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万華鏡

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第六十八話 秋深しその十三

「ブレザー、それでコートだよ」
「ブラ抜いて六枚?」
「また重装備ね」
「下だってさ」
 上はそれだけ着込むが服は上にだけ着るものではない、下も着るものだ。その下はどうした着方かというと。
「ショーツからストッキング、体育の半ズボンにタイツだよ」
「そっちは四枚ね」
「ショーツ抜いて」
「そこに厚い靴下だよ」
 これも忘れていなかった。
「靴もあったかいのでさ」
「何か凄いわね」
「完全装備ね」
「そこに背中とかにカイロだろ」
 これも忘れていなかった。
「もう素足なんて絶対に無理だよ」
「確かにね、冬の神戸はね」
「素足は無理よね」
「それはね」
「アニメとかだと制服の丈短いだろ」
 スカートの丈がだ、アニメの制服の場合スカートはそれこそ中が見えるぎりぎりまで短いのが普通である。
「実際あたし達も結構短くはくけれどさ」
「それでもよね」
「冬の神戸で素足はね」
「もう寒くてね」
「出来ないわよね」
「そんなの出来るかよ」 
 美優は冬の神戸で素足は即座に否定した、それも全否定だった。
「寒くてさ」
「脚って冷えるからね」
「足元も太腿も」
「人間ふくらはぎから冷えるっていうし」
「脚も大事なのよね」
「だからスパッツにタイツだよ」
 この二枚重ねで脚を完全に覆うというのだ。
「さもないとあたしは無理だよ」
「ストッキング二枚重ねにしたら?」
 琴乃はこう提案した。
「それでかなり違うけれど」
「そんなの常識だよ」
 美優は琴乃にこう返した。
「冬はさ」
「あっ、もう既になの」
「そうだよ、それでも寒くてさ」
 だからだというのだ。
「タイツもはくんだよ」
「つまり実質五枚ね」
「そうなんだよ、動きにくいよ」
 そこまで身に着けていればというのだ、流石に着重ねも過ぎると動きに支障が出てしまうのは美優も同じだ。
「あと手袋にマフラー、耳まで隠れるニットの帽子も」
「ううん、ロシアね」
「ロシア人みたいね」
「ウォッカは飲まないよ、学校にいる間は」
 それは流石になかった、ロシア人とはそこが違った。
「というかウォッカはあまり飲まないよ」
「まあそれはね」
「幾ら何でもね」
「学校でお酒は駄目だし」
「特にウォッカは」
 このことは四人も当然だとした、幾ら町の条例で十五歳以上の飲酒が許可されている八条町でも学校の授業中に酔っていては駄目だ、ましてや酒の中でもとりわけ強いウォッカになると余計に駄目だ。 
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