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万華鏡

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第六十一話 日本シリーズその十三

「今も食べてるわ、けれどね」
「今はですか」
「とてもですか」
「そう、落合さんの時より美味しくないわ」
 その名古屋料理もだというのだ。
「どうしてもね」
「中日が今一つだからですか」
「やっぱり」
「名古屋だからね」
 先生の出身がそれで名古屋料理を食べるとだ、どうしてもドラゴンズの不調がどうにも気になって仕方なくというのだ。
「あの時はいつも美味しかったわ」
「まだあの解任が響いてですか」
「先生は」
「変な監督選んでくれたから」
 またフロント批判に入る、中日の。
「あの社長も辞めてよかったわ」
「その落合さんを解任したですね」
「あの社長ですね」
「嫌いな相手でもチームを強くしてくれるなら」
「いいってですね」
「考えるべきですね」
「しかも後任があれだったから」
 高木守道、彼への批判にもなる。
「最悪よ」
「心からですよね」
「そう思うんですね」
「本当にね。生え抜きにこだわっても」
 あまりそうしてもだというのだ。
「チームは強くならないわ」
「とてもですね」
「生え抜きがいつもいいとは限らないから」
「そもそも落合さんだってね」
 確かにロッテから来た、しかしそれでもだというのだ。
「生え抜きって言ってもいいから」
「それだけの実績がありますよね」
「長年中日の四番でしたから」
「巨人に行ったけれどね」
 巨人ではこれといって目立った活躍はしていない、最後に移った日本ハムで彼は有終の美を飾ってユニフォームを脱いだ。
「それでもね」
「中日ファンとしてはですか」
「よかったんですね」
「オレ竜は最高だったわ」
 実にだ、しみじみとした言葉だった。
「何度も優勝出来てね」
「安定した采配と育成で」
「まさに隙なしでしたね」
「見ているところが違うのよ」
 落合のそれはというのだ。
「細かいところまで見て考えてね」
「野球をしてるんですね、あの人は」
「そうした人が監督だったから」
「よかったのよ」
 名将、それに相応しかったというのだ。
「まさにね、ただね」
「ただ?」
「ただっていいますと」
「敵が多いのよね、どうにも」
 それが落合の難点だというのだ。確かに名将であるが誰にでも好かれる人物かというとそうではないというのだ。
「どうしてもね」
「そういえば落合さんって嫌いな人多いですね」
「実績は凄いですけれど」
「野球理論も立派で」
「結果も出してくれますけれど」
「どういう訳かね」
 先生も理由はわからない、落合に敵が多い理由は。
「落合さんはフロントでも嫌いな人がいるから」
「解任されてですか」
「あの人が監督になったんですね」
「それが痛手だったわ」
 先生は痛恨の面持ちだった、そのうえでの言葉だった。 
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