね。ギルドには日々たくさんの依頼が舞い込んでくるって聞いたことがあります。」
「あ、あぁ、そうじゃが…。こんな片田舎にあるギルドじゃ他のとこにあるギルドより量は少ないが…。」
そして、タクヤは意を決して言った。
「なら、俺はここに依頼を出します!」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」
ギルドにいた全員が声をあげて驚いた。
「タクヤ、依頼だすの!?」
「して、どんな内容なんじゃ?受領するにしても限度があるわけじゃが…。」
「依頼内容は…、
水竜マリーネの捜索!!」
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」
さっき以上に声をあげて驚いた。
「そ、それは流石に無理じゃなぁ…。第一ドラゴンがいるかどうかもあやふやじゃし。
いや!ウェンディたちの親の存在を否定してるわけじゃないんじゃ!」
そう言い終わる前にタクヤはその場で頭を下げた。
「お願いします!無理を言ってるのは分かってます。でも、手がかりだけでもいいんです!
とにかく情報が欲しいんです。お願いします!」
たくやはさらに深く頭を下げて頼み込んだ。
「うーむ…。」
「マスター…。」
「ん?」
「私からもお願いします。」
「!…。」
(「ウェンディ…。」)
ウェンディも頭を下げ、ローバウルに頼んだ。
「…わかった。わかったから顔をあげなさい。」
タクヤとウェンディはゆっくり頭を上げた。
「君たちの親に会いたいという強い気持ちが伝わってきた。早速リクエストボードへ貼っておこう。」
「ありがとうございます!!」
タクヤはここに来て初めて笑顔を見せた。
「よかったね!タクヤ!」
「あぁ、あとマスターもうひとつお願いがあるんですけど…。」
「なんじゃね?」
「俺をここのギルドへ入れてください。」
「本当!?たくや!」
ウェンディは満面の笑みを浮かべてタクヤをみた。
「あぁ、いいとも。わしらは大歓迎じゃ。」
「ありがとうございます! 」
「そうとなれば今日はタクヤの歓迎パーティーじゃー!!」
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
ギルドが揺れた気がするほど大声で叫んでいた。
「やったぁぁぁ!」
ウェンディも両手をあげて喜んでいる。
それからはあっちやこっちでどんちゃん騒ぎ。
酒や食べ物がギルドの厨房からわんさかでてきた。
みんなわいわいやって楽しんでる。
タクヤはおばちゃん連中に絡まれたりしたりと楽しい時間が続いた。
その日の夜
タクヤは外の空気を吸いにギルドの裏にある丘へと向かった。
「はぁ~、あんなに絡んでくるとは。恐るべし、おばちゃん。
でも、みんないい人だよなー。ここのギルドに入ってよかった。」
雲ひとつない空には綺麗な三日月が出ていた。あまりにも綺麗だったのでつい見とれてしまった。
すると、突然目の前にあった三日月が消えた。
「だーれだ?」
「…ウェンディだろ。」
「ピンポーン。」
そう言って手をどかすと案の定ウェンディが後ろにいた。
「こんなとこで何してるの?」
「ちょっと外の空気を吸いにな。ウェンディは?」
「んー、私も一緒。今日は空気がおいしいねー。」
「あぁ、そうだな。」
空気の味がわからないタクヤでもそんな気がするぐらい空気が澄んでいた。
「なぁ、ウェンディ…。」
「なに?」
「さっきの、帰り道のことなんだけど…。本当に俺なんかでいいのか?」
すると、ウェンディは顔を近づけて怒った風に言った。
「なにいってんの!タクヤだからこんなこと言うんだよ。今日タクヤがギルドに入ってくれて本当に嬉しかった。
いつか私の前からいなくなっちゃうんじゃないかって…、不安だったの。」
「ウェンディ…。」
「だから、これからも私のお兄ちゃんとしてずっと一緒にいて!」
ウェンディのかおは月明かりに照らされているためか、瞳が潤んでいるように見えた。
それでも、涙を流すまいとこらえていた。
「…わかった。今日からは俺がウェンディの兄ちゃんだ。
ずっと一緒にいてやる。寂しい思いはさせない。約束だ。」
そう言ってタクヤは右手の小指をウェンディに差し出した。
「これからもよろしくね。…お兄ちゃん。」
ウェンディも右手の小指を差し出し、タクヤと指切りを交わした。
後書き
はい!ということで3話更新でーす。3話長くしよう長くしようと書いていったら予想以上に時間がかかってしまいました(笑)
これからは長くしつつなるべく短い時間でかけるようになりたいです!
これからも頑張っていきますのでよろしくですー!では、感想待ってまーす。
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