DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第6章:女の決意・男の勘違い
第35話:価値観の相違
(結界の祠)
リュカSIDE
闇の洞窟を抜けると、魔界かと思える程禍々しい空気に占領された場所に出た。
『結界の祠』と言うらしいが、この土地の中央に小高い山がある。
そこから一際強烈な邪気が感じられるが、あそこが『デスキャッスル』だろうと、マリーが呟く。
そしてデスキャッスルの手前には堅牢な城塞が配置されており、その城塞とデスキャッスルを取り巻く様に強固な結界が張り巡らされている。
きっと中では親玉がパワーアップしようと頑張ってるんだと思うね。だから……
『ダメだ……お偉いさんは引き籠もりになっちゃった。諦めて帰ろうぜ』って提案したんだけど、『きっと四方にある祠を攻略すれば、この結界も消えてデスキャッスルに入れる様になるわ! みんなで頑張りましょう』ってマリーが言うから……
『じゃぁさ、手分けして祠に行こうぜ! 僕はビアンカ達とこの場で見張ってるから……敵が逃げない様に見張ってるから!』って意見を言ったのさ。
『きっと祠は強敵が待ち構えてるから、戦力を分散させる事無くみんなで攻略しよう!』ってウルフが俺の意見を無視。
その結果みんなでゾロゾロと四方の祠巡りをする羽目に……
3つめの祠攻略後、何か馬鹿みたいだなぁ……と思ったけど、それを口に出すとまた怒られるので言わなかったよ。代わりに『岬めぐり』を歌ったのさ。
でも顔に出てたみたいで、『戦力分散は危険なんだよ!』ってウルフに怒られた。
『その割に手こずってんじゃん! 戦力集中の意味無いじゃん!』
思わず言ってしまった一言だが、ちと失敗だったかもしれない。
だって『じゃぁ次の祠はお前が戦えよ! 強ぇーんだよ、何奴も此奴も!』とウルフに怒鳴られ、ビアンカまでもがそれに同意し、次は俺が戦う羽目になってしまった。
嫌だなぁ……
リュカSIDE END
(結界の祠)
ラピスSIDE
皆で力を合わせ、四方に位置する結界の祠を攻略して行く……
勿論、非戦闘員とリュカ・ビアンカは戦闘をしない。
南西の祠からスタートし、北西・北東と結界の塔を攻略した所で、飽きてきたのかリュカが歌い出した。
ここは魔界に近く、周囲の状況も我らの雰囲気すこぶる悪いのに、のんびりした感じの歌を歌い出した……
何よりリュカの表情が『敵倒すの遅いなぁ……』と言っていたので、腹に据えかねたウルフが『戦力分散は危険なんだよ!』と口では何も文句を言ってないのに反論する。
その為リュカも、
『その割に手こずってんじゃん! 戦力集中の意味無いじゃん!』
と流石に反論したのだが……
『じゃぁ次の祠はお前が戦えよ! 強ぇーんだよ、何奴も此奴も!』
とウルフの泣きの入った怒りに押され、最後の祠はリュカだけが戦う事になった。
そして今、嫌々な態度で祠の中を進むリュカと我々。
「あ~……やだなぁ戦うのぉ~……僕は平和主義者なんだよねー! 戦うの嫌いなんだよねー」
「うるせー、俺達は既に3回も激戦を熟してきたんだ。少しは休ませろ」
ウルフはリュカの弟子で部下で義息なはずだが、どうにも態度が大きく感じる。良いのか?
「休むんだったらさ、一端天空城へ戻ろうよ! 何で戦闘と同時進行なんだよ!?」
「お前が言ったんだろが! 『手分けしよう』って……だからリュカさんが戦って、俺等が休むんだ! 俺等が戦ってる時はリュカさんは休んでたんだから……」
「僕の言ってる“手分けする”とは違うんだよなぁ……解らないかなぁ?」
「解らないね、今は疲れてて思考回路が働かないから! 俺に解ってる事は、今回はリュカさんが戦う番だって事……だからサッサと戦って来いよ!」
この二人の口論を聞いてると、如何なる時でも笑ってしまう。
みんな疲れ切ってて口数も少ないのに、この二人だけは常に楽しそうな遣り取りを繰り広げる。
リュカの背中を祠内の管理者の所まで押すウルフを見て、何となく嬉しくなってくるのは何故なんだろうか?
「遂にここまで来おったか……」
祠の最上階に辿り着くと、そこには地を這う様な低い声で我らを出迎えるエビルプリーストの姿があった。
以前リュカにえぐられた左目を痛々しそうに包帯で包んだ姿で……
「何、アイツー!? 顔の左側を包帯で巻いてるよ……怪我してるの? じゃぁなかったら、中二病?」
「あ、貴様は!? お、お前が私の左目をえぐったのだろう!」
まさか忘れてる訳じゃないだろう……って言うか、中二病って何だ!?
「僕がえぐったの? ……ああ、リバーサイドを襲撃しに来たザコか! 憶えてるよ、忘れてないよ。本当だよ。そっか……あのときのザコか……ラッキー! 4つの祠で一番弱い奴に当たった」
どうやら本当に忘れてたらしく、記憶を呼び起こして歓喜を表すリュカ……しかし、エビルプリーストはザコではない!
「リュカ……奴の名はエビルプリースト! デスピサロ様の腹心だ。以前は侮って襲来したから問題なかったが、けして弱い相手ではないぞ!」
リュカの実力を過小評価する訳ではないが、相手を侮りすぎるのは間違いの元だ。だから私はリュカに注意を促したのだが……
「エ、エビル……エビルプ……長ーな名前! エビちゃんで良いよね? 今日からお前エビちゃんね!」
「エ、エビ……ふ、ふざけるな! あの時の私と同じだと思うなよ……」
その通りだ……ここは魔界に近く、奴の力も増大している。
「前回は100対1でボロ負けしたクセに、今回はこっちの方が人数は多いんだぞ! しかも前回は所用で居なかった伝説の勇者様も居る! 楽勝でハラショーだよ」
そうだけど……今回はリュカが一人で戦うんだろ?
「な、何!? 伝説の勇者様……?」
「そうだよ……ほら」
「あ、どーもー。只今ご紹介に与りました、天空の勇者シンです。山奥の村で魔族の襲撃から逃れ、ここまで来ましたー。でもご安心下さ~い……今回は俺の部下が一人で戦いますから、遠慮せずに全力で戦っちゃって下さい」
紹介されたシンは、リュカが一人で戦う事を強調して自己紹介を終わらせる。
とは言えエビルプリーストには最悪だろう……
リュカを相手に手を抜いて勝てない事は承知のはずだし、全力を出せば次の勇者との戦いに勝てなくなるかもしれない。
「つー訳で、いくよエビちゃん!」
リュカ的にザコと認定している奴が極度に怯んだ為、やる気を見せる様に杖を振ってエビルプリースト(確かに長いな……)に近づいて行く。
「ま、待て! わ、私の……負けだ! 降参する……」
不利を悟ったエビちゃんは、リュカのプレッシャーに押される形で降参し、我らとの戦闘を回避した。
それを聞いたリュカは満面の笑みでガッツポーズする。もしかして罠に嵌まったのは我々か?
ラピスSIDE END
(結界の祠)
ロザリーSIDE
良かった……無意味な争いを回避でき、皆が平和になれる解決をして……
後はデスキャッスルに居るピサロ様を説得しなければならない。
その為にもエビちゃんさんには結界を解いてもらう必要がある。
「じゃぁエビちゃん……結界を解除してよ。負けを認めたんだからさ」
「け、結界を解くのは問題ない……だが、もう既に手遅れなのだ! デスピサロ様は頼みの綱であったエスターク様を消失し、自らが進化の秘法でパワーアップし、世界を混沌に変える事を決意したのだ」
「えー!? だって進化の秘法は不完全なんでしょ? ほら……僕が黄金の腕輪を持ってるんだよ!? それなのに進化の秘法を使っちゃダメでしょ?」
「解っておる……私も止めたのだが、勇者が生きている事を知ったデスピサロ様は、焦って事を進められたのだ」
「そんな!? リュ、リュカさん……助けて下さい! 何とかピサロ様を助けて下さい!」
「わ、解ってるよぉ……つー訳で、どうにかするから結界解け!」
私の必死の訴えを受け入れてくれるリュカさん……本当に感謝です。
「勿論です……もう結界は解きました! ですが不完全とは言え進化の秘宝を使用したデスピサロ様を説得するのは不可能かと……」
「んな事は、やってみなきゃ解らないだろ! 取り敢えず奴の所に行って、何かしてみるよ!」
あぁ……ありがとうございますリュカさん。
気が付くと私の足下では、無機質な甲高い音が響き渡ってる。
ピサロ様を失う恐怖なのか、救えるかもしれない希望への安堵なのか、私の目から涙が止めどなく流れ落ちて行く。
「な、泣くなよぉ……」
「あの……私に一つ案がございますが……」
私の涙に狼狽えるリュカさんに、エビちゃんさんが打開策を提示しようと話しかける。
「それは『こしあん』『つぶあん』どっち?」
「は? あぁいえ、そういう事ではなく……私の持つ不完全な進化の秘法の知識と、貴方様が持つ進化の秘法を完全にする黄金の腕輪を合わせ、進化途中のデスピサロ様をお救いしようと思ってます。進化の秘法が完全になれば、デスピサロ様の進化もキャンセルさせる事が出来ますので……」
そ、そんな事が出来るんですのね!?
「リュカさん……是非それを実行して下さい!」
「えぇ~……これ僕のなんだけどぉ。それにぃ……」
「そんな事を言わず……お願いしますリュカさん!」
「そうだリュカ! デスピサロ様をお救いする方法があるのに、渋るとは何事か!? ロザリー様の為にも、黄金の腕輪を差し出せ!」
私は必死で泣き、ラピスさんも必死で怒鳴る。
シン様達からも不平の声が上がり、何も言わないのはビアンカさんを始めご家族の方々だけ……やはり家長であるリュカさんの意向には逆らえないのでしょうか? 哀しいです……
「わ、解ったよ……」
「リュカさん、良いんですか?」
皆さんの訴えに負けたリュカさんは、渋々だが腕から黄金の腕輪をはずし皆さんの不平を抑え込む。しかしウルフさんは納得してない様子です。
腕輪を渡す事を望む我々を見て、何かを訴えようとしている。
「だってウルフ……この時代の人々が挙ってそれを求めてるんだから、それには従わないとね!」
「まぁリュカさんがそう言うなら、俺には反対する理由はありませんけど……」
幾何かの間を置き何やら意味深な会話をした後、リュカさんは黄金の腕輪をエビちゃんさんに手渡した。
お二人は何を言いたいのだろうか?
私達の間に不安感が募って行く……
ロザリーSIDE END
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