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ファイアーエムブレム ~神々の系譜~

作者:定泰麒
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第二章 終わらせし者と月の女神
  第五話

 神とは、愚かである。これは、いろんな神話を見ていてもわかる。しかし、それを物語として見ていった時、それは面白いへと変わっていく。きっとそれが民の心に潤いを与えたのだろう。神も自分達のように不完全で近しい存在であるのだと……





 ロキとエルトシャンがマーファ城に旅立つ少し前の事。ロキは、あることに頭を抱えていた。

 「あー、どうしたもんか!」

 10歳になって既に一月。しかし、なにもマーファ城に行く進展なし。どうしたもんか、急に俺が父上に行かせてくれと言ったところで突っぱねられるのはほぼ確実。なにか策を巡らせなくては……

 「はー」

 考えても考えても結論は出ない。いっそのこと城を抜け出すか、でもそしたらそしたで影響でるしなー……

 「なにため息ついてるのよ!」

 「ふぇぃ!」

 なぜ貴様ここにいる。今日は、杖の稽古ではなかったのか!? あんまり杖の扱いが芳しくないと聞いていたが。気づけなかった俺も俺だが、なんと愚かな姉上。

 「ねぇ、ロキ! あなた今思ったこと口に出てるわよ!」

 「えっ?」

 「姉上に貴様呼ばわり、それに愚かともいったわよね……」

 これは正直間違いを犯した。姉上の顔がみるみる真っ赤になっていく。最近は身を潜めていたやんちゃなところが今にも爆発してしまいそうだ。今すぐに謝らねば。

 「すいません、すいません、なんでもします、許してください。大好きな姉上」

 「へぇ、なんでもするっていったわよね……」

 俺はすぐに気づいたのだ。自分が言った愚かな過ちに。

 「いいましたけれども、それは言葉のあやというもので……」

 「言ったわよね……」

 「……言いました」

 「よし、じゃああれね」

 俺は、嫌な予感しかしていなかった。事実それは当たっていたのだが。





 「父上、私に用とは?」

 ところ変わって、会議室。実はロキにとっての契機が訪れようとしていた。

 「うむ、実はウェルダンへの友好の証として、あっちに一週間ほど滞在してきて欲しいのだ」

 「ヴェルダンですか? しかし、なぜ今?」

 「今だからこそだ。今の世は、多少は平和で、戦争はなりを潜めておる。だが、いつ起きるともわからん。だからいざという時のために備えての今回のことだ」

 「なるほど、分かりました」

 「うむ、メウスからもなにかあるかの」

 「いえ、とくには……」

 「よしでは、これで「待ってください! 父上!」

 会議室の扉が勢いよく開かれると同時にロキがその姿を見せた。

 「待ってください、父上。そのヴェルダンに行く件、私にもぜひ行かせていただきたい」

 「う、うむ。……と、ところでだなその格好はなんだロキ」

 「姉上と喧嘩して、今日一日はこの格好で過ごさぬと許さないと言われたので……」

 そうロキが言ったところで、王とエルトシャンは笑いをこらえきれなかったのか、箍が外れたように笑いだした。メウスはかろうじて笑わぬようしているが、それもきっと我慢の限界であろう。ロキは、女装をさせられていた。
 ロキの顔も次第に赤く染まって行く。ある程度、その笑いも収まると王はロキに訪ねた。

 「そうか、そうか。しかし、なんでまたヴェルダンに?」

 「それは、私が考えている策があるためです」

 「ほぅ、策とは。面白い言うてみよ」

 「はい。私と兄上がヴェルダンに行きます。そこで私たちが兄弟喧嘩をするのです。内容は私がシャガール王子の悪口を言い、兄上がそれを諌めるというもの。そしてそれは、一晩であっという間に噂になり私たちの評判を下げる。ヴェルダンは、非常に野蛮な思考の偏りかたをしている者達が多い。その噂を元に私たちを侮辱すれば、同盟関係は即破棄。何らかの合図をもってそのことをアグストリアに伝える。もし、これが失敗しても損をするものはいないと考えます」

 ロキの策は正に毒のようなものであった。まさかの父も兄も急に弟がこのような謀略を論じてくるとは夢にも思わなかったであろう。その横で、メウスはゆっくりと首を縦に動かしていた。

 「誠、面白い謀略ですの。多少荒削りではあるが、才能を感じられます。ここは王も一考をされてはいかがでしょうか?」

 「そうだな、そうしよう。ロキ、ひとまずその格好を戻したら、私のところへ来なさい。話がある」

 「はい」

 ロキの返事をもって、この場は解散することになった。



 「いかがして、あのような策を思いついた?」

 「それが、私にもわかりません」

 「わからんとな? どういうことだ?」

 「あの場に来る直前まで、なにも考えていなかったのですが、あの場に立った瞬間にあの策が閃いたのです。それこそ、天啓のように」

 「閃いた策が、謀略とはなんとその天啓を下さった神は恐ろしいことだ。しかし、悪くはない策であるとも思う。しかし、その策が嵌るかといったら可能性は低いであろう」

 「ええ、それは承知しています。相手はバトゥ王ですからね。気を引き締めなければなりません」

 「そうか、それがわかっているのならいい。よし、策を行って来い。失敗しても誰もなんも言わんし、成功したら褒めるまでのことよ。領地が広まるのはいい事であるしな」

 「はい、ありがとうございます」

 こうして、ロキのヴェルダン行きが決まった。ノディオン王は直ぐに、アグスティ王国への使いをだしイムカ王への策の献上を行った。直ぐに返答が届き、帰ってきた答えは肯。一言、息子たちにあまり負担をかけさせるでないぞ。と書かれていた。






 それから、ヴェルダン行きが決定し策を遂行したロキは、ようやく神の啓示をこなすときが来たのである。マーファ城の北の泉の岬、それが目的地なのである。

 「大変美しいところですね。これは、評判になるのも頷ける」

 「ありがとうございます。ちなみにロキ殿。この湖の近くに泉があるのはご存知か?」

 「泉? この湖の近くにそんなものが?」

 「ええ、その泉がこの地に伝わる御伽噺の舞台なのです。もしよろしければいきませんか?」

 「是非とも見てみたいですね。よろしくお願いしますジャムカ殿」

 ジャムカは、お供の部下たちに声をかけロキを伴い泉へと向かった。回りは木々に囲まれ、鳥の鳴き声や水が石を打つ音が聞こえた。そんななか幾時もかからずに泉へと着いた。

 「これは、またここも美しい。ジャムカさん、ここにある御伽噺とは一体どういうものなんですか?」

 「なんでも女神がいるんだそうです」

 「女神?」

 「そうです、ヴェルダンが建国されるよりもはるか昔にこの地にも英雄がいたんだそうです。その人が、ある日ここで斧の素振りをしていたらしく、手が滑りこの泉にその斧を落としたと、そしたら女神が泉から出てきて、彼の落とした斧に変わり勇者の斧を手渡したらしいのです。そして、その話を聞いた強者達が斧や剣、槍といったものを落とすもそれ以後出てきていないとか。それで、御伽噺と伝わるぐらいになったのです」

 「なるほど、面白い話ですね。では、私も試させてもらいましょう」

 「ふふふ、では賭けますか?」

 「いいですねー。まぁ結果は見えていますが」

 「では、もし何もおこらなかったら1000Gもらいましょう」

 「面白い。では、何かおこったら私と友人になりましょう」

 「それは、何もおこらなくてもこっちからお願いしたい。あなたの謀略を私にも伝授していただきたいので」

 「おっと、それは……さすがですね。バレてましたか」

 ジャムカは、少し頷きづつもバツが悪そうに微笑む。ロキはそれをみて頷くと腰にかけていた鉄の剣を泉へと投げ入れた。護衛の者たちはロキ達よりも少し離れた場所におり、その場にいたのはロキとジャムカだけであった。

 「どうやら、なにもおこらなそうですね」

 「ええ、そのよう……いや、なにか違和感があります」

 「えっ!」

 ジャムカが泉を覗くと鉄の剣を投げ入れた場所からブクブクと泡が上がっている、先ほどまで透き通っていた泉が徐々に色が変わってきているように感じた。

 「そうですね、違和感が!」

 「どうやら賭けは私の勝ちのようです」

 ロキがそう言うと、ジャムカは目をロキが見ている方へ目を向けた。

 「嘘だ」

 ジャムカが見たものは、まごう事なき女性。さらに女神と評されてもおかしくないほどに美しい人であった。しかも、その人は泉の上を歩いているようにも見える。

 「あなたが、落としたのはこの剣ですか?」

 そしてロキに差し出される一本の剣。それは、先ほどロキが落としたものとは似ても似つかないほどの美しさと鋭さを兼ね備えた剣であった。

 「いいえ。私が落としたのはその剣ではございません」

 「そうですか。あなたは正直者ですね、ではこの剣をロキ様に差し上げます」

 「ありがとうございます」

 「それと、我が主から言伝を預かっております」

 「言伝? それになぜ私の名を?」

 「それはあなたは既にわかっているはずです。それでは、『次はブラギの塔へ上れ』とそう仰っていらっしゃいました。それでは、失礼します。また、お会いしましょう」

 「ええ」

 そう言うと、ロキとジャムカの目の前から女神は泉へと落ちるかのように消えていった。

 「ロキ殿、これは一体」

 「賭けは私の勝ちのようです。これから友達としてどうぞよろしく」

 「ええ……それは、もちろんですが。さきほどのことは如何に?」

 「できれば内密に。これは私とあなただけの秘密に致しましょう」

 「いいのですか。これは、あなたが神に選ばれたと言っても過言ではないことですよ」

 「いいんです。私たち友人同士の秘密で」

 そう言うと、ロキは女神からもらった剣を腰に差し乗ってきた馬の下へと向かった。ジャムカは先ほどのことが未だ信じられず、呆然としていたがロキについていくようにその場を去った。

 これ即ち、グラン歴750年のことであった。





 これあれだな、今までに何回もこんな風な経験あるけどこの剣、勇者の剣的なやつだな。まぁもらっとけるもんはもらっておきたいし、これ装備するだけで強そうの見えるからまじいい感じだわ。それでブラギの塔か……どこだっけそれ?

 こんなことを考えていたロキなのであった。 
 

 
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