戦国異伝
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第百五十九話 巨寺その二
「本願寺の色は灰色ですな」
「そうじゃな」
「灰色の服の者達とはかなり戦いましたが」
「闇の服の者達とはか」
「その様な者はおりませんでした」
「それがしもです」
信行と同じく摂津等を抑えていた信広も答えてきた。
「そうした色の者達とは」
「会わなかったか」
「左様です」
そうだというのだ。
「闇というと黒ですな」
「そうじゃ」
「黒といえば上杉殿の色ですが」
「いや、ああした黒ではない」
信長はそのことは断った。
「ああした純粋な、五行の黒ではなくな」
「闇ですか」
「闇の黒じゃ」
まさしくそうした色だというのだ。
「そこにあれば何もかもが見えなくなりそうなな」
「ううむ、そうした色は」
信広もいぶかしむ顔で話す。
「見ておりません」
「そうか、おらんかったか」
「そうした者がいるとは」
信広は首を傾げさせた、そのうえでも言うのだった。
「少なくともここにはおりませぬ」
「わかった、ならよいがな」
「実はです」
平手が来て信行達に話してきた。
「殿はそうした色の服や旗の者達と戦ってきたのです」
「これまでか」
「兄上はそうされてきたのか」
「我等もです」
平手はこう信行に述べた。
「我等もまたその者達と戦ってきました」
「しかし御主達は違うか」
信長もまた言う。
「灰色の者達とだけか」
「はい、本願寺の」
「その者達とだけ戦いました」
「その様な闇の服の者達は」
「戦うどころか」
会ったこともないというのだ。
「それがわかりませぬ」
「どういうことでしょうか」
「一体全体」
「訳がわかりませぬ」
「わからぬのならよい」
信長もそれ以上は問わなかった。
「ここにおらぬのならな」
「左様ですか」
「それでは」
「うむ、では本陣に入りじゃ」
そしてだというのだ。
「正式な挨拶の後で軍議をしようぞ」
「わかりました、それでは」
「その後で」
信行と信広もこう応えた、そして。
信長と諸将は本陣に入った、そこから石山御坊がはっきりと見える。信長はその巨大な寺を見てこう言った。
「凄いのう」
「ですな、確かに」
「あれはまさに巨城です」
「あれではです」
「そう簡単には陥ちませぬな」
家臣達もそれぞれ信長に述べる、その巨大な寺を見つつ。
「城と変わりがありませぬ」
「水堀もありますし」
「壁も高く丈夫です」
「櫓もしっかりとしていて多いです」
「門もまた」
「あれはどうやら」
滝川も唸る様にして述べた。
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