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万華鏡

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第六十五話 ハロウィンに向けてその五

「私シャワーで充分だったけれどね」
「シャワーで二日酔い抜けるの?」
「それ大丈夫なの?」
「ええ、いけるわ」
 シャワーだけで充分と言った娘はこう皆に答える。
「私はね」
「強いわね、それは」
「シャワーだけでって」
「普通熱いお風呂にも入らないとね」
「無理よね」
「それはね」
「その辺りは人それぞれでしょ」
 これがシャワーだけの娘の言い分だ。
「冷たいシャワーを頭からね」
「いきなり浴びるの」
「そうするの」
「これでかなり違うわよ」
 酔いが相当に醒めるというのだ。
「もうね」
「まあ冷たいお水浴びたらね」
「実際にお酒かなり抜けるからね」
「それで最初になの」
「そうして」
「そう、ジェームス=ボンドみたいにね」
 007は冷水シャワーを浴びることが好きだ、美女と美酒、美食の他にそうしたものも楽しんでいるのだ。私生活のスパイはかなりの快楽主義者なのだ。
「そうして後でね」
「シャワー浴びるのね、熱いのを」
「そうしたらなの」
「すっきりとするのよ」
 あくまで彼女の場合はというのだ。
「私元々お酒に強いし」
「それでなのね」
「あんたはそれで充分なのね」
「そうなのね」
「そうなの、元々お酒に強いから」
 そのせいでだというのだ。102
「いけるのよ」
「そうなのね、羨ましいわね」
「それでお酒が抜けるってね」
「シャワーだけで」
「まあね。だから今もね」
 すっきりとした顔でいるというのだ。
「相当飲んでもね」
「そういうことね」
「そう、まあとにかく昨日はね」
 彼女にしてもだというのだ、阪神日本一の夜は。
「飲んだから、私も」
「それ皆だしね」
「本当に昨日は凄かったわ」
「フィーバーでね」
 彼女達もそうなったというのだ、そしてだった。
 授業に入ってもだ、先生がこう言うのだった。
「阪神が日本一になりました」
「はい、よかったですね」
「遂にですよね」
「先生は中日ファンです」
 だが、だ。先生はこう生徒達に言う、しかしその顔は暗くはない。
「それでもです」
「何か先生顔が明るいですよ」
「普通ですよ」
「阪神は嫌いではありません」
 例えだ、中日ファンであってもだというのだ。
「阪神ファンも中日は嫌いではありませんね」
「はい、特に」
「別に何とも思ってません」
「とりあえず中日は嫌いじゃないです」
「負けても」
 実際に生徒達も答える、阪神ファンは巨人以外には極めて寛容である。例えどれだけ惨敗してもそれでもである。 
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