私立アインクラッド学園
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第二部 文化祭
Asuna's episode2 いつかの願い
前書き
なんか今期アニメの主人公ニート多くないですか。番外編です
「──はあっ!!」
明日奈の細剣が赤く光り、人型モンスターの胸を真っ直ぐに貫いた。力尽きた相手の体が、ガラスを叩き割ったような破砕音と共に四散する。最初のうちは少しばかり抵抗があったものだが、今では手慣れたものだ。明日奈は一息つくと、近くにあった岩に腰かけた。
明日奈がいるのは、学園をやや遠く離れた森。わざわざこんなところまで来たのには、もちろん他でもない理由がある。
──キリト君、来てないかな。
和人は、よくこの森でモンスター狩りをしている。こうして明日奈も狩りを続けていれば、きっといつかは会えるだろう。
明日奈がこの気持ちに気がついたのは、いったいいつ頃のことだっただろうか。
少し前まで、桐ヶ谷和人のことは大嫌いだった。何の努力もしていないくせに、成績はなぜだかいつも上位にランクイン。こんなやつに負けてたまるかと、明日奈は彼に対して対抗心さえ抱いていた。しかし、彼のいろいろな面を知っていくうち、明日奈の心は変化していった。
その今の"心"を、小さく呟く。
「……わたしは、キリト君のことが、す──」
「えっ、呼んだ?」
「きゃっ!?」
明日奈は悲鳴を上げ、慌てて声のした方向を振り向く。立っていたのは、クラスメートの……
「キ、キリトくん!?」
「や、やあ、アスナ。ところで今、俺のこと呼んで……」
「さ、さぁ? 気のせいよ、きっと」
誤魔化そうとするも。
「そうかなあ……だって今、確かに」
「呼んでないって言ってるでしょ!」
「わ、悪い」
──さすがキリト君、鋭いんだから……
じとっと横目で彼を見るも、長続きしない。和人のことを考えただけでも顔が綻ぶのに、一目見てしまえばくすっと笑わずにはいられなくなるのだ。
明日奈が突然自分を見て吹き出したことに驚いたのか、和人が苦笑いを浮かべて言う。
「お、俺の顔に何かついてる……?」
それがまたおかしくて、明日奈に更なる笑いを誘う。失礼だから笑ってはいけないとわかっていても、どうしても堪え切れない。
「ううん、何にもついてないよ」
くすくす笑い、言う。
「……何もついてないのに笑われる俺の顔って、いったい……」
「だって君、おかしいんだもん。見てるだけでも十分面白いわ」
「だからそれが悲しいんだよ、俺は……まあ、学園一の美人«狂剣士»様の笑顔を拝めただけでもラッキーだと思っ」
「何か言った?」
和人の言葉は、明日奈の迫力を帯びた声によって遮られた。その声音は、和人にそれ以上は言わせまいとしている。問答無用で黙らされた彼に、明日奈は溜め息混じりに言う。
「……君は、このあとどうするの? キリト君がどうしてもって言うなら、わたしが狩りを手伝って差し上げなくもないけど」
「いや、いいよ」
「えっ……」
予想外の返事。
「俺はもう部屋に帰るしさ。アスナも、あまり無理はするなよ」
そう言って、和人が軽く投げたスポーツ飲料水を受け取る。アクアリアス、カロリー0%と書かれていた。
「水分補給は怠るなよ。……そういやアスナ、最近明るくなったよな」
「えっ? そ、そうかな?」
「ああ。よく笑うようになったし」
──だとしたら、それは、キリト君のおかげだよ。
その言葉は明日奈の喉元まで来ていたのに、サッと引っ込んでしまった。
和人は続ける。
「何せ、あのアスナがダイエットなんてするようになったんだからな」
「……ダイエット?」
そんなことをした覚えはない。
「えっ、ここで狩りを続けてるのは、そういう目的じゃなかったのか?」
「ええ。違うけど……」
「そ、そうだったのか。いや、アスナ最近、ちょっと太ってきたからさ。てっきり痩せようと思ってここへ通ってたのかと……まあ痩せるほど太ってないと俺は思うけど、女の子の感覚ってよくわからないし」
──アスナ最近、ちょっと太ってきたからさ
──てっきり痩せようと思ってここへ通ってたのかと
「ちょっと待てよ。ダイエットじゃないとなれば、どうしてアスナはここにいるんだ? こんなところに、いったい何しに来てるんだよ……って、ア、アスナさん?」
「……太ってきた、ですって?」
「あっ、いや……で、でもアスナはちょっと太るくらいが丁度いいんじゃないか?」
「それってどういう意味よ!!」
「だ、だってアスナは元々が細すぎるじゃないか……そんなんでよく剣なんか振れるなって感じだし、結構心配なんだよ」
──元々が細すぎる
──心配なんだよ
乙女たる明日奈をときめかせるには、もうその言葉だけで十分だった。
明日奈はくすっと笑い、そして呟く。
「……だめだよ、そんなこと言っちゃ。女の子なんて、案外単純なんだから……」
「な、なんだって?」
和人の問いに、明日奈はにっこりと答えた。
「なんでもないよ。さ、帰るならさっさと帰っちゃおう? わたしも疲れてきちゃったし」
「そ、そうだ、な……?」
「……なによ」
「い、いや……いきなりご機嫌になったなあって思ってさ……今の間に、何か嬉しいことでもあったかなあ、なんて」
「……ふふっ。さあ、どうでしょうね?」
──君に会えたってだけで、わたしは幸せなんだよ。
風に乗せて、小さく紡いだその言葉は、和人の耳にはきっと届いていないだろう。
それでも、いつかは、その心に届きますように。
明日奈の淡い願いが本当に届くのは、もう少し先の話。
後書き
わたし的にキリアス成分が足りていなかったので……
いかにも番外編な感じの番外編となりました。
ところで、振り返ってみてください。
和人が明日奈に渡したのは、カロリー0%の某スポーツ飲料水です。
そして、彼は明日奈がダイエットをしているものだと思い込んでいました。
……スポーツ飲料水(0カロリー)なんて、普通持ち歩いてますかね?
もしかしたら、ダイエット中の明日奈のために、わざわざ用意して持ってきてくれたのかもしれませんね(笑
まあ、実際どうなのかはご想像にお任せして……
そう考えると、なかなかニヤけてくるでしょ?
ね? ね??((←
最近ではキリトくんよりもアスナが好き‼な美桜でございます。(
アスナかわいいよ、アスナぁぁ!!
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