懐かしき友
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第一章
懐かしき友
ジョン=カーペンターを見てだ、ジェームス=ビッグは同期の面々に言った。ビッグは黒い鋭い目に黒い烏を思わせる髪を持っている。細面で唇は薄い、背は一九七とかなり高く空軍士官学校の学生らしく見事な体格をしている。
「あいつはトップガンになれるな」
「カーペンターがか?」
「なれるか」
「ああ、あいつはパイロット志願だったな」
このことが頭にあり同期の面々に言うのだ。
「そうだったな」
「みたいだな、運動神経いいみたいだしな」
「しかも目が抜群にいい」
「尚且つ反射神経も立派だってな」
「歯も丈夫でな」
同期の面々は次々にビッグに話す。
「背も高いけれどコクピットには入られるな」
「そこは御前とは違うな」
「俺はな」
ビッグは苦い顔で自分のことを話した、彼のことはというと。
「この通りだからな」
「ああ、高いな随分と」
「二メートル近いだろ」
「それだとな、ちょっとな」
「パイロットはな」
「自分でもわかってるさ」
苦い顔のまま言うビッグだった。彼等は今訓練の休憩時間だ、行進を延々と続けさせられた後で草色の軍服を着て銃を肩に担いで座って話をしている。
「俺はパイロットにはなれない」
「けれどあいつはか」
「なれるか」
「何かそう感じた」
直感で思ったことだというのだ。
「あいつはなれるな」
「そうか、トップガンか」
「それか」
「そうだ、アメリカ軍でも屈指のな」
それになれるとだ、彼は話すのだった。実際にカーペンターはというと。
抜群の運動神経特に反射神経を見せた、そして成績もよかった。それでビッグはカーペンターにも話した。見事な金髪に鋭く青い目を持っている。顔立ちは引き締まり若々しい端整さを見せている。薄い唇と彫のある顔が目立つ。スポーツ選手の様な体格で背は一八三程で足が長い。
その彼にだ、昼食の時に相席になり言うのだった。
「御前パイロットになりたいんだったな」
「ああ、そうだ」
その通りだとだ、カーペンターはビッグに答えた。鋭い目が微笑んでいる。
「絶対にな」
「そうか、御前ならな」
「なれるっていうんだな、パイロットに」
「それもトップガンにな」
只のパイロットではなくそれにだとだ、ビッグは本人にも話した。分厚いベーコンのステーキをフォークとナイフで切りながら話す。
「なれるな」
「実際に目指してるぜ」
「だろうな、じゃあな」
「ああ、絶対になるからな」
だからだとだ、カーペンターはにやりとしてビッグに話す。
「応援してくれよ」
「そうさせてもらうぜ」
「ああ、それであんたは」
「俺か」
「あんたは何になりたいんだ?」
「そうだな、俺はこの大きさだからな」
二メートル近い、それでだというのだ。
「パイロットにはなれない、そもそも適正がないんだよ」
「へえ、そうは見えないけれどな」
「目もな」
フォークを置いて左手で自分の目のところを摩りながら話す。
「悪いんだよ」
「そうなのか」
「ああ、これでもな」
「パイロットはやっぱり目だからな」
「だからだよ、まあ仕事は幾らでもあるさ」
空軍とはいっても職種はパイロットだけではない、だからだった。
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