炎と森のカーニバル
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第1章~出会い Encounter~
第3話
前書き
《前回のあらすじ》
主人公である九条修也(Kujo Syuya)とその幼馴染みの野々内莉沙(Nonouchi Risa)。
莉沙の父親の友達がコスモパニックの関係者で、2人はコスモパニックへ行くことになった。
ざわざわざわざわざわざわざわざわざわ…………
「混んでる、ね……」
莉沙の口から漏れた言葉に、俺は「あぁ……」と呟くように言った。俺達は圧倒された。コスモパニックの中は人だらけ。一応、これでも1番空いているミラートンネルに並んでいるのだが……。そこには親子連れがほとんどだったけど、ちらほらカップルも見える。つまりこの場の中でいい年した異性の高校生が2人で来ていたら、もちろん…………
「うグ! ゲホッゲホッ!」
「い、いきなりどうしたのよ!?」
真っ赤な顔で咳き込む俺は周りから見たらどれだけ滑稽なものだろうか……。しかもそんな俺と一緒に来ている莉沙には「大丈夫?」などという優しい言葉はかけてもらえず、思いっきりドン引きされたような目で見られ……。周りの目が馬鹿にするような目ではなく通り越して、捨てられた子犬を見るような可哀想な目をしていた。く、屈辱……。
しばらくすると、ようやく俺たちの番が回ってきたようだ。女性のさほど美人な店員は、俺たちを見るなり「どうぞお2人でお楽しみください」とクスリと笑った。カァァ……と火照る俺と莉沙。またもや周囲の目が集まる。俺たちは周りから逃げるかのように、ササササーーと中へと進んだ。
「うわぁ……!」
ミラートンネルの中はすごかった。一面鏡張り。四方八方どこを見ても俺と目が合う。……何か気持ちわる……。進もうと足を動かそうとした時、ゴンという音と「あたっ!」と莉沙の声が聞こえる。振り返ると、莉沙が鏡におでこをぶつけたようだ。相変わらずドジは直らないなぁ……。ため息をついて「大丈夫か?」と声をかけると、なぜか後ろから声がした。
「あのねぇ……あんたそれ、鏡。三次元のあたしはこっちなんですけどーー」
げ…………。ど、ドジと一緒にいるとドジが移るんだよな! うん! ……にしても、
「分かりづらいな。これ。」
「なぁ?」と莉沙に訊くと、「ハァ……」と返事の代わりにため息で返された。こんなところ下手すれば一生出られないかも。こいつとこんな密閉空間の中で死ぬなんて一生ごめんだ。小さい子供なんて迷って泣くんじゃねえのか? 何てドSなアトラクションなんだ……。と心の中で愚痴を言いながらも、どうやって進もうかと悩んでいたら、カーディガンが後ろに引かれた。ん? と思って顔だけ後ろを見ると、莉沙が顔を俺の背中に埋めていた。「どうしたんだよ?」と尋ねてみると莉沙は更に握る手を強くした。
「……あの、さ。このままでいて、もいい……?」
「………………………………は?」
「べ、別にいいじゃない……! いいでしょ!?」
ん? ど、どどどどうしたんだこいつ!? あれ? 莉沙、だよな。あのいつでも男みたいに勇ましくてたくましい莉沙だよな。普段だったらキッパリお断りしているが、この状態だとさすがに駄目なんて言えない。きっと怖くでもなったんだろう。一応こいつ女子だし。「はいはい」と言って俺は莉沙に向き合って生まれたての小鹿みたいに小刻みに震える莉沙の頭を軽くポンポンと撫でてやる。すると少しホッとしたのか、「……うん」と頷いた。
そうして俺は後ろに莉沙を連れたままで、さっきの莉沙のように鏡にぶつけないように手を鏡につけながら進んでいった。『……あの、さ。このままでいて、もいい……?』なんて、あんな顔であんな声であんな仕草であんなこと言われたら調子狂うっつーの……。他の奴等にもそんなこと言ったりすんのかな。それとも……俺だけ、なのかな。
……そんな馬鹿なことを考えていた俺は迂闊だった。
______ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
「うわっ!?」
「きゃああ!」
床が突如揺れた。この感じ、俺はあまり経験がなかったけど分かる。地震だ。しかもかなり大きい。
『地震です。地震です。お客様は近くの係員の指示に従って速やかに避難してください』
冷静で淡々と告げるアナウンス。そうは言っても係員なんているはずもない。俺は莉沙の手を掴んで走った。真っ直ぐ進んで左に曲がって次は右に曲がって。ゴールなんて無いんじゃないか? ずっと走り続けなきゃいけないんじゃないか? そんな不安が駆け巡る。
「はぁ……っ はぁ……っ」
見つけた。緑色のマーク。『非常口』と書かれているこのマーク。俺はすぐさまその中へと飛び込むようにして入った。
後書き
はい、閲覧ありがとうございましたー。
これでようやく歌詞の『YOKOHAMAにある遊園地のコスモパニックの非常口』が終わりました!
もちろん、この後に修也くんがどこに行くか……お分かりですね?
というわけで、次回も見ていただけたら嬉しいです。
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