春から秋に
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第六章
第六章
「そうしていくか」
「もっと早くしておくべきでしたね」
「今年は遅れたな」
「色々ろありましたから」
「そうだな。だがとにかくな」
網だ。それを張るのだった。
そうして網を張ってからだ。それでだった。
米を食われないようにした。すると。
雀達はまだ田んぼの周りに群がっているがそれでもだ。米は食わなくなった。もっと言えばお爺さん達に食えないようにされたのだ。
こうして少し待った。そして。
夏が進みだ。それでだった。
米はだ。完全に金色になってだ。実りを大きくさせていた。
それを見てだ。また言うお爺さんだった。
「後はな」
「ええ、刈り入れですね」
「いよいよだな」
お爺さんは笑顔でお婆さんに言った。
「本当にいよいよだよ」
「ええ。それに」
しかもだった。お婆さんは。
ここで空を見た。田の上をだ。そこには。
蜻蛉達がいた。これでもかという位多く飛んでいる。その蜻蛉達を見てだった。
お婆さんはこんなことを言った。
「蜻蛉が」
「多くなったな」
「前から思ってたんですけれど」
その蜻蛉達をさらに見てだった。
「蜻蛉がいるからですね」
「蚊がいないんだな」
「そうですよね」
こうお爺さんに言うのだった。蜻蛉達が蚊を食べているのだ。
「そう思うと蜻蛉も有り難いですね」
「それにな」
「それに?」
「雀もな」
そのだ。米を食う厄介者もどうかというのだ。
「雀も虫を食ってくれるからな」
「そうですよね。雀も」
「そう思うと雀も有り難いよ」
「全くですね。厄介者ですけれど」
「そんなこともしてくれるからな」
この辺りは中々複雑だった。雀は害を為すだけではないのだ。しかもだ。
お爺さんは自分の足下、長靴のそこをちゅんちゅんと跳ねる様にして動いているその雀を見てだ。今度はこんなことを言った。
「この連中に毎朝だからな」
「そうそう。起こされて」
「鶏と一緒に鳴くからな」
雀の朝は早い。朝日と共に起きて鳴くのだ。本当に鶏と一緒だ。
その雀達を見てだった。お爺さんは言うのである。
「可愛い奴等だよな」
「ですよね。何かいつも」
「いつも?」
「秋になると」
そのだ。秋になるとああと言うお婆さんだった。
「気持ちが明るくなりますね」
「いよいよ刈ってな」
「はい、収穫ですから」
「もうすぐだ」
お爺さんも満面の笑みで言う。
「お米に野菜にな」
「はい。全部ですね」
「楽しみにしておくか」
こんなことをだ。二人で笑顔で話すのだった。
秋のはじめから進んでそうして。その時になりだ。
お爺さんはトラクターで米を一気に刈り入れる。お婆さんはトラクターが届かない細かいところを刈る。ついでに野菜も収穫して草も刈ってだ。何もかもがだ。奇麗になくなったのだった。
その祝いにだ。二人は家で。
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