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万華鏡

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第六十二話 快勝その十

「そこそこ打ってくれるから」
「それならよね」
「期待出来るわね」
 景子の言葉に琴乃と彩夏はまた応えた、そして。
 三人だけでなく里香と美優もだった、自然と飲み食いする手を止めて。
 試合を観る、その五回裏を。
 まずは六番だった、ヒットで出て。
 七番がバントで送る、ここで八番がタイムリーヒットだった、これで二点目が入った。甲子園が再びフィーバーになったのは言うまでもない。
 しかもだ、九番であるピッチャーもだった。
 打った、そして。
 一番がまた打つ、この三連打でだった。
 阪神は二点を奪った、遂に相手ピッチャーは降板した。だがこの二点でだった。
 試合は決まった、五人はそれからは満面の笑顔で見られた。
 七回に一点を失ったが後は自慢の中継ぎ、抑えが働いてくれた。阪神は第一戦で見事快勝した。五人は歓喜の渦の甲子園を観ていた。
 その勝利に湧く観客席を観ながらだ、美優は四人にこう言ったのだった。
「よかったよな、まずは一勝だな」
「あと三回勝たないといけないけれどね」
「あと三つだよ」
 このことをだ、笑顔で言うのだった。
 そして全員にだ、こうも言った。
「なあ、勝ったしな」
「うん、それじゃあよね」
「プレーボールの時に行ったけれどさ」
 この前置きからの言葉だった。
「乾杯しない?」
「勝ったからね」
 琴乃が応える、琴乃だけでなく皆満面の笑顔だ。
「だからよね」
「ああ、そうして飲むか」
「祝勝ってことね」
「もう結構飲んでるけれどさ」
 三時間以上の試合だった、既に五人共飲んでいる。だがそれでもだというのだ。
「勝ったから飲むか」
「そうね、じゃあね」
「ああ、いいよな皆」
「うん」
 四人共それぞれのコップを持ってだった、そのうえで。
 それぞれの酒を入れたコップを打ち合わせこの言葉を言った。
「乾杯」
 この言葉と共にだった、飲み。
 さらに飲む。既にリミッターは外れていた。阪神の勝利がそうさせた。
 飲み食う、それで五人共前後不覚になるところでだ、里香が言った。
「ねえ、もうね」
「うん、相当飲んだからね」
「今日はね」
「これ以上飲んだら多分動けないから」
 今はかろうじて動ける、だからだというのだ。
「飲むことも食べることも止めて」
「それでよね」
「今は」
「うん、なおしてね」
 飲み食いしたその場をだというのだ。
「それで寝よう」
「お布団もう敷いてるから」
 琴乃がこう言う、既に里香の部屋に四人分寝る分は敷いている。二つの布団に二人ずつ入り寝るだけである。
 だからだ、後片付けをしてだった。
「寝ようね」
「そうしようね」
 里香は四人にまた言いそれから。
 五人で後片付けをして寝る、それからベッドの中にそれぞれ入り寝たのだった。
 朝起きるとだった、これがだった。
 かなり頭が痛かった、里香は自分のベッドから起き上がってまずはこう言った。
「おはよう、けれどね」
「うん、痛い」
「かなりね」
 これが四人の返事だった。 
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