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牙狼~はぐれ騎士~

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第八話 魔剣


第八話 魔剣





真夜中の美術館。

不気味な雰囲気を漂わせる展示された美術品の中心に・・・

ひと際輝く黄金の大剣が・・・

「!?」

それをちょうど巡回中の警備員が見つめた。





数時間前

「ふん!は!は!」

山小屋の庭で若葉に教えられた体術の修練をする闘真。いかに素早く相手の懐に潜り込むか訓練をしているとある出来事が浮かんだ。

それは前回の戦いで心滅獣身を起こさなかった事であった。

するとイルバが口を開いた。

『そういえば・・・お前破滅の刻印を刻まれた時も何ともなかったよな』

以前、仮面の男に胸に破滅の刻印という物を打ち込まれたのだが、闘真の場合鎧を召喚しても刻印が侵食することが無かった。その為侵食が進んだ騎士に変わってホラー討伐の任務が増えた。

だが最期の侵食の時のみ刻印は闘真の身体を蝕み刻印の効果そのものはあった。

「あの時・・・黄金騎士が居なかったら俺は死んでたな・・・」

『確かにな』

黄金騎士の心と強さを尊敬する闘真。風狼の鎧の謎を置いておいて・・・話題を変えた。

『・・・お前本気になった時の雄叫びは上げないのか?』

「あげないって・・・」

実は闘真は本気になった時に独特の雄叫びを上げるのだがそれを聞いたのは今のところ
それを聞いたのはパートナーのイルバと倒されたホラーだけである。

すると

「闘真~」

闘真の嫁である若葉が指令書を持って山小屋を訪れた。

「嫁じゃないって!従者だって」

「誰に言ってんだよ・・・とにかく指令書・・・」

若葉から指令書を受け取り魔導火を使うと魔戒文字が浮かび上がった。

「血に染まりし魔剣の陰我を斬れ・・・」

「血に染まりし魔剣・・・相当やばそうな相手だね・・・」

「大丈夫だよ・・・俺のお師匠の一刀両断ぶりで鍛えられたんだぜ?」

若葉に心配されると自分の中ではったりを決める闘真。

だが闘真には本来の剣が存在する・・・

闘真が出陣しようとすると若葉が闘真に魔戒刀を渡した。





数時間後

夜中の人気の無い美術館を訪れる闘真。薄暗く静かだがどうも気に入らない気配が漂っている。

美術館の奥へ進むと武器の間が存在しその中が気配の根源のようだ。

闘真が大きな扉に手をかけ大きく開け放つとそこには大きな黄金の剣を持った警備員の姿があった。

「・・・・・・・・・・」

黄金の剣を手にする警備員が闘真に気付くとイルバが叫んだ。

『闘真!奴がホラーだ?』

「え?憑依されたのか?」

『違う!』

「!?」

イルバが説明している最中に闘真に剣を振り下ろす警備員。咄嗟に避けると美術館に置いてあった逸品が見事に真っ二つになった。

「シャアアアアアアアアアアアア!!」

闘真が警備員の攻撃を魔戒棍で受け止めると胴を蹴り吹き飛ばすと警備員は吹き飛ばされてしまった。

剣を離すと意識を失う警備員。

『闘真!そいつは違う!』

「!?」

イルバに止められて魔戒棍を警備員の顔面すれすれで止める闘真。すると寝息を立てている警備員。憑依されておらず無事のようだ。

「どうなってんだ?」

『闘真!あの剣がホラーだ!!』

「!?」

イルバの指摘に闘真が吹き飛ばした剣を探すと剣は木製の人型の像の手の中にあった。

すると剣から粘液のような物が溢れ像の身体を纏わりつき自身の身体へと変換させた。

『シャアアアアアアアアアアアアアアア!!』

黄金の剣を持つ剣士のホラー。

『奴はホラー・ディルグル』

「ディルグル?」

『身体を持たずに何かに憑依しないと動けないホラーだ』

イルバの言葉に闘真が魔戒棍を構え直すとディルグルは闘真に向かって駆けた。

『シャアアアアアアアアア!!』

「く!」

ディルグルの一閃を受け止める闘真だがあまりの剛剣に足元が沈んでしまう。だが剣の軌道を逸らして脱出すると飛び掛かり渾身の若葉キックを繰り出しディルグルを悶絶させる。

するとディルグルは身体を起こして剣圧を放つと身体を捻って避けた闘真のコートの端を斬った。

「かまいたちとは芸が古いぜ!」

闘真が繰り出されるかまいたちを掻い潜りながら駆けるとディルグルと鍔迫り合いの状態になった。するとディルグルが語りかけてきた。

『フン・・・貴様中々ホネガアルナ・・・』

「なに?」

『俺ハ血を啜るために・・・斬ってきた・・・中でも剣を使うマカイキシはサイコウダッタゾ・・・あの悲鳴ハイマデも心地いい・・・人間も騎士も・・・所詮は俺達に食ワレルダケの・・・虫けらだ!!』

「!!」

あざ笑うかのようなディルグルの言葉に闘真はディルグルを蹴り飛ばし体勢を立て直した。

「貴様ぁぁぁ・・・」

闘真の瞳が獣のようになった時・・・魔戒棍を納め・・・怒りの剣を抜刀した!

その刃からは闘真の怒りが伝わってくる。

「・・・怒りで我を忘れる騎士か・・・騎士の誇りが「そんなものはどうでも良い!!」!?」

「俺はお前が許せない・・・だから斬る・・・貴様のような奴をのさばらせておくわけにはいかない!!」

目の前の理不尽な外道に対し・・・騎士の誇りも掟も捨て一人の男として戦う闘真が魔戒刀を正眼に構えた。

『ホぉ・・・変わった剣ダナ・・・!?』

ディルグルが魔戒刀を見た瞬間、闘真の姿が一瞬で消え一気に懐に入られた。

「ふぁやああああああああ!!」

独自の雄叫びから力任せに魔戒刀を打ち付けてくる闘真の一閃を受け止めると余りの衝撃に吹き飛ばされてしまい剣を突き刺して踏みとどまると、獣のように飛び掛かる闘真の追撃を受けた。

闘真の十字に斬り進む攻めの剣を受けながら下がるディルグルは闘真へ反撃の剣を繰り出すが、その剣に魔戒刀を打ち付けその反動を利用し後方にきりもみ回転しながら跳ぶ闘真。

距離を置いて低めの態勢の正眼に構える闘真。

魔戒騎士の様に華麗な剣とは程遠い荒々しく乱暴な剣に対しディルグルはこう称した。

『マルデ・・・邪剣・・・』

「ふぁやあああああああああああああああああ!!」

邪剣と称されると再び雄叫びを上げディルグルに斬りかかる闘真。鍔迫り合いになるとディルグルの剣を持つ手首を掴み取った闘真。

手首を抑えられたことで剣を振れなくなったディルグル。

すると

「ふぁやっ!ふぁやっ!!」

闘真は至近距離から魔戒刀で何度も斬り付けた。

『ギシャアアアアアアアアアアア!!』

余りの剣に苦しむディルグルは溜まらず闘真を蹴り飛ばし距離を開かせると黄金の魔剣を闘真に向けて突き刺した。

だが

「!!」

突きの軌道を見切った闘真が剣の平を滑り至近距離を取ると・・・

「ふぁやあああああああああああああああああああ!!!」

渾身の一閃がディルグルの身体を両断した。

ディルグルが剣のみとなり撤退しようとすると闘真が再び飛び掛かり上段の一閃が刀身を真っ二つに折った。

切っ先が消滅しディルグルの柄が地面に落ちたが美味い具合に美術館の影に隠れ外への排気口へ抜けて行った。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・!?」

ディルグルを仕留めそこなった闘真。すると何かを感じ取り魔戒刀を納めるとそこへ出てしまった。



そして柄だけとなり屋上へ這い出てくるディルグル。

『グブ・・・あのギジベエ・・・死なん・・・チヲススルマデハ・・・』

ディルグルが傷を癒そうと撤収を試みようとするとその柄を踏みつける魔法衣の男の姿が・・・

『ギザバ・・・』

「そんなに血が欲しいか?・・・なら・・・くれてやる・・・」

男がディルグルの柄を拾い上げると自らに突き刺した。

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

闇夜の美術館の屋上で断末魔の叫びを上げるディルグルが絶命すると男の手にディルグルの剣と同じ銀色の刀身の剣が握られていた。

「この魔剣は・・・石動闘真を斬るのにふさわしい・・・」

そう呟き巨大な魔剣を担ぎその場を去っていくのだった。





一方

イルバが気配が消えディルグルが絶命したことを告げた。

不完全とはいえ任務が終わってしまい帰路に着く闘真なのだがその顔はすぐれない。

『闘真・・・どうした?・・・らしくねえぞ』

空気に耐えられずイルバが闘真に語りかけると闘真は自分の思いをつげた。

「俺はあの時・・・怒りに流されて戦ってた・・・たった一つ・・・敵を倒す事だけを考えて・・・邪悪なる剣・・・邪剣か・・・」

自嘲するように言う闘真に対しイルバが呆れて言った。

『反省できるだけ大したもんだよ』

「え?」

『本当の馬鹿は後悔もしないで自分の間違いを認められない奴だ・・・囚われすぎるのも良くねえが・・・後悔しない奴の方が愚か者だぜ・・・それが出来るだけお前の方が良い奴だよ』

「イルバ・・・」

『お前自分の称号が何だか忘れたのか?』

「俺は・・・旋風騎士『違う・・・お前ははぐれ騎士石動闘真だ』はぐれ騎士」

イルバの『はぐれ騎士』という称号に驚く闘真。

『お前は普通の騎士じゃない・・・はぐれ騎士だからこそできることがあるんだ・・・・・・お前が自分を見失わない限り邪剣も正しい剣に出来るって・・・俺は信じてるぜ・・・人であるが故の称号のはぐれ騎士のお前ならな』

「人であるが故の称号・・・か・・・ありがとうな」

自分の中の嫌悪感が軽くなったのか闘真は若葉たちの待つ山小屋へと帰って行くのだった。

人であるが故のもっとも誇り高き称号を胸に刻みながら・・・
 
 

 
後書き

イルバ
『闘真の知り合いの騎士ってのは変わった奴が多い・・・復讐に燃えるのもその一人だ!


次回!鬼


怒りに燃える騎士は今鬼となる!』

 
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