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ドリトル先生と京都の狐

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第五幕その十一

「だからじゃよ」
「今回はですか」
「うむ、速やかに進んだのじゃ」
「皆は活躍してくれましたが」
「先生はというのじゃな」
「はい、何もしていませんですけれど」
「しかしその皆が集まっておるのは先生を慕ってじゃよ」 
 そしてだというのです。
「それじゃ」
「では今回のことは」
「無論動物の皆がいてこそじゃ」
 ことを成し遂げられたのは事実だというのです、ですがそれ以上にだとです。長老は先生に対してお話するのです。
「しかしその皆も先生がいてこそじゃ」
「僕は何もしていないですよ」
「いやいや、だから人徳じゃ」
「その僕の人徳を慕ってですか」
「集まっているからじゃよ」
 こう先生に言うのです。そして動物達も先生に言います。
「うん、僕達だってね」
「先生の為なら火の中水の中だよ」
「それに先生僕達にいつも優しいし公平だし」
「友達として付き合ってくれているからね」
 だからだというのです。
「一緒にいるんだよ」
「今でも今もこれからもね」
「そうしているんだ」
「こうしてね」
「その通りじゃ、まさに今回どうにかなったのは先生が京都に来てくれたからじゃ」 
「そうですよね、先生でないと」
「皆一緒にいないしね」
 このことはトミーと王子も言います、まさに先生であればこそです。
「今回のことはとても」
「出来なかったよ」
「その通りじゃ。わしも先生が気に入った」
 そうだというのです、長老も。それで先生にお話するのです。
「だからまた京都に来た時はな」
「その時はですか」
「そうじゃ、精一杯おもてなしをするぞ」
 そうするとです、長老は先生に約束しました。
「だからまた来てくれよ」
「そうですか、何か悪いですね」
「いやいや、先生は今回の恩がある」
 そのです、お母さん狐のことで。
「だからこそじゃ」
「僕よりも動物達に」
「そこじゃ、さらに気に入った」
 長老は先生に今の言葉にもびしっと指摘します、まさにその言葉に先生の人徳そして人間的に魅力があるというのです。
「そこでそう言うのがよいのじゃ」
「そうですか」
「その謙遜、謙遜は過ぎるといやらしいが美徳なのじゃ」
「ですが本当に」
「わかっておる、当然動物達もじゃ」
 彼等のことも約束する長老でした。
「存分にもてなしてもらう」
「先生、よかったですね」
 トミーは長老に約束してもらった先生に明るい笑顔で言いました。
「長老さんに迎えてもらって」
「先生っていつもこうなんだよね」
 ここで王子はこう言ったのでした。
「そこにいる人達に好かれるんだよね」
「先生だからね」
「そのことは当然だよ」
 動物達も王子と同じ意見です、勿論トミーとも。
「後は結婚相手だけだね」
「その人が見つかれば最高だよ」
「そのことは言わないでね」
 結婚のことになるとです、困ったお顔で応える先生でした。このことについてはどうしても弱ってしまうのでした。
「気にしてるから」
「ほう、先生はまだ独身か」
 そう聞いてです、長老は今度は何処か楽しそうな笑顔になりました。その笑顔で先生にこんなことを言いました。
「京都のおなごは存外したたかだから気をつけるのじゃよ」
「そうなのですか」
「そうじゃ、京都のおなごは強いぞ」
 イギリス人にはよくわからないことです、そこまで日本のことを詳しいイギリス人はあまりいません。どの地域の女の人の気質までは。
「あと大阪のおなごはおばさんじゃ」
「おばさんですか」
「そうじゃ、おばさんじゃ」
 それが大阪の女の人だというのです。
「十八の花盛りでもな」
「何か凄いですね」
「日本のおなごはよい」
 しかし、というのです。
「伴侶とするのにもな」
「そうなのですね」
「しかしじゃ、京都のおなごはな」
 気が強いというのです。
「芯が強い、伴侶とするなら注意せよ」
「わかりました、とはいいましても」
「その伴侶がじゃな」
「僕はどうも縁がないので」
 長老にもこう言う先生でした。
「どうなるかは」
「しかし見付けられよ、先生も」
「そうすべきですか」
「人は結婚してからがはじまりじゃ」
 その人生のだというのです。
「だからじゃ、先生もな」
「じゃあそちらの努力も」
「されよ」
 こう言うのでした、先生の結婚のことは京都でもお話されるのでした。 
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