ハイスクールD×D~進化する勇気~
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第十九話
俺の名前は兵藤一誠。忘れているかもしれないがこの兵藤一誠という人間に憑依した人間だ。
前の名前は覚えていない。というか何をしていたのかさえも覚えていない。
しかし俺は楽しく生きていた。
さて現実逃避は止めようか。
「むぅ~~~~~!」
「むぅ~~~~~!」
俺のベッドで俺を挟んでアーシアとヴァーリが睨み合っているのです。
俺的にはいつもヴァーリがいるのでさほど気にならないんです。
しかしアーシアは別です。本当に時々しか……それもこんな状況は初めてなので正直戸惑いしかありません。
ちなみにこんな事がここ最近毎日続いているのです。
まあ、それにも歴とした理由があるのだが……。
その理由としてあげられるのが冥界から帰ってきた時の一騒動だろう。
もちろんこれはきっかけにすぎない。
本当の理由としては……
俺は二人が寝静まったのを見てからため息をつく。
「はぁ…」
『どうした、相棒?ため息なんかついて』
と、まだ起きていたのかドライグが聞いてくる。
「そりゃお前……毎日毎日アーシア宛に送られてくるあの荷物を思い出せばため息もつきたくなるよ……」
そう、毎日毎日あの時アーシアに告白してフラれた悪魔、ディオドラ・アスタロトが豪華な荷物を送ってくるのだ。
『あの男も懲りないな。アーシア嬢はちゃんと自分の気持ちをぶつけたというのに……悪あがきをする』
「多分だけどアタックし続ければアーシアは自分に振り向いてくれるって思ってるんだろうな……」
『ふん、それは無理だな。相棒が助けたからこそ今のアーシア嬢があるんだからな』
ありがとうな、ドライグ。さて、俺たちも寝ようぜ?
『そうだな』
そして俺とドライグがヴァーリとアーシアに抱きつかれながら眠りについた……。
あれから数日……ずっとアーシアとヴァーリと一緒に添い寝して……
俺は現在、上も下もあまり変わらない空間にいる。
「それで?ストレスが溜まっているという事か?」
「そういう事」
「イッセー…いじめる…我、許さない」
「オーフィス、やめろ。お前が暴れたら後々面倒な事になるから」
そう、俺がいるのは次元の狭間。
グレートレッドとオーフィスに愚痴をこぼしにきたのだ。
「それでさぁ……どうすればいいと思う?」
「うぅむ……まあ、手っ取り早いのは力づくだろうな」
だよな、やっぱり……。
「でもイッセー…戦い…好まない」
オーフィスがその考えはないと言ってくれる。
ありがとうな、オーフィス。
「まあ、時間が解決するのを待つしかないんじゃないか?」
「やっぱそうだよな……」
それしかないか…。
「はぁ……」
最近ため息が増えたのは気のせいではないと思う。
学園が二学期になって数日が経ち…教室ではいつもの光景が見れる。
「やあやあ、イッセー。今日も今日とてアーシアやゼノヴィア、ヴァーリと親しげに登校しておりましたねぇ?」
とクラスメイトである桐生藍華が話しかけてくる。
「一緒に暮らしているんだからしょうがないだろ?」
「おぉっと、惚気が来たか~?」
と、バカにしている藍華だが
「そんなに言うなら何でお前は彼氏作んないんだよ?」
「え……?」
と、俺が言うと黙りこくってしまう。
そう、こいつ自身もエロさでは松田や元浜に負けてはいないのだが…いかんせんそれでも桐生は可愛いと言われており、時々告白もされるらしい。 (らしいというのはアーシアに聞いただけで直接見たわけではないため)
「そんなにモテてるのに何で彼氏とか作らないで俺たちと一緒につるんでるんだ?」
これに関しては前々から聞こうと思っていたんだよね。
「え、えぇと……それは……」
と、桐生はどもる。
「なあ、まさかとは思うが桐生も? (ボソッ)」
「はい、おそらくはその通りです (ボソッ)」
「イッセーってなんでこんなにもフラグを立てるんだろうね… (ボソッ)」
「「「はぁ…」」」
おい、そこの三人。なんでため息をついている。
「あ、あはは!ま、まあいいじゃん!私の事なんて!」
そう言って桐生は明らさまに話を逸らす。
何か後ろめたい事でもあんのかね?
「天使を探すぞ」
「「「「は?」」」」
いきなりオカルト研究部の部室に呼び出されてアザゼルさんから発された言葉に俺たち四人は揃って同じ声をあげる。
「アザゼルさん、頭おかしくなったか?」
「そんな人を可愛そうな目で見るのは止めろ。これは結構重要な事なんだ」
重要な事って……
「何が重要なんだよ?」
「禍の団…あいつらと戦うために必要な物だ」
禍の団…あのテロリスト共か。
「それよりもその天使って一体何なの?天界に住んでいる天使たちの事?」
と、リアス先輩は聞く。
「いや、そんな生易しい物じゃない。それを使えば……多分だが戦力の大幅アップは間違いない。ただ、隠し場所を知らんがな」
「隠し場所?それって元々誰かが持ってたって事か?」
「ああ、三大勢力の戦争の時にな。あれは今の史実では二天龍を倒して和解したって事になってるけど、本当は違う」
え?違うの?
「本当は俺たちはあまり手を出していないんだ。二天龍に立ち向かったある青年と特殊な少女たちの手によって二天龍は倒され、神器に封印されたんだ」
なるほどね。つまりはその彼らが天使を扱っていたって事か。
「その人達は?」
「その天使の力の一部を封印して、自分たちの世界に帰っていったんだよ」
……帰っていった?
「あいつら、俺たちの世界とは違う世界から来たらしくてな。後になって調べてみたらそんなやつらはこの世界のどこにもいなかった。まあ、それに関してはどうでもいい。問題なのは天使を扱うにはそれに伴う資格が必要になる」
「資格?」
「ああ、天使には意志があってな。その意志によって自らを振るう適合者を決める。こんなかで一番近いのは……姉妹である小猫位だな」
「え?私…ですか?」
塔城は驚いた感じで聞く。
「ああ、丁度その少女たちの中に二人で一つの天使を分けて使用していた奴がいてな。こんなかで言うならお前と黒歌がそれに当てはまるんだよ」
「私と……黒歌お姉様が…」
「と言ってもどこに封印されているかは知らないからしらみつぶしに探すしかない」
アザゼルはやれやれといった感じで手を振る。
「まあ、今回呼び出したのはそれをいいたかっただけだ。それとリアス・グレモリーにもな」
「私?」
「ああ……今度のお前のゲームだが……対戦相手はディオドラ・アスタロトだ。それと奴さんは勝利した暁には…アーシアを自分の妻として迎え入れると言っている」
「「「「なっ!?」」」」
俺たち四人と同じようにリアス先輩たちの顔にも驚きが見て取れる。
「ちちち、ちょっと待て!何でリアス先輩のゲームなのに関係ないアーシアが賞品みたいな感じになってんだよ!?」
「俺にも知らん。あちらが勝手に言ってきたんだ。むろん俺たちとしてもそれを断りたかったが…何でか知らんがそれが承認されちまった」
くっそぉ!あの腐れ上層部共!
人の運命をなんだと思ってやがんだ!
「まあ、勝てばいいのさ。勝てば。そうだろ、リアス・グレモリー」
「ええ、そうね。私たちは負けないわ」
そう言うが……俺にはどうも納得がいかない。
そもそも、何でディオドラはアーシアにそんなにまで執着するんだ?
アーシアに命を助けられたってのなら理由になるかもしれないけど……でも、納得がいかない。
「しかし、覚悟しといた方がいいぜ?なんでもアガレス家の嬢さんが負けてディオドラは三位に格上げになったしな」
「何だって…?」
それはおかしい。あの時感じたオーラでもアガレスさんは結構な感じだった。むろんディオドラに負ける筈がない。
「お前たちも知っていると思うが、ゲームはグレモリーとシトリーだけでなく他の若手でも執り行われた。実際に冥界に放送されたのは好カードだったお前たちだけなんだが…バアルとグラシャラボラス、アガレスとアスタロトだ」
「…結果は?」
「ああ。前者はバアル、後者はアスタロト…実際に映像を見た方が早い」
するとアザゼルは端末のようなものを出現させて、そこから映像を流す。
そこにはサイラオーグとあのヤンキー野郎のゲームが繰り広げられていた。
その力は…拮抗とは言い難かった。
圧倒的なサイラオーグの眷属の強さ。
ヤンキー野郎の眷属も対抗しているものの、やはり押され、一人一人リタイアしていった。
そして最後に残るヤンキー野郎。
最後はサイラオーグが出てきて、サイラオーグとヤンキー野郎の一騎打ち。
…勝負は一瞬だ。
ヤンキー野郎の放つ様々な攻撃は何の意味もなさず、サイラオーグは防御すらしない。
ただ冷たい目で、しかし獅子の如く獣のような目でヤンキー野郎を見ていて、次第にヤンキー野郎はそのあまりにも違いすぎる実力差で恐怖に染まっていき、そして…サイラオーグの神速の拳打で屠られた。
―――圧勝、というのが一番しっくりする。
眷属も強いと思うけど、それ以上にサイラオーグの実力が飛び抜けている。
さすがにあの中で一番オーラがずば抜けて高かった人だな。
俺も結構本気を出さないと危ないレベルだ。
この人の恐るべき点は…その圧倒的なスタミナ、そして強靭な肉体に洗練された拳……この人に傷をつけれる人間がこの場には俺とアザゼルを除いて数える程度しかいないだろう。
努力の賜物って訳か……俺もわかる。俺も才能なんてなくってただひたすらに努力して今の力を得たからな。
そしてディオドラのゲームの映像を見たが……はっきり言おう。
おかしい。
途中までは確かにアガレスさんが勝っていたのに、途中でディオドラが出張ってきてからの逆転……明らかに何かある。
「とまあ、こんな感じだ……イッセー、どうした?」
「いや、何でも……俺もう帰るわ。考えなきゃいけない事が出来たし」
俺はそう言って足早に帰り支度をする。
「お、おいイッセー」
「ごめんな、また明日な。アーシア達も夜遅くまで残らずに帰ってこいよ」
俺はそう言ってカバンを持ち、部屋を出た。
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