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SAO-銀ノ月-

作者:蓮夜
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第三話

 
前書き
九巻《アーリー・アンド・レイト》の序盤あたりの話です。

ヒロイン誰にしようか… 

 
キリトに案内を頼むことに成功した俺は、初期能力の敏捷値の許す限り走っていた。

何でもキリトが言うには
『比較的安全な草原フィールドはすぐにプレイヤーで一杯になる。とりあえず次の街を拠点にした方が良い』
との意見により次の街<ホルンカ>に向かっていた。

フルダイブ慣れしているだけあってキリトの足が速く、ついて行くので精一杯だ。

「意外と速いな。普通初心者ってのはもう少し遅いんだけど。」

「お褒めに預かり光栄だね!!」

キリト曰わく、初心者にしては早いらしいが、それ以上にキリトは速い。

もうこれはフルダイブ慣れと言うより天性の才能だろう。

「…お前、本当にフルダイブ初心者か?こんな速度で走るの、ビーターにもできなかったぞ。」

「お前はそんな速度で初心者相手に走ってたのか!?」

ナーヴギアは、脳から伝達されて俺たちのアバターを動かしているらしい。
ならば、伝達力・反応力が良ければ、アバターの動きも良くなる筈である。

二つ共、ネット中毒者よりは優れているという自信があった。

伊達に生まれた時から剣道をやっているわけじゃない。

…と、思っていたものの、上には上がいた。

「そういやショウキ。聞きたいことがあるんだけど、いいか?」

「んー?内容によってはな。」

「何でお前日本刀持ってんだ?それ、レア武器だろ?」

キリトの言葉にそういやそうだったな、と日本刀は初期装備で無いことを思いだす。

「いやあ、さっき言った通り俺はネット初心者なんだけど、家にSAOが届いたんだよ。茅場からな。」

「かっ…茅場晶彦からか!?…お前、何者だよ…?」

「期待外れで悪いが、そんな大物じゃないぜ?俺はある古流剣術の跡取りでな。昔から剣術を習っているんだよ。」

あ、こういう奴にありきたりな
『俺は別の道に進んで自分の夢を掴む!』

みたいな事は一切無いから。
剣術も楽しいしな。

「んで、茅場から手紙とSAOが届いたんだよ。
『そちらの古流剣術がSAOで使えるかログインして欲しい』
ってな。」

なんでログインしちまったかなぁ…

今から考えるとすげぇ怪しいよ。

「へぇ…で、使えるのか?」

「いや、ログインしてすぐ茅場の演説が始まったからな。まだ試してないから、<ホルンカ>に着いたら試すさ。」

「止まれ!」

深い森が見えたところで、前を走っていたキリトが突然止まる。
なんとか反応し、俺も止まった。

「…どうした?」

「ここから先は無視できる芋虫や猪といった雑魚とは違って、この森には毒蜂やら捕食植物とかがいる…慎重に行くぞ。」

キリトが真剣そのものの顔で語る。

「ナイスな展開じゃないか…大丈夫だ、俺は死なない。約束だ。」

むしろ気楽に返し、二人で森の中へ向かった。


「ハアッ!」

森の中を走っていて運悪くPOPした巨大植物をキリトが単発ソードスキル《スラント》を弱点にクリティカルヒットさせてバシャアッ!と音をたててポリゴン片となり爆散する。

…すげぇ…

「ん?どうしたショウキ?」

初期装備である簡素な片手直剣をしまいながらキリトが俺に問いかけてくる。

「…あのな、お前強すぎないか?」

「…ただゲームが上手いだけだよ。さあ、行くぞ。」

キリトは自嘲気味に笑って先を促した。

それからも何度かモンスターがPOPしたものの、キリトが片っ端からたたっ斬ってしまうので俺にやることはなかった。


「まったく、ラッキーだな。お前がいて。」

「あのな、ずっと俺がいるわけじゃないんだ。お前も敵のパターンを…」

「毒蜂は毒針に気をつければただの雑魚。その毒針が出るのは一定のタイミングがある。捕食植物は花の下の点を突けば一撃。代わりに他の部位にはダメージは低い。」

俺がキリトの戦闘を見て分かったことを述べると、キリトは言葉を噤み驚いた。

「お前、俺の戦闘を見ただけでそこまで分かったのか!?」

「俺は人より少々目が良くてね。」

目ってか胴体視力だけどな。
ネットに詳しい友達には『心眼(真)』とか言われたな。

良く分からん。

「ま、流石は古流剣術の跡取りってことか。」

「そう思ってくれりゃあ良い。」

まさか、剣術で鍛えた胴体視力がこのデスゲームで役に立つとは予想もしてなかったがね。

「…そろそろ<ホルンカ>に着くな。ここからはモンスターもPOPしない筈だ。」

「そりゃあ良かった。」

夕日が綺麗な時間に来れて良かったな…

「ショウキ。さっき俺が倒したモンスターのアイテム、俺に必要ないアイテムがあったから…」

「キリト!前だ!!」

キリトが後ろを向いてこちらに話しかけて来た時、キリトの少し前にモンスターがPOPしていた。

「なにっ!?」

キリトが片手剣を構えて隙無く構える。」

POPしたモンスターは深緑色のトカゲ人間−《リザードマン》だ。
右手に持ったシミターでこちらを見てくる。

「キリト…モンスターは出ないんじゃなかったか?」

「βテストの時はそうだったが…茅場の野郎…!」

《リザードマン》の数は三体。

カーソルの色は紫がかっているように見えるので、レベル1である自分より少し上…レベル4ぐらいだろうか…だと言うのが分かる。

「三体ぐらいなら俺一人でなんとかなる…ショウキは下がっててくれ!」

「…どうやら、そうはいかないらしい…」

先程までいた場所−つまり、俺たちの後ろに新たなリザードマンがPOPした。

俺たちは六体のリザードマンに囲まれてしまっていて、逃げ場が無かった。

「俺が速攻で三体倒す!ショウキはなんとか耐えててくれ!」

言うや否やキリトは正面のリザードマンに向かっていく。

「分かってる…約束は守るさ…!」

腰に帯びている日本刀を抜く。
初期装備らしく、簡素な作りだった。

これだったら自分の方が上手く作れるだろう。

「さあ、行くぞトカゲ共!」

キリトを習ってダッシュし、説明書で読んだ単発ソードスキルを放つ。
狙いは…左の奴だ!

俺の突きは左のリザードマンに直撃し、HPゲージを削る

はずだった。

リザードマンのHPゲージはまったく減らず、効いていなかった。

リザードマンはギョロリと俺の方を見ると、右手に持つシミターによる斬撃を放ってきた。

「当たるか!!」

キリトのステップを真似てリザードマンの斬撃を華麗に避けようとしたが、やはりというかクリティカルヒットした。

「がぁぁぁッ!」

斬られた感覚が俺を襲う。
キリトの話に出てきた男、クラインのようにシステムアシストを使えていない。

自分で言うのは何だが、俺の動きは完璧だ。


(システムアシストが発動しない…!?)

考えている間にもリザードマンは攻撃をしてくる。

いや、むしろチャンスだと思うことだろう。

リザードマンAの正面から来る斬撃を日本刀で受け、鍔迫り合いになる。
だが、その間にリザードマンB、Cの斬撃が日本刀をすり抜け、俺の身体に命中する。

「このっ!!」

日本刀を力任せに振り回しリザードマンたちを引き離す。
相手はシミター、こちらは日本刀だ。

重さはこちらの方が上。

リザードマン三体から距離をとり、自分のHPゲージを確認する。

…もうレッドゾーンに入っていた…

「ハアッハアッハアッ…」

息が上がる。
…SAOでも息が上がるんだな…

そんなことを考えながら息を整える。

再びリザードマンが先程の攻撃を繰り返して来たらジ・エンドだ。

「そういや、HPが0になったら死ぬんだよな…」

日本刀を構え直す。

「ナイスな、展開じゃないか…!」

現実世界で待つアイツには
「また。」
と。
後ろで戦うキリトとは
「死なない。」
と。
約束した。

「約束は破らない…」

キリトが来るまで持ちこたえてみせようと、相手の斬撃を防げるように日本刀を構える。

さあ、来い!

俺が覚悟を決めた瞬間、リザードマン三体も攻撃を仕掛けて来た。
先程も言った通り、次に来たらジ・エンドだ。
俺は死ぬ。

(悪いな、二人とも…)

その思考を最後に、リザードマンたちの攻撃は俺を貫いた。








…と、思った。

「あれ?」

自分の身体を見てみると、最初にやられたところ以外はどこも無事だった。

それどころか、俺はリザードマン三体の後ろに回っていた。

確かに、俺にはそんなことが出来る。

『現実世界』では。

<縮地>と呼ばれる移動方法で、瞬時に相手の間合いを詰めたり、相手の死角に跳ぶ移動方法。

試しにもう一回やってみる事にする。

ヒュッ!

聞き慣れた風切り音がして、俺は再びリザードマン三体の死角に回っていた。

リザードマン三体は反応出来ず、まださっきいたところを見つめている。

「なんだ。そういうことか。茅場の馬鹿野郎…」

その声に反応したか、リザードマン三体が一斉に後ろを振り向く。

「邪魔だ。」

刀を一回鞘に納め、素早く斬りつける!

「抜刀術《十六夜》」

鞘から放たれた稲妻のような剣閃は、いとも容易くリザードマン三体を切り裂いて、消滅させる。

「生き残った、か。」

ショウキが考える茅場の考えはこうだ。

まず、俺のナーヴギアに細工をしておき、戦闘用システムアシストを使えないようにしておく。
代わりに普段からショウキが使っている剣術を使えるように細工をした。

「何考えてんだか…」

「ショウキ!大丈夫か!?」

あっちも三体片付けたようなので、回復用ポーションを飲みながらキリトの元へ歩いていった。



−ショウキは当然知らないことだが、このデスゲーム、<ソード・アート・オンライン>は『レベル制MMORPG』と呼ばれるレベル差が絶対の強さであるゲームだ。

しかし、今のショウキはシステムアシストが使えないため、自らの剣術・胴体視力を頼りに戦う。
それはいわゆる
『スキル制MMORPG』
の戦い方だ。

ショウキは、このデスゲームの中、一人だげ別のシステムでプレイしているのだ。

茅場晶彦が仕掛けた
『バグ』であるショウキがSAOで何をするのかは、まだ誰にも分からない… 
 

 
後書き
ちょっと、更新が遅れます。

理由は活動報告にて!
 
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