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万華鏡

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第六十三話 第三試合その九

「このままマリンスタジアムで三連勝されたらな」
「終わりだからね」
 琴乃もその最悪の状況を想像して美優に答えた。
「ロッテの圧勝よ」
「だよな、まずいな」
「どうしたものかしら」
 六回表の阪神の攻撃を観ながらの言葉だ。
「まだ二塁も出ていないなんて」
「せめてねえ」
 彩夏も曇った顔で言う。
「得点圏まで進められればね」
「違うわよね」
「幾ら何でもこれはね」
 二塁すら踏ませてもらっていないのでは、というのだ。
「まずいわよ」
「かなりよね」
「ええ、かなりね」
 実際にだというのだ。
「このままだと本当に」
「そろそろ終盤だし」
 七回以降に入る、無論九回までしかない。
「二点よ」
「二点よね」
「そう、二点入らないと」
 まずいというのだ、最低でも。
 そしてだった、五人共だった。
 不安に感じだしていた、今の状況が野球を観るうえでは一番辛い。尚ここで敵に追加店が終われば辛いことが絶望に変わる。
 その状況にだ、五人は息苦しさを感じていた。だが阪神投手陣はここで踏ん張り六回裏は無事に抑えた。
 七回もだ、打線は打たないがピッチャーは踏ん張る、そのうえで八回を迎えた。
 その八回になってだ、里香は解説を聞いて言った。
「今風が変わったって言ったわね」
「ええ、そうね」
「言ったわよね」 
 四人もその言葉に応える。
「これまでライトからレフトだったっていうけれど」
「どうなったのかしら」
「さて、ホームからセンターに風が変わりましたが」
 解説者が今言った言葉だ。
「それがどうなるか」
「これってよくね?」
 解説者の言葉を聞いてだ、美優は四人に問うた。
「今の阪神にとって」
「ええ、若し長打が出れば」
 どうなるかをだ、里香が答えた。
「風に乗ってね」
「そのままスタンドに、だよな」
「だからマリンスタジアムは怖いのよ」
「風のせいでか」
「もう一つ怖いっていうかマリンズの味方があるけれど」
「ああ、この人達ね」
 彩夏は画面を観た、そこに白いユニフォームを着て熱い応援をする一団がいた。まさにその彼等こそがなのだ。
「マリンズサポーターね」
「熱狂さでは阪神ファンに負けないから」
 里香は彩夏に実際にこう答えた。
「ロッテの心強い味方よ」
「凄い応援よね、実際に」
 琴乃も彼等を観つつ言う。
「この人達も」
「阪神ファンって凄い多いけれどさ」
 どうかとだ、また言う美優だった。
「あの人達も負けてないな」
「あの人達がいるから」 
 どうかとだ、また言う里香だった。
「ロッテは勝ててるってところもあるから」
「もう一つの風かよ」
 美優は腕を組んで難しい顔になっている。 
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