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戦国異伝

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第百五十九話 巨寺その三

「小田原城に比肩するかと」
「そこまでじゃな」
「それがし関東を旅したことがあります」
 信長の下に入る時にそうしたことがあるのだ、彼は忍の出身なので脚が速かったのだ。しかも丈夫であった。
「その中で小田原城を見ましたが」
「相当なものであるな」
「まさに巨城と呼ぶに相応しいです」
 それが小田原城だというのだ。
「町を堀と城壁で囲み」
「そうして護っておるな」
「あの城では到底」
 どうかというと。
「二万や三万の軍勢でjは攻められませぬ」
「だから武田も上杉も攻め落とせなかったな」
「鉄砲で攻めても」
 それでもだというのだ。
「攻め落とせるものではありません」
「そうじゃな」
「そしてこの寺も」
 滝川は石山御坊に顔を向けた、そして言うことは。
「そうおいそれと攻め落とせませぬ」
「だからじゃな」
 信長はここであらためて信行達を見て問うた。
「御主達もこれまで攻めなかったのじゃな」
「五万でも難しいと思いまして」
「それでなのです」
 信行と信広もこう信長に答える。
「周りを抑えるだけにしました」
「天王寺だけはどうにもなりませんでしたが」
 雑賀衆がいるからである。
「囲みjはしましたが」
「攻めるまでは」
 しなかったというのだ。
「そうしていました」
「これまでは」
「それでよい、あれではな」
 信長もまた石山御坊の巨大さ、堅固さを見て言う。
「五万ではな」
「やはり無理ですか」
「攻め落とすことは」
「竹千代や鬼若子がおってもな」
 彼等の家臣や軍勢がいてもだというのだ。
「とてもな」
「攻め落とせませんでしたか」
「やはり」
「うむ、無理じゃった」
 とてもだというのだ。
「やはりな」
「その竹千代殿と鬼若子は」
 ここで羽柴が信行に問うた。
「お姿が見えませぬが」
「摂津、河内、和泉を収める最後の仕上げに出ておる」
「もうすぐ戻って来る」
 二人はそれぞれ羽柴に答えた。
「徳川殿と鬼若子の力もあって何とか収められた」
「三国はな」
 その摂津、河内、和泉はというのだ。
「それで後はじゃ」
「天王寺だけじゃが」
「そして紀伊じゃな」
 信長は鋭い目になって言った。
「あの国も出来れば」
「攻め落とされますか」
「あの国を」
「出来れば天王寺だけで済ませてな」
 そしてだというのだ。
「返す刀で石山といきたい」
「では、ですか」
「紀伊は」
「まずは頭じゃ」
 そこを潰すというのだ。 
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