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懐かしき友

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第三章

「しかしだ」
「その他に必要なものがあるのかよ」
「友人だ」
 ビッグは低い確かな声でカーペンターに答えた。
「それは」
「同期か」
「同期もその他のな」
 先輩でも後輩でもだというのだ。
「心から信頼出来る仲間が必要だと思っている」
「そうだな、同期はな」
 カーペンターも軍人だ、それだけに同期の大切さはわかっている。それでビッグの言葉に頷いて言うのだった。
「掛け替えがないな」
「俺もそう思っている、だからな」
「そうか、同期なり仲間か」
「部下もそれに入るな」
 アメリカの交流関係は軍においても他国に比べてフランクな傾向がある、それで上官や部下もそう考えるのだ。
「仲間が欲しい。バスケをやっていてわかった」
「バスケはチームプレーだからな」
「背が高い、だからはじめたがな」
 彼が幼い頃の話だ、バスケットボールは他のスポーツに比べて背丈が必要だから彼はバスケをしたのである。
「そこで知った、仲間をな」
「それで軍でもか」
「仲間が欲しい、大切にしたい」
 しみじみとした口調での言葉だった。
「御前にしても他の同期にしてもな」
「そうか、仲間か」
「俺が大事にしたいことはな」
「だよな、俺も一人じゃ何も出来ないからな」
 カーペンターもだ、こう言うのだった。
「本当にな」
「そうだな、パイロットでもな」
「整備してくれる人がいてな」
 そしてだというのだ。
「管制がいて空港を整備するスタッフがいてな」
「各種の要員がいてな」
「全員いてくれないとな」
 とてもだというのだ。
「空を飛んで戦えないさ」
「そうだな、レーダーにしてもな」
「軍隊ってのは一人じゃないんだよ」
 しみじみとした口調で言ったカーペンターだった。
「本当にな」
「それはわかっているんだな、御前も」
「というかわかってない奴は馬鹿だろ」
 具体的に言うと軍にいてだ、何でも一人でやっているやっていけると思っている人間はというのだ。そうした人間は愚かだというのだ。
「どう考えてもな」
「空軍でも他の軍でもな」
「ああ、俺も一人じゃないんだよ」
 バーボンを飲みつつ言うカーペンターだった。
「絶対にな」
「だから同期はだな」
「ああ、大切だよ」
 掛け替えのない存在だというのだ、カーペンターも。
「本当にな」
「そうだな、それでだ」
「御前は職種とか配備場所はいいんだな」
「何処かで会えばな」
 士官学校を卒業して士官として軍に配属されてからの話だった。
「楽しく飲もう」
「だよな、こうしてな」
「その国の酒飲むか」
 アメリカ軍は世界各国で展開している、だからその配属場所は一つとは限らない。それでカーペンターもこう話すのだ。
「そうしような」
「是非な」
 こう話すのだった、そして。 
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