魔法少女リリカルなのは ~黒影の死神~
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『第三十八話』~いきなり4vs1って卑怯じゃね?~
拓斗side
「シグナム達の様子が変?」
「そうなんよ。なんか私に隠し事してるみたいでな~」
「例えば?」
「なんか急にどっか行ったと思ったら、凄い遅くに帰ってきたり……」
「ふむ……」
はやてに黙って行動するような奴等だとは思えないんだけどな……魔法関係か?
ヴォルケンの面々が現れて、つまりはやての誕生日から四ヵ月程たった。現在10月半ば。
それからのはやてはとても笑顔が増えた。たぶん、今まではやてが欲しかった家族ができたことが俺の考えていた以上に嬉しかったのだろう。
それからも図書館に行く時は俺と一緒に行くが、病院や買い物などはシグナムやシャマル、たまにヴィータが付き添いをする事になっている。
それに最近ははやての家に遊びに行くことも増えた。四人で出来るゲームができるのがはやても嬉しいらしく、ヴィータとシャマルも楽しんでいるらしい。ただヴィータは俺が相手になるとかなりムキになってくる。後、シグナムとザフィーラはあまりやりたがらないらしいとはやてが言っていた。
今は図書館ではやてと2人でいて、冒頭の愚痴へと続くわけだ。
最近はやての調子が悪くことが増えていたのと何か関係がありそうだな……
「どこに行ってるとか言わないのか?」
「一応どこかに行くとかは言ってから出かけるんやけど、皆毎日どこか行くから心配で……」
「なるほどね~」
この年で完全に母親だな……
息子の帰りが遅いと夫に言う主婦のようだ……ってそれじゃ俺が夫みたいだな、これは少し違うか。
「一度俺からもさりげなく聞いてみるか?」
「ホンマに? それじゃーお願いしようかな」
「了解。んじゃ、近いうちに聞くか」
「ありがとうなたっくん」
「別に礼なんていらない、俺も気になるだけだからな」
アイツ等がはやてに内緒にすると言うことはそれほど危険が伴う内容だという可能性が高い。
実力は知らんが魔力は多いだろう、抑えるのは難しいか……少し手荒い事をしないといけないかもしれないな………
そしてその日、さっそく行動に移ることにした。
図書館からはやてと一緒に出て、そしてそのままはやての家にお邪魔する。
「ただいま~」
「お邪魔します」
「お帰りはやてちゃん。それといらっしゃい拓斗君」
玄関にはシャマルが出迎えてくれる。そしてリビングに行くと他の3人がいて、ヴォルケンが全員そろっていた。これは運がいい。
「今から晩御飯作るな。たっくんも食べて行ってや」
「それじゃ、お言葉に甘えて」
「うん。皆待っててな」
そう言うとキッチンに入るはやて。いつもなら手伝おうと動くのだが今回はやることがある。悪いな、はやて……
「(単刀直入に聞くが、お前等は最近どこに出かけてるんだ? はやてが心配しているんだが)」
「「「「!?」」」」
ヴォルケンの4人に念話を飛ばす。
俺が念話を使ったことに驚き、こちらを見てくる四人。
「(拓斗……お前)」
「(なんだヴィータ? 俺が念話できるのそんなに不思議か?)」
「(あたりまえだろ! どういう事だよ!)」
すごい剣幕のヴィータだが、すぐ近くのキッチンにはやてがいるので動きはせず睨んでくる。だが俺はいつもと変わらない態度でいる。
このような状況で一番大切なのは冷静でいることだ。
冷静に思考し、相手を自分の思うように誘導する。交渉事の基本だ。
「(前に話しただろ。俺は死神であり、魔導師だ。これくらい普使えると思う方が普通じゃないか? まぁ、俺の事はどうでもいい。もう一度聞くが、何処に行き、何をしているんだ?)」
「(……それを言う訳にはいかない)」
四人の総意なのかシグナムがそう返答してくる。
「(そうか。でもそれで『はいそうですか』と引き下がるわけにはいかないんだ)」
「(ならどうするつもりだ?)」
どうするか……。本当は話し合いで穏便にすませたいが、そうはいかないだろうな……
「(今日はやてが寝た後に四人で近くの公園に来い。話はその時だ)」
「(……わかった)」
しばらく考えた後、了承するシグナム。
どんな理由であれシグナム含めヴォルケンリッターの四人は俺の事を少なからず信用してくれている。
「お待たせ~ってどうしたん皆? なんか暗いなー」
念話を終え、しばらくするとはやてが食事の準備を終えこちらに声をかけてくれる。俺は立ち上がり、料理を運ぶのを手伝う。
「いや、何もない。お、今日もうまそうだな。はやてはいいお嫁さんになれるよ」
「え!? そ、そんなたっくん……お嫁さんやなんて……」
手を頬に当てくねくねするはやて。俺なんか変なこと言ったか?
ともかくその後、いつも通りに食事を済ませた。
はやて達との食事を終え、せめてもと食器洗いだけをしてはやての家を後にする。俺は家に帰らずに指定した公園に向かう。
時刻は午後十一時。ヴォルケンリッターの四人が公園にやってくる。
「待たせたな」
「いや、それほど待ってはいないさ。はやては?」
「家でしっかりと寝ている」
「そうか」
さて、ここからが本番だ。これでこの後の出来事が大きく変わる。
「月詠。お前の要求はなんだ?」
「ザフィーラ。俺は言ったはずだが? はやてがお前等を心配している。友人だからな、一応何をしているのか知りたくて聞いたまでだ」
「……そうか」
人型になっているザフィーラの質問にあたりさわりなく答える。納得はしてくれてはいないようだが。
「次はこちらの質問だ。お前等は何をしている?」
「それはこちらも言ったはずだ。答えるわけにはいかない」
そうシグナムが答えてくるが、このままでは埒が明かないな。出来るだけしまっておきたかったカードなんだがな。
「闇の書の機能の一つ、蒐集……」
「「「「!?」」」」
「図星か」
「拓斗! お前なんで知ってんだよ!」
「少し個人的に闇の書について調べさせてもらったんでな」
「調べただと?」
なんで知ってるか……それは以前使用した書物庫が理由だ。
今となっては俺とソウルしか知らないが、管理局が言う『ロストロギア』。あれはヘキサ式の力を強化し、自分達の魔法式に置き換えようとした物が殆どだ。
ヘキサ式の魔法には禁忌魔法という魔法が存在する。危険なロストロギアはその禁忌魔法を技術に置き換えたものだ。
そのため書物庫には殆どのロストロギアの情報が存在するのだ。
何故か闇の書の情報は殆ど存在しなかったが……
俺の知っている情報は名前は聞いた通り闇の書。
主を求めて次元世界を旅する魔導書型デバイス。
魔導書には四人の守護騎士『ヴォルケンリッター』がいて主の護衛及び魔力の蒐集を行う。
魔導書666頁全てが埋まると大いなる力を得ると言われている。
管理局と闇の書の主は長年、争い続けている。
こんなところだ。そのなかには蒐集を長時間行わないと闇の書が主を蝕むという内容もあった。
はやての下半身不随はおそらくそれが原因だろう。
書物の中に管理局が書いてあるのは驚きだったが、今気にすることではない。
「そのことも含めて俺から話がある」
「話だと?」
「あぁ…今すぐ蒐集を止めろ。他の方法を探してはやてを救え」
「なっ!?」
ヴィータが声を出して驚く。シグナムとシャマル、ザフィーラも声は出してはいないが相当驚いている。
まぁ、当然の反応か。方法は蒐集にしかないと思ってるんだしな。
さあ、どう返してくる……
「ふざけんじゃねぇ!」
「月詠、確かにお前は信用に値するということはすでに知っている。だがそれとこれとは話が別だ」
なるほど。やはりこういう答えか……。後の二人もその意見に賛成のようだ。
「そうか……。お前等はそんなにはやてを苦しめたいんだな」
「……どういう意味だ」
殺気のこもった目で俺を見てくるシグナム。……この程度の殺気しか出せないのか? いや、抑えているのかもな。
「言葉通りだ。はやてはお前らに他人には迷惑をかけるなと言った。その契りをお前等は背いたんだ」
「だからってはやてが死んでいいって言うのかよ!」
ヴィータがそう言ってくる。
なんて言った? はやてが死んでいい?
「ふざけんじゃねぇ! そんなわけねーだろうが!!」
「「「「!?」」」」
先程までと一転して怒る俺に対して四人は驚く。
そんなのはどうでもいい。俺は怒鳴る。
「確かにはやてと会ったのはお前らよりニ、三か月早いくらいだ、むしろ一緒に暮らしているお前等の方が多くはやての事を知っているだろうな。だがな! アイツは! はやてはな! 俺の友だ! 大切な奴なんだよ!!」
「ならば……それならばどうすると言うんだ!」
どうする? そうだ、どうにかするために俺は今ここにいる筈。
落ち着け、感情的な状態だと相手への説得力はなくなる。
「確かにお前等の方法ならば、おそらく十二月頃には完成するだろう。だが、俺にはそれよりも危険を回避できる考えがある。それを実現するにはお前等の協力が必要不可欠だ。頼む」
「「「「……」」」」
俺は頭を下げる。これで納得してくれるか……
「たしかにお前の話はわかった」
「……」
「だが、このことに関してはまだ完全に信用するわけにはいかない」
「……そうか」
やはり駄目か……それだけこの四人にとってはやてが大事な存在だということだ。でもここで折れるわけにはいかない。
「だったら取引だ」
「取引だと?」
「あぁ。俺とお前らが戦って、俺が勝ったら俺の考えに納得して協力する」
「……こちらが勝ったら?」
「そっちの好きにしてくれていい。殺すなりなんなり好きにしろ」
「そんなもんこっちが受けるわけねーだろーが!」
「ヴィータちゃん落ち着いて」
たしかに現状でこの取引を受ける必要性は皆無だ。とにかく俺はこいつらを煽って承諾させるしかない。
「ヴィータ、俺一人に勝てる自信がないのにはやての事助けられると本気で思っているのか? だったらお笑い種だな」
「なっ! てめー!」
「その通りだろ? さあどうする?」
「……」
シグナムに視線を向けるが答えてこない。
どうする、あまり使いたくないが最後のカードを切るか……
「わかった。受けよう」
「っ!? 本気かシグナム!」
「あぁ」
「理由を聞いていいか」
「私も聞きたいわ」
ヴォルケンリッター内でもシグナムの答えに驚いているようだ。現に俺も驚いている。最後のカードはある意味脅迫なので使わなくてよかったのは助かったのだが、どうして受けた?
「月詠が言う通り我々は主はやてに心配をかけているのだろう。そしてそれはこれからも続くはずだ。もしここで拓斗に遅れを取るようならこの先うまくいかないだろう。なに、ここで拓斗を倒し蒐集の手伝いをさせればいいだけの話だ」
「……わかった」
「シャマルとザフィーラもそれでいいか?」
「「えぇ(あぁ)」」
シグナムの考えで三人も納得したようだ。
俺の事は蒐集の手伝いにするつもりか。なんというか想像より……
「俺の事は蒐集の手伝い程度でいいのか? 軽くても口を割らないように死なない程度に痛めつけられるぐらいの覚悟はしてたが?」
「なに、お前にそんなことがあったら主はやてが悲しむ」
「そうか?」
「そうだ」
やっぱ、こいつらはやての事が大好きなんだな………
「そうと決まればさっさとやってやる!」
ヴィータのその言葉で4人の服がバリアジャケットに変化する。それぞれが構え戦闘準備完了のようだ。
「まぁーそう焦るな。少し移動するぞ」
「はぁ? 何言ってんだよ? シャマルが結界張るからどこで戦っても一緒だろ?」
「えぇ。そう簡単に壊れるような結界じゃないんだけど」
「万が一だよ。もし何かの拍子ではやてにばれたらどうすんだ?」
と言ったが、これは建前だ。ここで結界を張って戦ったら、なのはに気づかれるかもしれん。今なのはに知られたら後々大変なことになる。
「……わかった」
「よし、じゃあそこを動かないでくれ」
そう言う瞬間、俺達五人を囲うようにヘキサ式の魔法陣を展開する。
「なっ!?」
「なんだコレ!?」
「慌てるな。俺がやった魔法だから
空間の巫女よ 我は世界を越えるもの それは点と点 天と天 転と転 繋げ 結べ 結え『空前絶後』」
詠唱を終え、辺りは俺の魔力色の光に包まれた。
全体side
「…? ここは、何処だ?」
強い光に瞑った目を最初に開いたのはザフィーラ。
そこは綺麗な草原が広がっていた。
遠くには森や大きな山が見え、
「少なくとも地球じゃない」
「だめ、地球の座標が掴めないわ」
「つまり、それほど離れた世界だってことなのか!?」
シャマルの発言にヴィータが驚きの声を上げる。
「ようこそ、決戦の舞台へ」
ヴォルケンリッターが声の聞こえた方に目を向けると、そこには守護服に身を包んだ拓斗がマントをなびかせ立っていた。
「月詠…此処は一体……?」
辺りを見回しながらザフィーラは拓斗に問いかける。
「此処は以前、俺達の一族が己を鍛えるために通っていた|疑似世界(シャムワールド)。『修練の戦地』だ」
「修練の戦地……」
「シャムワールドってなんだよ?」
「この世界はかなり昔に一族の者達が修練のために創りだした世界で、理論は俺も八割くらいしか分からない。だが、戦うにはお誂え向きだろ?」
そう微笑むと拓斗の身体から微量だが殺気が滲み出る。
守護騎士達はその殺気を感じ取り一斉に構えをとる。
「そうだな」
「わりーけど、速攻で決めるからな! 大体拓斗、お前魔力もないのに勝てると思ってんのか?」
ヴィータは拓斗を心配してか、それとも話にならないという事なのか拓斗の魔力の事を口にする。
「忠告ありがとう。だが、心配無用だ………ソウル」
[了解。『プロテクト』解除]
それと同時に拓斗から遮断されていた大量の魔力が解放される。
「なっ!? お前、魔力を隠してたのか!?」
ヴィータが驚きの声を上げる。他の三人も口には出さないが驚愕の顔をしていた。
「そんなのどうでもいいだろ。早速始めようじゃないか……」
「あぁ……」
その言葉で全員が構える。
「「「「「……」」」」」
五人の間に沈黙が走る。お互いに相手の実力が分からない為か、警戒してるのだ。
――ズザッ
「はぁー!」
「おりゃー!」
誰かの――おそらく、ザフィーラの足をずらした音を合図に烈火の将――シグナムと、鉄槌の騎士――ヴィータがそれぞれの相棒である炎の魔剣――レヴァンティンと、鉄の伯爵――グラーフアイゼンを振りかぶり牽制する。
それに合わせ、盾の守護獣――ザフィーラがバインドで拓斗を拘束しようとする。
「フッ」
「なっ!?」
「マジかよ!」
それを拓斗はザフィーラのバインドを避け、牽制してきた二人をすり抜けるように回避する。
そのまま拓斗が走って向かう先は――
「え、私!?」
湖の騎士――シャマルだ。補助を先に倒して、有利に持ち込むつもりなのだろう。
「『シュワルベフリーゲン』!!」
「っ!」
しかし、ヴィータの放つ誘導弾が拓斗の行く手を阻んだ。
拓斗は黒夜へ変えたソウルで全ての誘導弾を切り捨てる。
「このぉ!」
「はぁ!」
――キンキン、キィン!
そして接近してきたシグナム、ヴィータの二人と己が武器をぶつけあい、金属音を響かせ、火花を散らす中、拓斗は詠唱を始める。
「我求むは闇 獲物を逃さぬ漆黒の鎖 対象を捕らえ力を封じ 苦痛を与えよ『暗黒の捕縛』!」
そうすると、空中に無数の小さな穴が空き、多くの漆黒の縄ようなものが拘束しようと四人に迫る。
しかし四人とも拘束魔法に掴まることはなく、鎖をうまく躱す。
だが、拓斗にとってそれは時間稼ぎ以外の何物でもない。特に特攻二人組には念入りにだ。
拓斗は守護騎士たちが拘束魔法に苦戦している間にその中の一人へ近づく。相手は勿論シャマルだ。
だがそれに気づき、シャマルは鎖に気をつけながらも後退しようと。
その時――
「…どんな時も……」
――目の前にいる筈の少年の声が――
「後ろに注意(チェック・シックス)だぞ?」
――後ろから聞こえた――
「え!?」
気付いても既に手遅れ。シャマルは後方にいた人影に首へ手刀を入れられ気を失った。
「「「シャマル!」」」
他の三人がその光景を見て叫ぶ。
拓斗はその声を聞きつつシャマルが気絶しているのを確認して地面に降り立ち、ゆっくりとシャマルを地面に寝かせてから、危険がないように人一人分程の結界を張る。
その間に拘束魔法の縄を完全に破壊した三人は一ヶ所に集まった。
「一体何なんだよ拓斗は!? 攻撃を紙一重で避けるわアタシとシグナムを軽くさばくわ……極めつけはあれだよ!!」
そう言ってヴィータは拓斗を指差して叫んだ。
「なんで、拓斗が二人いるんだよ!?」
そう、そこには拓斗が二人いたのだ。何もかもが同じ。違うところと言えばソウルの有無だろうか。
ソウルを持っていない方の拓斗は三人を見つめながら霧のように霧散し、消滅した。
「たしかに私たちとは根本的に違うようだ……」
「そうだな……だが、我らの戦い方は一つしかない」
「「あぁ!(おう!)」
結論が出て三人それぞれが少しの距離を取りながら構える。
――――群雲の騎士団と死神の戦いは続く――――
後書き
~あとがき雑談会~
作「今回はヴォルケンとの戦闘前編の回でした!」
拓「途中で切るなよ……」
作「いや、少し長くなってきたからさ……」
拓「まぁいいけどさ、で? なんで俺が二人いたんだ?」
作「それは次回でわかるよ」
拓「そうか、なら今回の次回予告は………はやて、頼む」
は「うん、了解や
戦闘が始まり、早くもシャマルが墜ちた
気を引き締めるヴォルケンの三人
だが、三人は拓斗の本当の実力を目の当たりにする
次回 魔法少女リリカルなのは ~黒影の死神~『黒影』」
作「それじゃあ次回に」
作・拓・は「「「トリガー・オン!!」」」
……え? なんではやてちゃんがいるの?
たっくんに呼ばれてきたんよ~
は? このためだけに呼んだの?
あぁ。はやても来たいって言ってたし……
それなら……いいのか?
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