万華鏡
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第六十五話 ハロウィンに向けてその十
それでだ、琴乃はこう言ったのだった。
「この学校面白いわね」
「ええ、まさかこれだけ色々あるなんてね」
しみじみとした口調で述べたのは景子だった。
「凄い学校よね」
「そうよね」
「生徒数が多いことも学科が多いことも知ってたわ」
承知のうえで受けている、これは当然のことだ。
しかしだ、それだけではなくというのだ。
「実際入ってみるとね」
「色々あるわよね」
「ええ、阪神は外からのことだけれど」
「イベントの多い学校よね」
「何かとね」
「そのせいでね」
景子も前を見ながらだ、しみじみとした口調で言った。
「楽しいわ」
「こんな学校他にないわよね」
「どの学校もそれぞれの個性があるけれど」
本当に学校はそれぞれだ、その学校によって個性が変わっている。そして八条学園はその中でも特になのだ。
「この学校は特別よね」
「広いし学科も施設も一杯あってね」
「部活もね」
「何かとイベントも多くて」
「盛り沢山よね」
「ううん、凄い学校に入ったわ」
琴乃はこれまで頭の後ろにやっていた手を前にやって胸のところで組んだ、そのうえでまたしみじみとして言った。
「つくづくね」
「けれど、だよな」
「ええ、楽しいわ」
今度は美優に答えた。
「飽きないわ」
「だよな、最高に面白いよ」
「三年間ね」
今彼女達は一年生だ、だが高校生活は三年ある。その三年の生活をというのだ。
「濃い学園生活になりそうね」
「しかも楽しいな」
「じゃあこの三年間ね」
どうするかもだ、琴乃は前を見て言った。
「楽しむわ」
「ハロウィンもね」
「それもよね」
「勿論よ、楽しむわ」
絶対にだとだ、四人に確かな声で答えた。
「そうするわ」
「それじゃあハロウィン楽しもうね」
「五人でね」
こう話したのだった、帰り道で。そして。
美優がその中でだ、センターの位置からメンバーにこう言った。
「それでさ」
「それで?」
「それでっていうと?」
「ああ、吉野家行くかい?」
牛丼を食べに行こうかというのだ。吉野家といえば牛丼である。
「そこにさ」
「そうね、お金もあるしね」
「今から行ってね」
「そうしてね」
そこで腹に入れようというのだ。
「晩御飯前だけれど」
「何か晩御飯前だけれど」
どうかとだ、ここで里香は右手を自分の腹の上に置いてこんなことを言った。
「幾らでも入るのよね」
「そうよね、高校に入ってからね」
景子も里香のその言葉に応える。
「食べても食べてもね」
「お腹が減ってね」
「何か幾ら食べてもね」
「足りないわよね」
「何でかしらね」
景子もこのことに首を傾げさせる、だが。
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