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万華鏡

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第六十五話 ハロウィンに向けてその九

「別にね」
「そうなのね」
「それでもなのね」
「感性が微妙に合わないとか」
 彩夏だけでなく里香もこう言ってきた。
「そういうのじゃないかしら」
「ううん、そういう曲なのね」
「だから違和感を感じるんじゃないかしら」
「そうなんだ」
「とにかくね」
「とにかく?」
「そうした曲はどうしてもあるものだから」
 里香は事情を彼女なりに理解してだ、それで琴乃にこうアドバイスしたのだった。
「その違和感は置いておいてね」
「やっていけばいいのね」
「そう、そうした曲があるならあるでね」
 受け入れて、そしてというのだ。
「やっていこう」
「それがいいのね」
「そう思うわ、私はね」
「そういうものなのね、いや私これまでね」
 バンドをしていてだ、どうだったかとも言う琴乃だった。
「色々な曲を演奏して歌っていても」
「こうした感触を感じたことはなかったのね」
「ええ、一度もね」
 そうだったというのだ、それでそうだったからこそだというのだ。
「今かなり妙に感じるわ」
「そうなのね」
「けれどその違和感は置いてよね」
 里香の言葉をそのまま受けて言うのだった。
「それでよね」
「そう、忘れてね」
 あえてだ、気にせずにだというのだ。
「そうしていこう」
「そうね、そういうのも大事よね」
 琴乃もここは割り切ることにした、そうしてだった。
 その曲を演奏していく、確かに違和感は消えないが意識して気にしないことにした。他の曲は大丈夫だった。
 そしてだ、そうしてだった。
 その日の部活を終えてだ、帰り道にでまた五人で帰る途中にこう四人に言ったのだった。
「さて、阪神日本一から間髪入れずよね」
「ハロウィンね」
「そのライブね」
「前から準備はしてたけれど」
 だから正確に言うと間髪入れずではない、並行して進めていた。しかし気分的にはそうなっているのだ。
 それでだ、琴乃は今四人にこうしたことを言うのだった。
「すぐにって感じよね」
「ううん、まあ気が抜けないって感じでね」
 彩夏は琴乃の言葉にこう返した。
「いいんじゃないかしら」
「確かにね、連続だとね」
 琴乃も目線をやや上にして両手を頭の後ろにした姿勢で前に歩きながら彩夏の言葉に応えた。
「気が抜けないわね」
「いい意味でね」
「そうね、それじゃあ」
「このままよね」
「ライブまで一気にいこう」
 彩夏は琴乃にこうも言った。
「楽しくね」
「いや、本当に二学期はね」
 どうかというのだった、今彼女達が過ごしている二学期自体もと。
「気が抜けないわね」
「そうね、何かとね」
「一瞬ごとにね」
 そうしてだというのだ。
「何かがある感じでね」
「あっという間に進んでいくわね」
「運動会に文化祭に」
「日本シリーズにね」
「それと今度のハロウィン」
 まさにだ、立て続けでイベントが行われてその中にいるからだ。時間が過ぎるのも瞬く間だというのである。 
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