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プリテンダー千雨・リメイク

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序章・4


あの後、私は昨日ラチェットさんに足の治療をしてもらったベッドの上で目を覚ました。

「何故千雨は気を失ってしまったんだ?」

顔を横に向けると、父さんとグリーズさんがラチェットさんに質問していた。

「これは私の見解だが、おそらく彼女は自分が人間では無いと認めたく無かったんだろう。」

「認めたく無かった?どう言う事だ?」

グリーズさんが首を傾げた。ラチェットさんはそんな彼に説明をする。

「彼女は今まで自分が人間だと思って暮らして来たんだ。だから、自分が人間では無い事なんて認めたくなど無い。だが、トランスフォーマーとしての姿になった事でそれを認めざるをえなくなってしまった。しかし、それでも彼女は認めるのを拒み、その結果思考回路が・・・」

「ラチェット。」

その時、父さんが私が起きたのに気付いて、ラチェットさんを止めた。

「やあ、千雨。目が覚めたようだね。具合はどうだい?」

すると、ラチェットさんも私が起きたのに気付いて声を掛けて来る。

「大丈夫です。頭が痛いとか、そう言うのは・・・」

「なら良かった。でも、もう少し休んでいるといい。それと、学校についてだが・・・」

「それなら、次の授業で使う教科書が寮の方に置いてあるので、一旦寮に戻ります。」

そう言って、私はベッドから降りた。

「なら、私が送って行くよ。」

「いえ。救急車で帰ると目立つので結構です。」

ラチェットさんが気を使ってくれたが、私はそれを断って山を下りるとバスで寮まで帰った。




《三人称Side》

千雨が帰った直後。ホーク達は千雨が出て行った扉を暫く眺めていたが、やがてラチェットが言葉を放つ。

「あれは思ったより重症な感じだな。」

「そう言えば、訓練の時もトランスフォーマーなら新米でも出来る事が全く出来ていなかったな。これはもしやあいつが思う人間としての限界まで無意識に力をセーブしていると言う事か?」

「おそらくそうだね。」

グリーズの言葉をラチェットが肯定する。

「しかし、それだと訓練が全く進まんな。困ったものだ・・・」

「こればかりは、千雨自身が覚悟を決めてくれるまで待つしか無いだろう。」

腕を組みながら頭を悩ませるグリーズ。そんな彼にホークは気長に待つしか無いと伝えるのであった。




《千雨Side》

寮に帰った私は自分の部屋に戻り、直様ベッドの上に寝転がった。基地にあった物とは違い、柔らかいマットと布団のあるこのベッドは心地良く、何故か日常に戻って来たと言う感じがする。そして、そのまま私は眠ってしまった。




これは夢だろうか?まだ私が小学生くらいの時の記憶が流れている。

『絶対おかしいって!』

あの頃の私は、この麻帆良で見られる異常を見つけては指摘していた。

世界樹と呼ばれる巨大な木

車と同じくらいのスピードで走る人間

学園長のぬらりひょんみたいな頭

そういった物がおかしいと、私は何度も友達に言った。

『ええ?そうかな?』

『別におかしく無いと思うよ。』

だが、友達はそれをおかしいと認識しない。

『むしろ、おかしいのは千雨ちゃんの方じゃないの?』

そして、周りからは私の方がおかしいと認識された。

『そうだね。』

『一番おかしいのは千雨ちゃんの方だよ。』

『そうそう。だって・・・ロボットだし。』

(は?何を言っているんだ!?)

その時、私は自分の手を見た。だが、それは生身の人間の手では無く、金属で出来た機械仕掛けの手だった。




「うわああああああ!!!」

私は悲鳴と共に目を覚ます。そして、自分の手を見た。そこにあったのはいつも見る生身の少女の手だった。それを確認した私はホッとする。だが、時計を見て気付いた。

「ヤバイ!遅刻だ!!」

私は急いで登校の準備をし、寮を飛び出した。





寮を飛び出した私は学校まで急いだ。残念ながら、着いた頃にはもう朝のホームルームが始まっていた。

「すみません!寝坊しました!!」

私は謝りながら教室に飛び込む。すると、教壇に立っている先生が言った。

「珍しいですね。千雨さんが遅刻するなんて。」

この先生の名前は『ネギ・スプリングフィールド』。大学を十歳で卒業した天才少年教師で、この学園の異常の一つだ。


『でも、千雨ちゃんの方が変でしょ?』


その時、私の耳に幻聴が聞こえた。

「どうかしましたか、千雨さん?」

「いえ、何でも無いです。」

その様子を怪訝に思った先生が聞いて来るが、私は適当に誤魔化す。

「そうですか。では、今日千雨さんは遅刻と・・・千雨さん。席に着いて下さい。」

「はい。」

先生が遅刻の確認をした後、私は席に着いた。
このクラスは本当に異常だらけだ。先生の件もそうだが、留学生の数が異常に多いし、見た目がどう見ても中学生じゃない奴が上の意味でも下の意味でも何人か居る。さらに、人間離れした身体能力を持った奴も複数居た。そして、そんな中で最も異彩を放っているのが出席番号10番の生徒『絡繰茶々丸』だ。変わった名前をしているが、こいつは見た目も相当変わっている。一言で言えばロボットだ。だが、トランスフォーマーとは違いかなり人間に似せて作られている。だが、耳のセンサーと機械を思わせる関節部、そして後頭部に刺さったゼンマイのネジが彼女が人工物である事を示していた。
千雨としては、麻帆良の外ではロボットを歩かせるだけでヒイヒイ言っていると言うのに、こんな物が存在する事が信じられなかった。


『でも、千雨ちゃんの方が凄いロボットでしょ?』


また幻聴が聞こえる。

「長谷川さん。どうかしましたか?」

その時、私の様子を見て絡繰が話しかけて来た。

「・・・何でも無いよ。」

「そうですか・・・そう言えば、足に包帯を巻いていますが、何かあったのですか?」

「別に。かすり傷だよ。」

そう答えて私はやり過ごすと、ホームルームに集中した。


続く
 
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