とある星の力を使いし者
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第144話
一方通行は薬局の袋を持ちながら小雨の中を歩いていた。
麻生と別れて地下街に向かい打ち止めを探しに行ったのだが、そこで予想外の人物に出会った。
インデックスという明らかに偽名のような名前をした白い修道服をきた少女に出会った。
出会ったというのは語弊かもしれない。
インデックスはふらふらと地下街で歩いている所にたまたま、一方通行にぶつかったのだ。
「あれぇとうまじゃないとうまじゃないよとうまだと思っていたのに何でとうまじゃないのこの人とうまはどこに行ったの何でも良いけどお腹が減って動けないんだよあの塩と胡椒とお肉の匂いがジュージューと漂っていてとにかくあれ食べたいあれ食べたいどうすれば良いのあれ食べるにはどうすれば良いの?」
と、普通の人が聞いたら心配しかしない発言を一方通行は聞いてしまう。
本来ならこの少女の全身を粉々にしてその辺に捨てておこうと考える。
だが、少し前に愛穂から『たまには良い事でもしてみれば?』的な発言をされたばかりである。
別に愛穂の言葉を律儀に守る必要はないのだが、守らなかったら守らなかったで煙草やめます宣言をして三〇分しか保てなかった、みたいな事になるとそれはそれで癪だ。
それにこの人の話を聞かずに喋り続ける所があのガキと似ているな、と思ったがそれが気にかかったと認めるのは死んでも嫌だった。
という事で、一方通行はその空腹シスターを近くのファーストフード店に蹴り入れる。
自分の財布を乱暴に投げ渡すと、好きな物を選べと言う。
すると、あれもこれも全部食べたいと、とんでもない事を言い出した。
一方通行は様々な研究に身体を貸している。
なので金銭面に関しては全く問題ないのだが、それでもこれだけのハンバーガーをガツガツ消費していくこの修道女の許容量はどんなものなんだろう?
大量のハンバーガーを全部食べきったインデックスが地下街にいる理由は、彼女も人を探しているらしい。
こんなシスターを世話している人物に同情する。
一方通行は口の周りにソースがべったりとついているインデックスに、無言でポケットティッシュを投げ渡す。
打ち止めの顔写真データを見せるがインデックスは見かけた事はない、と言った。
それを聞いた一方通行は席を立つとインデックスも一緒に立ち上がる。
何でも一緒に探そう、と提案してきた。
即答して断ったが、インデックスはお礼がしたいらしい。
あれほどのハンバーガーを食べてお礼が人探しの手伝いとは、何とも割に合っていないような気がするが、一方通行は気にしない。
とうまという人物の愚痴を聞きながら、昼か夜か分からない地下街の中を一方通行とインデックスは歩き出した。
しばらく歩いていると、打ち止めを見つける事ができた。
同時にインデックスの方もとうま、という人物を見つける事ができたらしい。
インデックスは一方通行にお礼を言ってその人物に向かって走り出す。
自分に飛び込んでくる打ち止めに無言でチョップしながら、地下街を出て行く。
小雨の中、二人は歩いていると雨で濡れた路面で足を滑らしたのか、転んでしまう。
両手には小さな傷ができていた。
消毒が必要だと打ち止めは言ったが、一方通行(アクセラレータ)はそれを無視する。
打ち止めは一瞬だけ無言になるが、無理矢理納得して一方通行について行く。
言い様の無いプレッシャーを感じた一方通行は打ち止めをバス停のベンチ座らせる。
そこから動くなと伝え、近くの薬局へと向かった。
過保護、と思いながら子供向けの絆創膏を買っていく。
前の一方通行を知っている者なら絆創膏の箱と睨めっこしている姿を見て、目を疑うだろう。
店員をひやひやさせながらも、絆創膏を買って打ち止めの所に向かう。
「馬鹿げてやがる。」
思わず吐き捨てた。
愛穂はこういった事に慣れないのか、と尋ねたが慣れる訳がない。
こんな事など一方通行の世界から最も遠い位置にあるものだ。
ちっぽけな傷を癒すために絆創膏を後生大事に抱えて夜の街を急ぐなどどうかしている。
一応、答えは出ている。
八月三一日に、たとえ自分がどれほどのクズであっても、側にいるあのガキには関係ない。
だからあのガキが傷つけられようとしている時だけは、どれだけ場違いでもまっとうに動いてみせる。
良い意見だが、これではあのガキに負担を押し付けているようにも受け取れる。
(イラっちまっている理由は何だ。
俺はナニが足りねェと感じてンだ。
そこから分かンねェなンてな。
自分探しなンてガラじゃねェのはテメェが一番分かってンだろォがよォ。)
そこで彼の意識は途切れた。
ゴン!!、と猛スピードで突っ込んできた黒いワンボックスが、一方通行に激突したからだ。
さて、どうしたものか。
上条当麻は地下街の中を歩きながらそう考えた。
制理にボコボコにされた後、上条はそのまま一直線に寮に戻ろうと考えていた。
しかし、帰る直前に二人の不良が生徒にカツアゲをしている場面に遭遇してしまった。
不幸だ、と呟きながら上条は不良のカツアゲを阻止しに行く。
最初は穏便に事を済ませようとしたが、相手は全く聞く気がなく結局喧嘩になる。
二対一の状況だが、日頃魔術師や超能力者と戦った経験なのか、少し苦戦しつつも勝つ事ができた。
お礼を言われつつ、上条はその場を離れるがその不良のお友達(一〇人)が現れる。
上条とその生徒は振り返り、全力疾走で逃げていく。
それらを撒くのにかなりの時間がかかった。
全身に疲労を感じながら寮に戻ってみれば、インデックスの姿が見えなかった。
どこに行ったんだ?、と思いながらインデックスの携帯に連絡する。
案の定、電源は切れていた。
何の為に持たせたのか疑問に思いつつ、探しに行く事にする。
まだ彼女はこの街に慣れていない。
かなりの確率で迷子になっているだろう。
警備員に補導されると色々と面倒な事になりそうなので、探しに行く。
適当にぶらぶらと探したが影すら見かけない。
前に風斬とインデックスで地下街に行った事を思い出した。
もしかしたら、と思い近くの地下街に向かう。
しばらく歩いていると、御坂妹に出会った。
御坂美琴と区別する為にゴーグルがしてあるのだが、今回はそれがなかった。
なので、最初は美琴だと思ったが妹の方だった。
ゴーグルがないと見分けがつかない。
という事で、何かアクセサリーを買いに行こうという事になった。
最初は指輪にしようかと思ったがそれでは分かりにくいという事で、一〇〇〇円ジャストの安いネックレスになった。
途中、御坂妹が指輪からネックレスに変更になった時、やけにテンションが下がったが上条は何も分かっていない。
機嫌を取ろうとお菓子を買おうと提案する。
もので釣るとしている事が一瞬でばれたが、御坂妹はそれほど気にしなかった。
ヒヨコの形をしたお菓子を買う。
それを見た御坂妹は何を勘違いしたのか、ヒヨコを守ろうとフォークを突き刺してヒヨコを食べようとする上条に電撃を撃つ。
五万ボルトの電流だが、ヒヨコが地面に落ちるのには充分だった。
その後、御坂妹さらに妹のような少女が突然現れ、ヒヨコを盗って行く。
それを見た御坂妹はバッグの中からサブマシンガンを取り出し、ヒヨコを盗っていた少女を追い駆けていく。
(何がどうなっているんだ?)
首を傾げながら、御坂妹とその妹らしき人物が走って行った方を見る。
あの小さい少女は顔立ちは御坂妹にそっくりだった。
もしかしたら、新しく二万人の妹達が現れたかもしれない。
この街なら本当にやってきそうなので、少し怖い。
「一応後で御坂妹に尋ねてみよう。
これを放ったらかしにしておいたら後でひどいツケが回ってきそうな気がする。」
「何を莫大な疲労感に肩を落としているの?、ってミサカはミサカは癒し系のマスコットとしてあなたの背中に張り付いてみたり。」
思わずこぼした独り言に妙な返事があったと思ったら、背中に、のしっ、という重みが加わった。
背中に伝わる丸っこい感触に、上条はゾゾワァ!!、と全身の毛を逆立たせた。
何とか自分の両手を頭方向から後ろへ回し、背中にくっついているものをがっちりとホールドするとダンクシュート状に顔の前へ引きずり出す。
逆さまにぶら下がっている御坂妹を小っこくした例の謎の少女だった。
上条は首を傾げると、少女も首を傾げた。
とりあえず、降ろして彼女の名前を聞く。
どうやら、打ち止めという名前の様だ。
どう考えても偽名に感じるのだが、あえて突っ込まない。
打ち止めの事を説明を求めると、打ち止めは丁寧に説明してくれた。
自分達にはミサカネットワークという独自のネットワークがあり、それらを管理したりするのが自分の役目だという。
この説明を受けても凄そうという感想だけで、いまいち実感が湧いてこなかった。
打ち止めはあの実験で上条にも助けられたので、お礼を言いに来たらしい。
だが、上条はお礼を言うのは自分ではなくもう一人の男に言うべきだと言う。
「でも、恭介は当麻にお礼を言えって言っていたよ、ってミサカはミサカは病院で言っていた言葉を思い出してみる。」
「あれ、恭介と会った事あるのか。」
何故自分なのだろうか?、と上条は再び首を傾げる。
ふと、打ち止めを見ると首から見た事あるゴーグルがあった。
聞いてみると、どうやら御坂妹から奪ってきたらしい。
山賊発言を聞いて、やはり上位個体は違うなと思った上条。
上手く装着ができないらしく、しょんぼりしている。
元々彼女のサイズに合わせて作った訳ではないので、上手く装着できないのも無理はない。
よく見ると、バンドはゴム製なので水中ゴーグルの要領でやればできるだろうと考えた上条は、長さを調節する金具に触れる。
ゴーグルの本体を掴んで引っ張ると、それに驚いた打ち止めはバタバタと暴れる。
それに驚いた上条はゴーグルから手を離してしまう。
ばちーん!!、と打ち止めの顔から良い音が聞こえた。
「「・・・・・・・」」
両者の間に気まずい沈黙が流れる。
失敗はできない、と思い再チャレンジをするが再び失敗する。
打ち止めに何度か蹴られ、再チャレンジしてようやく調節する事ができた。
途中土御門や青髪ピアスに出会い、打ち止めと二人でいる所を見て変な勘違いを生んだりと、ごたごたとした時間が過ぎていく。
携帯で時間を確認すると、もう午後六時を過ぎていた。
打ち止めもネットワークで時間を確認したのか。
「あのねー、ミサカはそろそろ帰らないといけないの、ってミサカはミサカは残念なお知らせをしてみたり。」
「ま、時間が時間だからなぁ。」
上条としては、こういう子供はもう帰るべきだろうと考えていたのでちょっと安心だ。
「本当はもっと一緒にいたかったんだけど、ってミサカはミサカはしょんぼりしてみたり。
ここで会ったのはたまたまだったんだけど、お礼をしたかったって気持ちは本当だし、ってミサカはミサカは心中を吐露してみる。」
打ち止めはおでこのゴーグルに両手をやった。
これもやってもらったしね、と彼女は言う。
「でも、あの人は心配すると思うんだ、ってミサカはミサカは思い出しながら先を続けてみたり。
あんまり遅いと今度はミサカの事を探すために街に出てくるかもしれないし、ミサカも迷惑とかかけたくないから、ってミサカはミサカは笑いながら言ってみる。」
ふうん、と上条は適当に相槌を打った。
誰だか知らないがその相手は良いヤツっぽそうだな、と漠然と感想を抱く。
「弱いんだよ。」
打ち止めは続けた。
「あの人はいっぱい傷ついて、手の中の物を守れなかったばかりか、それをすくっていた両手もボロボロになっちゃっているの、ってミサカはミサカは断片的に情報を伝えてみたり。
だからこれ以上は負担をかけたくないし、今度はミサカが守ってあげるんだ、ってミサカはミサカは打ち明けてみる。
「そっか。」
言っている事の意味を半分も理解できていないだろうが、上条は頷いた。
打ち止めの口調に偽りはない。
良いヤツっぽいんじゃない。
きっとソイツは、間違いなく良いヤツだ。
それだけを言って、打ち止めはばいばーい、と手を振って駆け去って行く。
上条はそれをしばらく見送った。
最終下刻時刻、つまり終電の時間が迫っているせいか、にわかに慌しくなり始めた地下街の人混みの中をすり抜けていく小さな身体は、あっという間に見えなくなった。
さて帰ろうか、と上条はきびすを返そうとした所で、ふと視界に見覚えのある人物を捉えた。
そこで、ようやく自分が何をしにここに来たのか思い出す。
『彼女』はこちらへ近づいてくる。
制理と話をした後、麻生は愛穂のマンションに向かって歩いていた。
時刻を見ると六時三〇分を過ぎていた。
打ち止めが見つかったのかはまだ分からない。
現状を理解しようと、愛穂に連絡しても全く通じない。
電話越しから聞こえるアナウンスを聞いて、考える。
(愛穂も地下街にいるのか?
なら、桔梗に連絡してみるか。)
桔梗の携帯に連絡しても、さっきと同じアナウンスが聞こえる。
おかしい、と麻生は思った。
愛穂ならいざ知らず、桔梗が電源を切っているのはおかしいと思った。
愛穂が地下街にして電波が届かないのなら合点がいくのだが、桔梗は愛穂のマンションにいる筈だ。
それなのに電波が届かないのはおかしい。
待機しているので電源を切っていれば連絡のしようがない。
少し考えたが、それほど焦る事でもないだろう。
そう考え、とりあえずマンションに向かう。
帰り道の途中、警備員の姿をよく見かけた。
学生より警備員の方が多いと言うのは珍しい光景だろう。
(またテロでも起こったのか?)
案外シャレにならない事を思いながら足を速める。
何やらピリピリとした、張り詰めた空気も感じ取った。
ここで警備員にいちゃもんつけられては面倒だ。
そう思った時だった。
ゴトリ、と妙な音が聞こえた。
麻生はその音の方に視線を向けると、すぐ近くの歩道で警備員が倒れていた。
うつ伏せに倒れた身体が、路面を濡らす水溜りに浸されていく。
それでも身じろぎ一つなかった。
いかに防水機能があるとしても普通の反応ではない。
この光景を見た麻生は若干眉をひそめる。
(何がどうなっている。)
とりあえず、意識の確認などをするために近づいて行く。
もし、この警備員が愛穂の知り合いなら彼女は悲しむだろう。
しかも、自分が側にいたのに無視してそれが原因になったら目覚めが悪い。
近づこうと思った時だった。
バタリ、と明らかに人が倒れる音が聞こえた。
それも一つではない。
バタリバタリと何度も何度も重なって一つの長い雑音を作り上げた。
周りを見渡すと、近くにいた警備員が全員倒れていた。
「・・・・・」
倒れる原因を何個か考えたが、埒が明かない。
ともかく、一番近い警備員の身体に干渉する。
調べると体内の酸素が極端に減っていた。
人間に限らずほとんどの動物には、生命活動に必要なものが不足すると、それに合わせて体機能のレベルを低下させる防衛本能を持っている。
この警備員は酸素を極端に失ったために仮死状態になっている。
一応、酸素を増やしても目覚める気配がない。
(体内に微弱だが、魔力を感じた。
おそらくこれは魔術。)
そうと決まれば、麻生の能力でかかっている魔術を解く。
しかし、解いた瞬間再び同じ魔術を受け、意識を失った。
(原因となる魔術を破壊しない限り、治療は難しいか。)
辺りの警備員の容体を確かめる。
誰も死にそうな深刻な状態の人はいなかった。
麻生は携帯電話を片手に、愛穂のマンション向かう。
依然と、電話は繋がらない。
(俺のお守りを持たせているとはいえ、危険だな。
早く合流する必要がある。)
かといって何があるか起こるか分からない。
出来る限り能力使用時間を節約する必要がある。
面倒だが麻生は走って愛穂達を探すのだった。
後書き
今回はざっくりと簡潔に書かせてもらいました。
一方通行や上条の描写を書くと2話くらいいきそうなので、必要な所だけ書きました。
ご了承ください。
感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。
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