牙狼~はぐれ騎士~
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第七話 号竜
前書き
用語解説
魔戒刀
本作のキーとなる武器である。製作者の礼羅曰く人の心に対して物凄く素直な剣である。闘真の様に感情の力を純粋且つ心ある力として使うことが出来る者が持てば鬼神の様な力を発揮するが、怒りで自分の欠点をむき出しにし、自滅してしまう者や心の修練を怠った者に対してはただの重く扱いづらい剣でしかない。後者のような物が使いこなすためにはより心の修練を積まなければならない。
種類は三種類あり、闘真の持つ脇差・礼羅が自身で持つ小太刀があり、主に実戦で使われるのは脇差であり、小太刀は旅の護具として役割がもっぱらであるが実戦で使えないわけではない。
そして最も扱いづらく最も使い手を選ぶ剣として『太刀』が存在するが今のところその姿を見た者はおらず礼羅も新たに製作するつもりはない。
第七話 号竜
夜の倉庫街
静かな空気が漂っている。
そう思われるが・・・
「!!」
凄まじい衝撃音とともに吹き飛ばされる闘真。
「がは!」
地面に叩き付けられる闘真は唸りながら立ち上がると、巨大で堅い皮膚を持つホラー・ジャグルの姿があった。
『ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
ジャグルが咆哮と共に巨大な腕を振り下ろすと咄嗟に回避する闘真は空中で体制を立て直すと天に向かって円を描いた。
光が差し込み闘真の身体を鎧が覆った。
砂時計がカウントダウンを始めると風浪剣を構えるとジャグルに向かって突き刺すが効果が無い。
『なに!?』
『闘真!こいつ・・・お前の剣じゃ貫けない!』
『!!?』
ジャグルに振り回され闘真が振り落されると地面に着地した。
すると
「!!」
闘真の援護に着た斬十郎がジャグルに一閃を浴びせた。だが痛みを押して斬十郎を吹き飛ばすジャグル。
「ぐ!」
体勢を立て直して着地する斬十郎。
『斬十郎の一閃を浴びて耐えやがった』
『闘真・・・悔しいが今は打つ手がないぜ・・・』
『いや・・・ある!!』
闘真が立ち上がりある決意をすると斬十郎に向かって叫んだ。
『斬十郎!・・・何があっても俺を止めてくれよ!』
『闘真!』
「お前まさか!」
闘真の考えた策それは・・・
『心滅獣身を使う・・・』
『やめろ!鎧に食われるぞ!』
『あいつを倒す為ならやる!!』
闘真の行動を止めようとするイルバだが譲らない闘真。心滅獣身を起こせば鎧に食われ元の人間に戻れない可能性もある。だが斬十郎は・・・
「わかった・・・俺が止める・・・お前・・・精々食われるなよ」
『ああ!!』
『ち・・・勝手にしろ』
止めたイルバだが未熟な闘真にとっては心滅獣身を使わなければ倒せないほどの相手であるジャグル。
砂時計が徐々に0を指そうとする間、闘真は只管ジャグルの攻撃を避け続けた。
そして砂時計がカウントダウン0を指した。
『!!』
風狼の鎧が浅黒く変化し始めると心滅獣身を起こす・・・と思われたが・・・
『ぐ!う!!』
突如闘真が膝を付き両手を付くと心滅獣身を起こすことなく鎧が強制解除されてしまった。
「!?・・・どうなってんだ!?」
『まさか』
「・・・嘘だろ」
心滅獣身を起こそうとしていた闘真はもちろんのこと、その場に居合わせたイルバと斬十郎も驚きを隠せない。
魔戒騎士の鎧は99.9秒たつと心滅獣身を起こし絶大なパワーを引き出す暴走形態になる。
だが闘真の鎧はそれを起こすことなく強制解除されてしまった。
万事休すとなった闘真にジャグルが咆哮を挙げながら襲い掛かる。
その時
『ゴオオオオオ・・・』
ジャグルが何かに恐れをなしたかと様に立ち去ってしまった。
「どうなってんだ?」
「・・・分からん」
闘真と斬十郎が立ちすくみその場を去ると入れ替わる様に現れる魔法衣の男の姿が・・・
闘真の山小屋
「いてて・・・」
ダメージがかなり大きく身体に包帯を巻いているとジャグルについての話題になった。
『あの野郎・・・かなり固い皮膚をしてるぜ・・・お前の風浪剣の一撃だけじゃ破れないんじゃねえのか?』
「なに?」
『魔導馬さえあれば・・・』
イルバの言う魔導馬とは100体のホラーを倒した者に与えられる相棒である。しかし正式な魔戒騎士ではない闘真はそれを得ることが出来ない。今までの戦いで100体は倒しているのだが、正式な魔戒騎士ではない為与えられることを許されないのだ。
その時だった
「お困りのようだね・・・闘真」
「礼羅?」
気付けば縁側の片隅に立つ礼羅の姿が、闘真が振り返ると礼羅はバルチャスの駒を投げた。
それを受け取る闘真。
「何だこれは?」
「とりあえず投げてみな」
礼羅の言う駒を通り投げてみると駒は光り輝き一つの馬を生み出した。
『!!』
凄まじい咆哮と共に現れる頭部に刀の様な一角を持つ魔導馬の様な存在が舞い降りる。
「こいつは・・・」
「あたしが作った【限りなく魔導馬に近い号竜】・・・全てのホラーを薙ぎ倒す・・・名は薙刀・・・」
薙刀と呼ばれた号竜を見上げる闘真。
すると跨ってみようと思いその背に乗ろうとすると・・・
『!!』
「うわ!!」
薙刀は暴れだし闘真を振り落してしまった。地面に叩き付けられる闘真が蹲ると礼羅が歩み寄り呟いた。
「あいつ・・・誇り高き号竜だからね・・・自分が認めた奴じゃないと背に乗る事を許さないんだよ」
「え?」
「ま・・・あいつを乗りこなすのが試練だと思って頑張りな~」
無責任に礼羅がそう言うと薙刀を置いていき去っていってしまった。
その夜
「うわああああああああああ!!」
闘真が薙刀の背に乗ろうとするが薙刀は闘真を振り落してしまう。怪我をした身体に追い打ちをかけられる闘真。
だが諦める事無く薙刀を乗りこなそうとするが薙刀は闘真を認めずその背に乗る事を許さない。
「ちきしょう・・・」
自分の力不足を嘆く闘真。
正式な魔戒騎士ではない為なのか闘真を認めようとしない薙刀。
すると闘真は違う行動に出た。
「薙刀・・・俺を認めないならそれでも良い・・・けど・・・それでも頼む・・・俺に力を貸してくれ」
『?』
何を血迷ったのか薙刀に向かって頭を下げる闘真。その光景に戸惑いを隠せない薙刀。
「薙刀・・・俺はあいつを倒さなくちゃならない・・・あいつの為に誰かが泣くなら・・・俺は戦う・・・頼む・・・力をくれ」
闘真は薙刀に向かい頼み込むが薙刀はそれでも力を貸そうとしない。
するとイルバが叫んだ。
『闘真・・・奴が出た・・・今回は他の騎士に頼んだ方が・・・』
「!!」
すると闘真は頭を上げ魔戒棍を腰に下げた。
「もう頼まない!!」
『!?』
突然のことに首を傾げる薙刀を睨みつける闘真。
「お前なんかに頼らない!・・・俺は自分自身の力で戦う!!・・・そして・・・必ず生きて帰ってやる!!」
『・・・・・・・・・』
強い意志を宿しホラー・ジャグルの元へ向かう闘真。自分自身の力で相手と戦う覚悟を決めた男の背を見た薙刀は・・・
昨日の倉庫街
「・・・・・」
男の覚悟を決めた闘真が魔戒棍を構えジャグルを待ち構えると、凄まじい足音共に現れるジャグルの姿が・・・
『ブオオオオオオオオオオオオオオ!!』
ジャグルが咆哮を挙げ闘真の息の根を止めるべく襲い掛かると闘真の渾身の飛び蹴りがさく裂した。
「!!」
だがジャグルはそんな蹴りを押し切り投げ飛ばすと再び巨大な腕で闘真の身体を叩きつけた。
「!!」
凄まじいダメージを負う闘真だが立ち上がり魔戒棍を構える。前回のダメージが残っている闘真では確実にやられてしまう。
『闘真!無茶だ!!』
「俺は・・・誰かの力に頼れないなら・・・自分の力で戦う!・・・目の前のホラーに尻尾巻いて逃げるなんてごめんだ!」
『馬鹿が・・・』
イルバの制止も聞かずに闘真がジャグルに突撃しジャグルの攻撃が直撃するその時だった。
『!!』
凄まじい咆哮と共に薙刀が割って入り闘真への攻撃を阻止した。
「お前・・・」
薙刀は闘真の元へ舞い降りその眼を見つめた。
そしてその背を闘真に向けると意志が流れ込んできた。
誰かの力に頼れなくても、それでも自分自身の力で立ち向かう強靭な意志を持った一人の男に誇り高き号竜はその背を許した。
その意思を感じ取った闘真が薙刀の背に跨り天に向かって円を描いた。
「!!」
旋風騎士・風狼となった闘真が薙刀を駆りジャグルに向かって突撃した。
薙刀の一角がジャグルに突き刺さると闘真の狼風剣の一閃が繰り出されるがあまり効果が無い。
だが薙刀の力が合わせられた事により斬れずとも吹き飛ばす勢いが加えられる。
『ブオオオオオオオオオオオオオオ!!』
力負けし始めるジャグルが苦し紛れに薙刀を吹き飛ばすとイルバが何かを感じ取った。
『闘真!一撃で決めろ!』
『一撃?』
『狼風剣と薙刀の力を合わせるんだ!』
『よし!!』
礼羅の言い分を忘れていた。薙刀は限りなく魔導馬に近い号竜。即ち魔導馬じゃない。
闘真が薙刀の背から降りると薙刀は跳躍し各部が折りたたまれると薙刀の両肩に狼風剣が合体し巨大な弓となった。
・・・破魔風刃弓・・・
『!?』
『うわ・・・ビックリ好きな礼羅のやりそうな物だね・・・』
イルバが驚きの声を上げると闘真が破魔風刃弓を構えると光が駆け巡り薙刀の頭部の刃に集められる。
『ブオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
ジャグルが咆哮を挙げ突進すると闘真は狙いを定め光の矢を放った。
『!!』
ジャグルの胸を光が貫き巨大な風穴を開けると消滅するジャグル。
そして戦いの終わりとなり鎧が還って行くと薙刀も元の形態に戻り更にバルチャスの駒へと戻った。
駒を拾い上げる闘真は一言つぶやいた。
「よろしくな・・・薙刀」
そう言うと闘真は薙刀の駒をコートにしまうと次なる戦いの場へ赴いた。
その背を見つめる男の姿に気付かず・・・
後書き
イルバ
『さて次のホラーは・・・ん?剣が具現化したホラーだと?こいつは剣で戦うしかなさそうだぜ・・・
次回!魔剣
ホラーの魔剣と闘真の邪剣・・・勝つのはどっちだ?』
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