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万華鏡

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第六十四話 甲子園での胴上げその六

「上機嫌でね」
「それで焼き鳥もビールも」
「それじゃあいいわよね」
「うん、今からね」
「飲んでね」
 そしてだった。
「食べよう、試合観ながら」
「じゃあ早速焼酎を空けて」
 そしてだとだ、里香が言って来る。
「それでね」
「それで、よね」
「そう、試合がはじまったらね」
 その時にだとだ、こう話してだった。
 五人はまずは焼酎をそれぞれのコップに入れて焼き鳥も用意した、そのうえでプレーボールを待った。そのプレーボールになると。
 五人共飲みだして試合を観た、すると。
 ロッテは一回から攻めてきた、連打でノーアウト二塁三塁となる。阪神はいきなりピンチを迎えることになった。
 その状況にだ、彩夏は顔を曇らせて言った。
「ううん、これはね」
「いきなりよね」
「絶対絶命ね」
「ノーアウトだからね」
 そのアウトカウントからだ、彩夏は言うのだった。
「ちょっとでもね」
「下手したらね」
「そこでだよな」
「一点、いや二点ね」
 それだけの点がというのだ、二塁にいれば充分得点が入る。
「入るわよね」
「うん、ここはロッテもね」
「畳みかけてくるわよ」
「しかもね」
 悪いことにだ、ロッテの打順はというと。
「三番四番五番って」
「文字通りクリーンアップよね」
「マリンガン打線の」
「確かマリンガン打線のクリーンアップって」
 彼等はだ、どうかというと。
「打点凄いのよね」
「三人合わせて三百点よ」
 里香は彩夏にこう答えた。
「ホームランも三人合わせて百本よ」
「それは凄いわね」
「打率も三人共三割だから」
 三人でそれだけのものだというのだ。
「打つわよ」
「それって滅茶苦茶強いわよね」
「ええ、連打もあるから」
 それもこの打線のクリーンアップの強みだというのだ。
「マリンガン打線って元々つながりの打線だけれど」
「確かマシンガン打線からの名前よね」
「そう、かつての横浜のね」 
 横浜ベイスターズ優勝の時に打線である、この時代の横浜打線はそのつながり、一番から八番まで隙なく打てる打線とストッパーである大魔神佐々木主浩の力により三十八年ぶりの優勝を勝ち取ったのである。
 その打線と同じくだ、マリンガン打線もだというのだ。
「連打がね」
「凄いのね」
「特にクリーンアップがね」
 つながるというのだ。
「だからここはね」
「まずいのね」
「ええ、ここで打たれたら」
 どうなるかというのだ。
「ロッテに流れがいくわ」
「そのまま打たれまくって」
「試合がロッテに流れるのね」
「ええ、だからね」
 それでだとだ、里香はテレビの画面を観た。画面は丁度三塁側を映していた。言うまでもなく今はロッテ側である。
 マリーンズサポーターだった、彼等はというと。
「あの人達もなのよ」
「うわ、マリンスタジアムみたい」
「もう今ここぞっていう状況ね」
「点取って欲しいっていう様な」
「そんな状況ね」
「だからね」
 それでだというのだ、里香も。 
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