東方変形葉
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幻想入り、そして修行
東方変形葉3話「修行開始!」
前書き
朝になった。鳥が鳴き始めるころに目が覚めた。だが起き上がろうとしても、橙が俺の体に抱きついていたため、起き上がれなかった。おそらく寝ている間にねぼけて抱きついたのだろう。橙を起こすわけにはいけないので、あきらめて天井をじーっと見る。
「ふにゃあ~・・・」
「あれ?起きたの?」
「にゃふう・・・・」
ただの寝言のようだ。かわいい寝顔の橙の頭を撫でる。満足そうな顔をしてくれた。なんだか元気が湧いてくる。
あ、すこし腕の力がゆるんだ。今なら脱出できるかも。とおもったらまた腕に力がはいった。結局脱出はできなかったとさ。
朝食を食べ終え、さっそく修行がはじまった。指導係の紫に加え、手伝い役の藍、見物人の橙がいる。
「まずはあなたがどのぐらいその能力を使えるか確かめるわ。藍。」
「はい。」
紫に言われて藍が持ってきたのは、鉄球だった。
「これをあなたの力で銅に変えてみせなさい。」
紫が言ったことは、現在の科学でも無理難題のことだった。
「ええ!?そんな天と地をひっくり返すようなことができるのですか!?」
「まあみてなさい。」
あの鉄球を銅に・・・手を振り上げ、少し力を入れる。すると・・・
「え?」
「うそ!?」
「・・・なるほど」
鉄球は銅になっていた。しかし、それは半分だけ。半分鉄、半分銅の球が目の前にあった。
「なんてこと・・・まさか原子を“変化”させるなんて・・」
藍はかなり混乱していた。まあそうだろう。この世の絶対的ともいえる法則をひっくり返したのだから。もちろん見せかけなどではない。電子や陽子の量を変えることでこうなる。まあ、銅になれと念じるだけでもなるんだけど。
「変化させようと思ったらできるみたいだけれど、その制御がまだまだのようね。なら話は早いわ。一生懸命練習すれば大体2か月くらいで使いこなせるようになるわね。」
2か月・・・意外と早いな。10年はかかると思ってた。
「というわけで藍、あとはよろしく。あの方法で構わないわよ、私は寝るけれど。」
・・・寝たいお年頃なのだろうか、さっさとスキマに入って寝てしまった。
「じゃあ裕海、この紙の箱を木の箱に変えてみて。」
このシチュは慣れているのかな。まあいいか。手を振り上げて力をいれる。
「・・・すごい。3分の2とはいえ、紙を木に変えるなんて・・・」
修行はこの後2時間続いた。
変化は“へんか”と読み、“へんげ”とも読める。しかし、対象物とは全く関係のないものや、生物自体は変えられない。例えば、野菜から土に変えようと思っても関係がないし、あの猫を犬に変えようと思っても生物だからできない。この能力は固体に限らず、気体や液体、意識や心境など形のない、決まっていないものも変えられる。
だが、変化とは偶然が積み重なっておこるもの、つまり自然現象だ。それに何がどういう風に変化するなんて誰にもわからない。この能力の恐ろしさは、数えきれないほど枝分かれした道を、1本の道にしてしまうことにある。
って紫が言ってた。
つまり、良く言えば「最善を一瞬で導く」ということだ。
2時間能力を使いまくった裕海はへとへとになっていた。
と、そこへ紫がやってきた。
「調子はどうかしら?」
「う~ん、なかなか制御は難しいのだけど、なにかつかめたような気がするよ。」
「そう、それはよかったわね。」
なんとなく、紫と会話をすると気分がよくなる感じがする。そうおもっていると、紫がある質問をした。
「・・・ところで、どうして私が人間界で住んではいけないと言った時、すんなりと受け入れたのかしら?家族とか、友人のこととかは考えなかったの?
「・・・この幻想郷に連れてこられる前から、俺の能力はもうどんなのなのか把握できていたんだ。つまり、この能力の恐ろしさを理解していたんだ。だから、この能力を封印して、周りに影響が出ないように友達は作らなかったんだ。怪しまれないように交流はしていたけど。ちなみに俺の親は・・・・3年ほど前に亡くなったよ。」
紫は目をまるくした。亡くなっていたとは知らなかったようだ。
「(もう少し調べておけば、彼自らそんなことを言わせなくて済んだのに、私ってば、まだまだね・・・)」
紫は少し悲しげな顔をした。
「三年前・・・からまさか自分で生活をしていたというの?」
「ああ。支援施設で生活援護を受けてもよかったんだけど、さっき言ったとおり、影響を出さないために自分の家で、両親の遺産で暮らしていたんだ。あとこっそり仕事もしてたからね。」
「その仕事というのは、人形をつくること?」
「ああ。よく気が付いたね。」
さすが紫。
「あなたに作ってもらったって喜びながら橙がみせてくれたけれど、あの人形、相当経験をつまないとあんなにかわいくできないわ。それも10分で作ったんでしょう?」
「まあ、千体以上作ってきたから、そのぐらいはね。」
「・・・そういえば、私たちと暮らすこととなった時、私たちに影響がでるとはかんがえなかったの?」
なるほど、確かにその疑問は当たり前だ。うすうす考えてはいたが、紫が境界を操れるということを聞いた時、俺の考えは確実に変わったのだ。。
「考えたけど、たぶんその必要はないだろうと思ったんだ。」
「どうして?」
「俺を連れてくる前から俺の能力はわかっていたんでしょ?だったら話は早いよ。俺の能力がわかっていたということは、その能力がとても恐ろしいこともわかっているはずだ。それでつれてくるにあたって何もしないわけがないじゃないか。術やらなんやらで俺の能力を暴走させなくしているとおもったんだよ。」
「・・・なかなかの推測じゃない、感心したわ。あなたの言うとおり、ここには変化と不変の境界という結界を張っているわ。それもあなたにしか効かない。それで安心して暮らしていいのよと伝えたかったの。」
「ありがとう、紫。」
修行は一日二時間でいいらしく、あとは家事を手伝うなり、遊んだりなにをしてもいいと言ってくれた。紫にあることを頼むと、「まかせて!」とはりきって頼んだことをしてくれた。そのあることとは・・・
「よっと・・・これでいいかしら?」
「ああ。ありがとう。」
紫に頼んで、俺の家にあったものを持ってきてもらった。スキマって便利だよな・・・
オセロは橙も知っているらしいから遊び道具に使えるな。今まで作ってきた人形も何体かある。部屋に飾ろう。あっそうだ!藍に料理を教えてもらおう!そろそろ夕食の準備をするかもだし。
「藍、ちょっといいかな?」
「なんだ?」
「料理をおしえてほしいんだ。」
すると、藍は目を輝かした。
「いいぞ。よろこんで教えよう!」
「よっし!ありがとう、藍。」
あっさりとOKしてくれた。
ちなみに今日の夕飯はハンバーグだそうだ。俺も何度か作ったことがあるが、どうしても食堂みたいなジューシーなやつができないんだ。そう藍に言ったら、「それはね・・・」と優しく丁寧に教えてくれた。
おかげでとてもジューシーなハンバーグを作ることができた。
「紫様―、橙―、夕ご飯ができましたよー」
「わーい!ハンバーグだー!」
「おいしそうね。」
ハンバーグはとても好評だった。
自室にもどり、藍から教えてもらったことをノートに書く。ちょうど書き終わった時、橙が遊びに来た。
「あっそぼー!」
「いらっしゃい、橙。」
「わあーっ、かわいいお人形がいっぱい置いてある―!」
しまう場所がないから飾ったのはいいものの、やっぱりちょっと恥ずかしいな。あ、そうだ。
「オセロあるんだけど、する?」
「うん!わたしオセロ得意なんだー!あ、罰ゲームありで!」
「別にいいけど、どんな罰ゲームにするの?」
「う~ん、勝った方が一回だけ命令する!いつも遊ぶときはこうしよう!」
橙はいい子だから、痛い罰はしないだろう。たぶん。
・・・まさか25戦して全敗するとは思わなかった。囲碁とか将棋は得意なんだけどなー。オセロだけはなぜか出来ない。
「で、どんな命令を出すの?」
「うーんと、じゃあ・・・・」
何だろう、もしかしてジュース買ってきてとか?お菓子ちょうだいとか?
「一緒にお風呂入ろう!」
なるほどー、そうかそうかってえええええええええええええええ!?
あまりにも予想外すぎる内容だったので心の中で叫んでしまった。無垢な少女だからできる命令だな・・・
命令なので断ることはできない。仕方ないか。
橙の髪をタオルで優しくふく。ここにはドライヤーはないので、しっかりとふかなければならない。
橙の目はかなりうとうとしていた。眠いのかな。
「橙、眠いの?」
「うん・・・ふにゃぁぁぁぁ」
可愛らしくあくびをした。
「立てる?」
「むり~。だっこして~」
仕方ない。よっこいしょっと。
「うぅ~ん・・・すぅ~」
寝息が聞こえてきた。昨日からの約束(というか命令)なので、自室に戻り、布団に橙を寝かす。布団を2つ用意したかったのだが、「あったかかったからずっとくっついて寝よー」と言ってきたので、あきらめた。
「仲いいわね。」
「あ、紫。とてもなついてくれるから、少しうれしいかな。」
(・・・いままで自ら境界線をはり、孤独になっていたから、かしら。この子も苦労してきたのね。)
(けれどここは幻想郷、すべてを受け入れる地。この地でこの子が少しでもその苦労の分が報われるといいわね。)
「ん?どうしたの紫。」
「いいえ、なんでもないわ。じゃ、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
「あ、そうだ、裕海。」
「ん?」
「橙に変なことをしないようにね。」
「す、するわけないだろ。」
「ふふふ、そんなに顔を赤くしちゃって、おもしろい子ね。じゃあおやすみ。」
「ぬぬぬ・・・」
・・・まあいいや。とりあえず明日も頑張ろう。
「紫様、報告があります。」
「何かしら?」
なんだか月がおかしいのです。
後書き
3話書き終わりました!藍が月の異常に気が付いたようです。これは何を意味しているのでしょうか。では。
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