ドリトル先生と京都の狐
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第五幕その六
「先生、私は家鴨だからね」
「お池の中に入っても大丈夫だね」
「そう、だからね」
ここはというのです。
「私が取って来るわね」
「うん、じゃあ頼むよ」
「ええ、それじゃあね」
先生もダブダブの言葉を受けてです、彼女を送り出しました。するとダブダブはお池の中を浮かんですいすいと進んで、です。
お花を一つまみぱくりとお口で掴んでです、そうして。
取って行った時と同じ様に戻って来てです、先生にそのお花を差し出して明るい声で言いました。
「これでいいわよね」
「うん、やっぱりお水はダブダブだね」
「そうよ、お水は家鴨の友達よ」
だから何ともないというのです。
「こんなことは造作もないわ」
「よし、これで三つ目だね」
「よくやってくれた」
長老もダブダブの働きに確かな顔で応えます。
「家鴨だけはあるわ」
「お褒めに預かり光栄です」
「さて、ではじゃ」
三つ目の素を手に入れました、それならというのです。
「次じゃ」
「四つ目ですね」
「それですね」
「四つ目はまた山じゃ」
そこだというのです。
「大文字焼きに行くぞ」
「ああ、五山の」
「まさにそこじゃ」
そこに行ってとです、王子に応えます。
「如意ヶ嶽に行くぞ」
「今度もあれで行くんだよね」
「縮地法でな」
やはりそれを使うというのです。
「行くぞ」
「ではすぐに」
「調合自体は結構楽なのじゃよ」
そのお薬はというのです。
「全部小さく刻むかそのままで一つにしてすり潰してな」
「そうして作ればですね」
「そうじゃ、すぐに出来る」
そのお薬はというのです。
「問題は素材だけなのじゃよ」
「では」
「うむ、素材を集めるのじゃ」
確実に、というのです。
「ではよいな」
「はい、それでは」
先生も応えます、そしてです。
皆今度は長老の縮地法でその如意ヶ獄に向かいました、ここにもまさに一瞬で着きました。その如意ヶ獄はといいますと。
山です、ですがこの山はどういった山かといいますと。
王子はこれまでの鞍馬山や大江山と同じ様な木々の中にいて周りを見回しながら一緒にいる先生達に言います。
「この山も特別な山なんだ」
「鬼が出たとか?この山も」
「天狗とか?」
「いや、鬼も天狗も出ないけれどね」
王子は動物達にこのことは否定します。
「けれどね」
「けれど?」
「けれどっていうと」
「ここはある磁気になったら山に入れている文字にね」
そこにだというのです。
「夜に火を点けて文字を出すんだ」
「えっ、山に火を点けるの」
「それってまずいよ」
「いやいや、山全部に火を点ける訳じゃないよ」
それはというのです、王子も否定します。
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