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懐かしき友

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第五章

「何処になるかわからないな」
「そして何処に誰に会うかもな」
「わからないな」
「まあ何処に行ってもな」
 彼はビッグに笑ってこうも言った。
「人生至るところに青山ありってな」
「何だ、その言葉は」
「日本の諺だよ」
「あの国のか」
「カレッジにいた頃日本に旅行に行ってそこでガイドさんに教えてもらったんだよ」
「そうした言葉があるのか」
「あの国にはな」
 こうビッグに話す。
「こうした諺があるってな」
「何処でもそこにいればいいという意味だな」
「そうさ、日本には住めば都って言葉もあってな」
「同じ意味だな」
「そうだよ、何処でもな」
「その通りだな、ハワイもな」
 ここはとだ、ビッグは彼に目を少し微笑まさせて述べた。
「いい場所だな」
「そうだろ、海は綺麗だしな」
「しかも料理も悪くない」
「サーフィンなんか幾らでも出来るからな」
 四方が海に囲まれ暑い、何時でも泳げる場所だ。
「そこはマイアミと同じだよ」
「マイアミか。一度行ってみたいな」
「あそこもいいらしいな」
「そうらしいな、海が綺麗でな」
「いい場所だってな、まあハワイにいたらな」
 それならというのだ。
「ハワイを楽しめばいいさ」
「そうだな、ここでの軍務をな」
「楽しくやろうぜ、ハワイでな」
「ああ、お互いにな」
 ビッグはハワイで親しくなった彼と打ち解けて話をした。彼は本土から離れたこの島で最初の軍務に就いた、そしてその中で。
 カーペンターが見事パイロット養成課程を終え正式に戦闘機のパイロットとして配属されたことを聞いた。ビッグにそれを話したのは彼だった。
 彼は笑顔でだ、こうビッグに話すのだった。基地でレーダーの監視状況をチェックする間にだ。管制室の中で話した。
「御前の同期は凄いみたいだな」
「カーペンターだな」
「ああ、完璧だったらしいな」
 そのパイロット養成課程の中でそう言われていたというのだ。
「何もかもがな」
「あいつは天才だ」
 一言でだ、ビッグはカーペンターのことをこう評した。
「トップガンになれる」
「トップガンか」
「それになれる」
 それだけの資質の持ち主だというのだ。
「あのままいけばな」
「そう言われてるらしいな、実際に」
「それで戦闘機のパイロットになったか」
「そうさ、多分それでな」
 空軍のスター中のスター戦闘機のパイロットになったからにはというのだ。
「戦場に行くかもな」
「そうか、それでそこでか」
「活躍するだろうな」
「そうなる、あいつならな」
 カーペンターの資質を知っているからこその言葉だ。
「何機でも撃墜してな」
「エースか」
「正真正銘のトップガンになる」
「随分買ってるんだな、その同期を」
「知っているからな」
 どんな人間かをだ、それで言えるというのだ。
「あいつならな」
「トップガンになってか」
「凄いパイロットになる」
「パイロットはやっぱりな」
 どうした存在なのかをだ、彼はカーペンターに話した。褐色の肌に黒い髪と瞳、それに厚い唇の持ち主だ。背はビッグより十センチ程度低い。 
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