戦国異伝
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第百六十話 四人の男達その八
「動きがよいです」
「それも随分とな」
「それなりの将がおります」
今軍は前、右、左から攻められている。しかもその後ろから敵の主力である大軍がいて彼等も攻めてきている。
数だけではなかった、島もそれを見て言うのだ。
「どう見ても」
「そうじゃな、ここはな」
「これまでは数だけでしたが」
「兵の個々は強かったがな」
武具もよくだ。
「しかしな」
「将はいない様でした」
優れたそれはというのだ。
「ですが今は」
「おるな」
「だからですな」
「動きが前に比べてよい」
森も櫓の上から彼等全体を見て言う。
「これではな」
「かなり厄介ですな」
「守りに徹していてよかったわ」
そうだというのだ。
「今はな」
「ですな、それでは」
「うむ、殿が来られるまでじゃ」
本陣が来るまではというのだ。
「ここで守ろうぞ」
「それがよいかと」
「では左近、御主もな」
「はい、お任せ下さい」
島は森の言葉に強い声で応えた。
「それがしもまた下に行き」
「そしてじゃな」
「戦いまする」
そうするというのだ。
「それがし、自ら戦わねば気が済みませぬので」
「軍師であってもじゃな」
「戦う軍師です」
それが島だというのだ。
「自ら槍を取って」
「戦の中でか」
「左様です、そして」
「その槍を交える中でじゃな」
「敵を倒しに倒し」
そしてだというのだ。
「倒れるのが望みです」
「そこまで思っておるのじゃな」
「はい」
そうだというのだ。
「それが故に」
「だから戦うか」
「そうさせてもらいます」
「うむ、ではな」
森も島の言葉に頷いた、そしてだった。
彼は大谷を櫓に呼びそのうえで彼に告げた。
「わしと左近は前線に出る」
「ではその間それがしはですな」
「この櫓にいてくれ」
そうしてくれというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「櫓から戦の場全体を見てじゃ」
「そうしてですな」
「わし等に教えてくれ」
戦の流れをだというのだ。
「危急ならば御主が直接命を出せ」
「そうして宜しいのですか」
「御主ならな」
それが出来るというのだ。
「だからな」
「それは買い被りでは」
「いや、御主なら出来る」
大谷ならというのだ。
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