ハイスクールD×D 新訳 更新停止
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第2章
戦闘校舎のフェニックス
第54話 頂上決戦です!
前書き
二巻の話もいよいよクライマックスです。
俺は今、会場の外、中庭らしきところにいた。
近くには千秋達や木場達、会長がいた。
周りにはパーティーに参加していた貴族達もいた。
そして、上空には映像が映し出されていた。
映像ではレーティングゲームの時と同様の異空間に作られたフィールドでイッセーとライザーが対峙していた。
そして、フィールドに部長の兄である魔王、部長、ライザーの妹の顔が映し出された。
あのフィールドでは三人の顔と音声が映し出されるようになっていた。
『「では、始めてもらおう」』
魔王の開始宣言により戦いの幕が開かれた。
『「部長、十秒でケリをつけます!」』
(……十秒…)
おそらくあれは勝利宣言ではなく、何らか制限時間(タイムリミット)を表す数字だろう。
『「お兄様を十秒ですって!正気でいってるのかしら!」』
ライザーの妹がイッセーの正気を疑っていた。
『「ふん。ならば俺はその減らず口を五秒で封じてやる。二度と開かぬようにな」』
そう言って、ライザーは炎の翼を広げて飛翔する。
『「部長、プロモーションする事を許可願います!」』
部長は何も言わずに頷く。
『「プロモーション 女王(クイーン)!!」』
『「無駄だ!」』
ライザーは炎を飛ばすがイッセーはそれを避け、高々と告げる。
『「部長!俺には木場みたいな剣の才能はありません、朱乃さんみたいな魔力の天才でもありません、小猫ちゃんみたいなバカ力もないし、アーシアの持ってるような素晴らしい治癒の力もありません!それでも俺は最強の兵士(ポーン)になります!部長の為なら俺は神様だってぶっ倒してみせます!」』
高々と告げるイッセーの籠手の宝玉がどんどん輝きを増していく。
『「輝きやがれ!オーバーブーストッ!!」』
『『Welsh Doragon over booster!!!!』』
その音声が発せられた瞬間、イッセーを赤い閃光が包み込む。
光が止んだその場にいたのは、赤い鎧を身に纏っていたイッセーだった。
その全身鎧(プレートアーマー)はまるでドラゴンの姿を模しているようだった。
『「これが龍帝の力!禁手(バランスブレイカー) 赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)だ!」』
禁手(バランスブレイカー)、禁じられた忌々しい外法か。
「俺と取り引きしてくれ」
『面白い。覚悟はあるのか、小僧?』
「うるせえ!やるのか、やらねえのか!」
『言ったはずだ。犠牲を払うだけの価値を与えてやるとな。ただし覚えとけ。カウントⅩだ。それ以上は肉体がもたない』
「十分だ。それだけあれば…」
『「奴を殴り飛ばせるっ!!」』
『『Ⅹ』』
イッセーは飛び上がり、魔力の塊を撃ち出す。
『「ぐっ!?」』
ライザーは慌てて避ける。
フィールドに魔力が当たった瞬間、激しい爆風がフィールドを包む。
避けたライザーの下へ、イッセーは背中の噴出口から魔力を噴き出させ、ライザーに突貫する。
『「ここだっ!!」』
『「うぉっ!?」』
『『Ⅸ』』
ライザーは間一髪のところで避ける。
避けられたイッセーはそのままフィールドに突っ込む。
上手く減速できなかったようた。
『「なんだ!この力と速さは!」』
ライザーが驚くのも無理はない。
それだけ、今のイッセーの力と速さは驚異的なものだった。
しかし、イッセーはこの短時間でどうやってあれだけの力を手に入れたんだ。
ましてや禁手(バランスブレイカー)をだ。
ゲーム中に…いや、あの時手に入れた力は譲渡だけだった。
つまり、イッセーが目覚め、ここに来るまでの間に手に入れたと言う事になる。
(……イッセー、お前は一体何をやったんだ…)
俺が訝しげんでいる間も激しい戦闘が行われていた。
『「本当に不愉快なクソガキだ!!今の貴様はただの化け物だクソガキ!!」』
今のライザーはイッセーを恐れ始めていた。
いや、もっと前にライザーはイッセーに恐怖を抱かされていた。
ゲームの最後、ライザーは突然激昂し、イッセーを殺そうとした。
ライザーはあの時、イッセーの全く衰える事のない戦意がこもった目で真っ正面から見られ、畏怖した。
その事にライザーは怒ったのだ。
今もイッセーの強大な力に畏怖し、その事にイラついていた
『「火の鳥と鳳凰、不死鳥(フェニックス)と称えられた我が一族の業火、その身で受け燃え尽きろ!!」』
『『Ⅷ』』
『「テメエのチンケな炎で俺が焼かれる訳ねえだろ!!」』
炎を纏ったライザーと赤い鎧を着たイッセーが激突し、赤いオーラと炎がフィールドを縦横無尽に駆け巡る。
『「ぐわっ!?」』
力の激突を制したのはライザーで、イッセーはフィールドに叩きつけられた。
『「……鎧がなかったら…これがあいつの力だって言うのか…」』
『『Ⅶ』』
『「怖いか!俺が怖いか!お前は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)がなければ、ただのクズだ!」』
ライザー・フェニックス、ここまでとはな。
「……イッセー兄…」
「……信じろ、あいつを…」
不安そうに、イッセーを見ている千秋に、ただ、信じろと告げる。
『「はぁぁぁっ!!」』
『「でやぁぁぁっ!!」』
イッセーは籠手で、ライザーは炎を纏わせた拳でお互いに殴りあった。
『『Ⅵ』』
『「……ぐ…ごふぁっ…」』
イッセーの兜から吐血による血が吹き出た。
相討ち、だが、ライザーには再生の力が…。
『「ふふ!その程度…がはっ!?…」』
(なっ!?)
ライザーも吐血をした。
その事実にこの場にいる全員が驚愕していた。
吐血すると言う事はライザーの再生の力が働いていないと言う事になる。
『「……き、貴様…何をした…っ!?…」』
ライザーがイッセーの左腕を凝視して、驚愕していた。
イッセーの左腕をよく見ると、何かを持っていた。
(っ!?あれは!)
『「……十字架…」』
そう、イッセーが持っていたのは十字架であった。
『「ぐあっ!?」』
『『Ⅴ』』
イッセーはフィールドの壁に叩きつけられ、そのままフィールドに倒れ込むが、すぐに立ち上がる。
『「……十字架だと…」』
ライザーはフィールドに降り立ち、膝を着く。
『「……うちの僧侶(ビショップ)は元シスターでね…奥にしまい込んでたのを、ちょっと借りてきたのさ…さすがのあんたでも、神器(セイクリッド・ギア)で高めた聖なる力は堪えるようだな!…」』
『『Ⅳ』』
確かに、いかに不死身とは言え、悪魔である以上、聖なる力は効くだろう。
「何で悪魔のイッセーが十字架を持てるのよ!」
「俺にも分からねえよ!」
燕に言い寄られるが、正直、俺にも分からなかった。
神器(バランスブレイカー)と言い、十字架と言い、分からない事が連続で襲ってきたせいか、頭の中が軽くパニックなっていた。
(……一体どうなっ…待てよ…)
俺はふと、ある事を思い出す。
それは、ここに来る前にイッセーの左腕から感じた異様な気配…。
(まさか!)
俺はもう一度、イッセーの左腕をよく見る。
『……バカな…十字架は悪魔の体を激しく痛め付ける…いかにドラゴンの鎧を身に着けようと、手にする事自体…っ!?…』
ライザーがイッセーの左腕を見て、何かに気付いた。
俺も気付いた。
『「まさか、貴様、籠手に宿るドラゴンに自分の腕を!?」』
『『Ⅲ』』
『「ドラゴンの腕なら悪魔の弱点は関係ないからな!!」』
籠手に隠れて分からなかったが、よく見ると、籠手の隙間から見られた左腕が人のものではない異形のものになっていた。
そう、イッセーの左腕はドラゴンの腕になっていたのだ。
「……この腕は…もう俺の腕じゃないんだ…」
「え?」
「……だから…ほら…十字架だって…掴めちまう…」
「……っ…」
あの時、私はただ、涙を流し、黙っている事しかできませんでした。
そして、黙って見送る事しかできませんでした。
でも、私は信じています。
自分の腕を差し出してまで、そんなイッセーさんが負けるはずない。
必ず勝って、部長さんを連れ戻してくれます。
「……っ…」
イッセーが自分の腕を差し出して力を得ていた事実に千秋は涙を流していた。
鶇と燕は何かを思い出している様子だった。
おそらく、昔の事だろう。
今のイッセーに身を挺して自分達を守ってくれていた当時のイッセーの姿を重ねているのだろう。
『「正気か貴様!そんな事をすれば、二度と戻らないんだぞ!!」』
『『Ⅱ』』
『「それがどうした!!」』
『『Ⅰ』』
『「たかが俺の腕一本、部長が戻ってくるなら安い…取り引きだぁぁぁっ!!」』
イッセーはライザーに向かって飛び出す。
ライザーは完全にイッセーの気迫に圧倒されて、動けないでいた。
『「うおぁぁぁぁっ!!」』
『『Count up』』
『「え?え?あ?うわっ!?」』
無情なタイムオーバー宣言の音声が発せられ、鎧が消失し、イッセーは突然の損失感に呆気に取られ、地面に倒れ伏してしまう。
「そんな!あとちょっとだったのに!」
千秋が悲嘆する。
「……ここまでなの…」
燕も悲観的になっていた。
「……イッセー君は頑張ったよ…もうこれ以上戦わなくていいよ…」
鶇もこの有り様だ。
三人とも、イッセーが自分の腕を犠牲にした事実を知り、目の前の状況を見て、完全に悲観的になっていた。
木場達も悔しさに拳を握り絞めていた。
周りの貴族達の顔は完全に決着が着いたと考えてる顔をしていた。
『終わったな』
ドレイクが話し掛けてきた。
『残念だったな。ま、よくやったじゃねえか。悔いはねえんじゃねえのか?んじゃ、賭けは俺の…』
(何が終わったんだ?)
『は?』
ドレイクが素っ頓狂な声を上げた。
『……いや…あいつらの戦い…』
(まだ終わってないだろ?)
『は!?お前、まだあいつが勝てると思ってんのかよ!?』
(イッセーはまだ諦めてないぞ?)
『それ以前にもう詰んだだろこれ?』
(いいから、もう少しぐらい待てよ)
『………。わぁったよ。この戦いが完全に終わるまでが賭けの内容だからな』
ドレイクはそれ以降、口を挟まなくなった。
自分でも不思議なくらい、俺はイッセーが負けないと信じていた。
『残念ながら時間切れだ小僧』
(ふざけるな!あと少しだってのに!今度は何を支払えばいい?目か?足か?何でもくれてやる!!)
『お前の今の基礎能力では、これが限界だ』
(……俺が弱いからって事か…クソォッ…何で俺は肝心なところで…)
『解除する瞬間、僅かだが、力を宝玉に移せた。だがそれは一時的な物。残念ながら、フェニックスの再生能力に対抗するには及ばないだろう』
(でも!それでも俺は…)
『「……絶対に諦めねえ…ぐっ!?…」』
未だに諦めず、立ち上がるイッセーの胸ぐらをライザーが掴んで持ち上げる。
ライザーは鎧が消えた事をいいことに、余裕を見せ始めていた。
『さて、そろそろ眠ってもらおうか!目覚める頃には式も終わってるだろう…』
『「………まだだ……」』
『「あ?」』
『「……火を消すには…水…だよなぁ!…」』
イッセーは懐から水の入った瓶を取り出し、ライザーに見せ付ける。
「聖水!?」
木場が瓶に入っている液体の名称を驚愕しながら口にした。
「ですが、ライザー程の悪魔に聖水程度では…」
会長の言う通り、上級悪魔に聖水はそんなに効果が無いらしい。
周りの貴族達もそれを分かっているのか、イッセーの行動に嘲笑していた。
千秋達や木場達も訝しげに見ていた。
確かに、効かないだろうな、イッセーの左腕にある物が無ければだがな。
どうやらライザーは気付いたようだが、既に遅く、イッセーは口で瓶の蓋を取って、ライザーに聖水を浴びせていた。
『「赤龍帝の贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)ッ!!」』
『『Transfer!!』』
聖水の聖なる力が強化された。
『「なっ!?ギャァァァッァァッ!?!?グゥッ!?ぐっ!?あっ!?アァッ!?アァァァッァァッ!?」』
ライザーは顔を手で押さえ、激しく絶叫する。
と言うか、見ているこっちの顔が痛くなってきた。
何気にえげつない事をやる親友の行いに顔をしかめてしまった。
「うわ~、痛そう~」
「……痛いってレベルじゃないと思います」
呑気に言う鶇に塔城がツッコミを入れていた。
「ライザーの炎が!」
木場の言う通り、ライザーの炎の勢いが衰えていた。
「強化された聖水が、体力と精神を著しく消耗させているのでしょう」
「灰の中から復活する不死鳥(フェニックス)でも、精神だけは瞬時に回復できませんもの」
『精神?』
「心までは不死身じゃないって事だ。その点で言えば、イッセーは圧倒してるな。あの諦めの悪さは並大抵の精神じゃできないだろうからな」
『……確かに…』
おお、満場一致だった。
『「……………」』
ライザーは無言で震えながら立ち上がり、震える手に炎を集め始めた。
『「アーシアが言っていた!十字架と聖水が悪魔は苦手だって。それを同時に強化して、同時に使ったら、悪魔には相当なダメージだよな!」』
『「っ!!」』
炎を飛ばすが、イッセーはジャンプして避ける。
『「木場が言っていた。視野を広げて相手を見ろと!」』
イッセーは着地すると!十字架に残りの聖水をかける。
『『Transfer!!』』
『「朱乃さんが言っていた。魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集める!意識を集中させて、魔力の波動を感じればいいと!」』
十字架と聖水を同時に強化し、腕を前に突き出す。
『「小猫ちゃんが言っていた!打撃は中心線を狙って、的確に抉り込むように打つんだと!」』
イッセーは木場達の教えを高々と復唱する。
おそらく、あれには、ゲームで散って無念だった木場達の思いを込めて言っているのだろう。
イッセーの復唱に木場達は笑みを浮かべていた。
イッセーの気迫にライザーは焦り出す。
『「ま、待て!?分かっているのか!この婚約は悪魔の未来の為に必要で、大事なものなんだぞ!お前のように何も知らないガキが、どうこうするようなものじゃないんだ!!」』
説得のように見えるが、あれは完全に命乞いのようなものだった。
『「難しい事は分からねえよ!親友が言った!ここから先は、俺の道だ、何も考えずに突っ走れと!」』
(おい!俺の言葉まで高々と復唱するなよ!?うっ!?……皆にめっちゃ見られてる…)
なんか、恥ずかしいぞ。
『「でもな、これだけは言わせてもらうぜ!お前に負けて、気絶した時、うっすらと覚えてた事がある……部長が泣いてたんだよ!!俺がテメエを殴る理由は、それだけで十分だぁぁぁっ!!!!」』
『ドゴォォッ。』
『「がっ!?あ!?ああぁっ!?」』
イッセーの渾身の左ストレートが、ライザーの腹部にめり込む。
ライザーは悲鳴を上げる事なく、腹部を押さえながら、後ずさる。
『「………こ…こんな事で……お…俺が……」』
ライザーはそのまま、前のめりに倒れ込む。
『「お兄様!!」』
ライザーの妹が乱入し、ライザーを庇うように、イッセーの前に立ち塞がる。
イッセーは拳をライザーの妹の前に突き出し、高々と告げる。
『「文句があるなら俺の所に来い!何時でも相手になってやる!」』
(あ)
ライザーの妹がイッセーの気迫と言葉に顔を赤く染めていた。
千秋達も当然、それを見逃さず、顔が不機嫌になっていた。
まあ、ともかく、勝負はイッセーの勝ちで幕を下ろした。
後書き
この聖水をぶっかけたところからレイヴェルがデレるところまでのシーンがアニメで一番好きでした。
ちなみに何回も見てると、ライザーの顔が痛々しく見えてきます。
イッセーも何気にえげつないなと思いました。
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