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万華鏡

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第六十一話 日本シリーズその五

「小柄なのもいいって」
「男の人に人気だからですか」
「可愛いって」
「そう、自分でもいいかなって思うし」
 その小柄なことにだというのだ。
「これがね」
「だからなんですね」
「いいんですね、今は」
「オッケーよ」
 英語も交えて明るく言う、笑顔も明るいものだ。
「これでね」
「小柄であることもですね」
「今はいいんですね」
「そうよ、今はそれでいいと思っているから」
 かつては油断した為後悔した、しかし部長はそれも乗り越えたのである。思えばこれはかなり強いことである。
「小柄でもね」
「ううん、後悔とその克服」
「何か大きいですね」
「大きくないわよ、誰だって乗り越えられるものよ」
 部長は一年生達に笑顔のまま言う。
「後悔先に立たずって言うしね。まあ慢心はしないに越したことはないわよ。後悔も克服出来るものと出来ないものがあるから」
「克服出来ない後悔ですか」
「それもですか」
「巨人みたいにはならないって思うことよ」
 部長も巨人のことについて言及する、戦後長らくに渡って球界の盟主を僭称しやりたい放題を尽くしてきたこのチームのことだ。
「思い上がったらああなるのよ」
「最下位ですね」
「それも記録的な惨敗続きね」
「驕る平家は久しからずだからね」
 今度はこの言葉も出た。
「慢心は本当に碌なことにならないから」
「ですね、じゃあ私達も阪神もですね」
「慢心せずにやっていかないと駄目ですね」
「何があっても」
「合言葉は巨人になるなよ」
 無論その巨人を盲信するカルト信者達にもだ、ファンとカルト信者は違うものだ。巨人ファンの中には自分が選ばれたファンだと考える輩もいるがこうした輩こそはカルト信者である。
「いいわね」
「はい、慢心はしない」
「驕らないってことですね」
「正直上には上がいるのよ」
 部長はこのことは少し真面目な感じで言った。
「頂点っていうのはないのよ」
「上がいるんですね、ずっと」
「それこそ」
「神様だってね」
 その一番上と思われている存在でもだ。
「上がいるでしょ」
「ええと、神様にもですか」
「上がいるんですか」
「さらに」
「そうよ、神様の中の神様がね」 
 そうした存在がいるというのだ。
「日本だと天照大神が伊勢神宮におられるけれど」
「あの伊勢神宮の神様よりも!?」
「さらに!?」
 そう言われるとわからない娘がいた、日本の神社では伊勢神宮が最も格式が上で天照大神が最高神と思われているからだ。
「上の神様がですか」
「いるんですか」
「伊邪那岐、伊佐波にね」
 部長がここでまず挙げたのはこの二神だった、言うまでもなく日本という国を作った男女の夫婦神である。
「さらにその伊邪那岐、伊佐波を生んだ神様が」
「いるんですか」
「そうした神様も」
「私が名前で知ってるのは伊邪那岐、伊佐波までだけれどね」
 それでもいるのだ、尚日本神話の神々の名前はかなり独特だ。しかも神の数は多くどうにも覚えにくいものがある。 
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