SAO-銀ノ月-
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第十四話
前書き
この二次も、初めてちょうど2ヶ月。
これからも頑張っていきたいです。
あと、この話だけ、他の話より長いです。
いつもこれぐらいで投稿したいんですがね…
ショウキside
《プネウマの花》を、首尾よく手に入れた俺とシリカは、シリカが俺の抱っこを拒否した(当たり前だ)ことで、一本道を歩いて帰ることとなった。
そして、意気揚々と帰ろうとした俺たちの前にあるのは、さっき放置したモンスターたちがうじゃうじゃとはびこっている図だった。
どいつもこいつも、うねうねと触手を伸ばして、俺たちを待ち構えている。
「…うわぁ…」
シリカがそんな声を上げるが、これは仕方がない。
人生、楽ばっかりは出来ないんだな。
「シリカ。こんだけいたら、流石にお前をおぶって向こうまで走るのは無理だ。」
「ですよね…」
当然、そんなことはシリカも分かっているようだ。
転移結晶を使っても良いんだが…そうすると、向こうで待ち構えているだろう、《タイタンズハンド》を素通りしてしまう。
…てか、俺たちが転移結晶を使うっていう可能性を考えてないのか、《タイタンズハンド》よ。
「じゃ、俺が先に行くから、シリカは隙を見て脱出してくれ。」
「え?先に行くって…」
「《縮地》」
シリカの呟きを背に、俺は高速移動術《縮地》にて、敵陣に突撃する。
SAOでは、現実で出来ることは大体出来る。
…そうしなければ、モンスターたちにはやられ放題だし、ゲーム内で過ごすことなど不可能だからだが…
そんなSAOの無駄なハイスペックのおかげで、俺は戦える。
ソードスキルと、戦闘用のスキルが使えない俺にとって、現実で学んだ剣術が生命線だ。
その中でも、高速移動術《縮地》は、モンスターが相手でも、プレイヤーが相手でも有効なため、多用している。
高速移動術《縮地》。
特殊な足の動きにより、走っている者の動きが消えるぐらいの速度で走る技だ。
まあ、この歩く花のように、視覚に頼らない相手には、消えたように見えても意味が無いことと、あんまり長距離は走れないこと、ずっと連続で出来ないことが弱点だ。
《縮地》にて移動した後、速攻でアイテムストレージを開き、《角笛》というアイテムを取りだす。
外見は見た目通りであり、ただの角笛だ。
吹くと、周囲のモンスターの注意を、少し引きつける効果を持つ。
本当は、レベルアップの為に敵を引きつけるように吹いたりするらしいが…まあ、レベルの概念が形だけである俺には関係がない。
ピューッッ!
美しく吹く、なんてことは考えず、思いっきり吹くと、歩く花が大量にこちらを向く。
…怖っ。
「シリカー!今のうちにさっさと逃げろよー!」
遠くの方にいるシリカは、少し躊躇したものの、敏捷値の許す限り走り出した。
「さてと…」
俺も俺で逃げないとな。
角笛をアイテムストレージにしまい、俺はシリカに比べて遠回りをして逃げ始めた。
数分後、俺は先に麓にいたシリカと合流した。
「大丈夫ですかショウキさん!」
案の定、シリカが心配して詰め寄って来る。
「大丈夫大丈夫。ケガとか無いだろ?」
…本当は、触手による攻撃を2、3発受けたが、ケガという程でもない。
ポーションを少し飲めば回復する程度だ。
「…それなら、良かったですが…」
しぶしぶと引き下がるシリカと共に、街道を歩き、《フローリア》の街に帰るために、まずは橋を渡ろうとしたところ—
「…そこにいる奴。出て来いよ。」
—俺のシステム外スキル《気配探知》が反応する。
システム外スキルと言っても、ただ、自分に危害を加えるつもりないし、物陰でこそこそ見てる奴にしか反応しない、《索敵》スキルと思ってくれれば良い。
俺の言葉を受けて数秒後…木立から、予想通りの人物が現れた。
「ロザリアさん!?」
シリカが驚きの声を上げる。
当然だろう。知り合いがいきなり現れたら。
「私の《隠蔽》を見破るなんて、なかなかの《索敵》スキルじゃない?」
「《索敵》スキルなんて、ビタ一文上げてないな。」
上げられない、という方が正しいが。
そんな俺の一言を、ロザリアはやせ我慢と受け取ったのだろう、シリカに顔を向ける。
「首尾良く《プネウマの花》を手に入れたみたいね、おめでと、シリカちゃん。」
唇の端を吊り上げながら笑うロザリア。
祝う気はさらさら無いだろうが。
「じゃ、早速私にちょうだい。」
「な…何を言って…!?」
シリカには、まだ色々と判断がついていないのだろう。
俺はシリカをかばうように前に立った。
「こいつはシリカの物だ…オレンジギルド、《タイタンズハンド》リーダーのロザリア。」
ロザリアの顔から笑みが消える。
「…へぇ。良く知ってるわね。」
そりゃ、情報屋に結構な額使ったからなぁ…
「で、でも、ロザリアさんはグリーンじゃ…?」
「オレンジギルドも、全員が全員オレンジプレイヤーじゃないさ。覚えとけよ。」
シリカと俺のやりとりを聞いて、再び、ロザリアの笑みが顔に戻る。
「そこまで分かってるのに、ノコノコ来るなんて、馬鹿?それとも、体でたらし込まれちゃったの?」
馬鹿であることは、否定出来ないかもな…
今の発言に、怒り心頭といった様子で、背後でシリカが短剣を抜こうとするが、それを制しながら俺はロザリアに声をかけた。
「あんた、少し前に《シルバーフラグス》っていうギルドを襲ったな。メンバー4人が殺されて、リーダーだけが脱出した。」
「…ああ。あの貧乏な連中ね。そうよ。それがどうかした?」
確定だ。
俺は、《シルバーフラグス》と、何度か交流があった。
みんな、人の良い連中だったな…
《シルバーフラグス》のメンバーを思い出しながら、更に一歩前に出る。
「そこのリーダーに頼まれたんだよ。あんたらを《牢獄》に送ってくれ、ってな。」
「…ふーん。あんた、そんな死にぞこないのお願い聞いてあげるなんて、暇な人だねー…でも、私たちにたった一人で勝てると思ってるの?」
ロザリアは右手を上げる。
それが何かの合図だったのだろう、木立からオレンジプレイヤーが大量に出て来る…一人だけ、グリーンプレイヤーがいたが…
総勢10人。
前情報で買った、ロザリアを除く構成員の数と同じだった。
「ショウキさん!…あんな数、無理だよ!」
少し後ろに位置していたシリカが、俺と同じ場所までやってくる。
「大丈夫。…約束したろ?絶対に死なないし、お前を絶対に死なせない。俺は、約束を必ず守る…!」
シリカを後方に下がらせ、自分は前に出る。
その時、髪を逆立たせたグリーンプレイヤーの男が、思い出したように言った。
「あ、ロザリアさん。こいつ、アレじゃないッスか?傭兵《銀ノ月》とか言うイカレヤローッスよ。」
「ああ。あの、中層の連中相手に人助けしてるっていう奴ね。あんた、そうなの?」
取り巻きの言葉に、何かを思い出したようなロザリアは、こちらに向けて確認の質問をしてくる。
「そうだ。傭兵《銀ノ月》だ。」
俺の言葉に、《タイタンズハンド》の連中は笑いだす。
「クククッ…まさか、本当にいたとはねぇ…でも、《銀ノ月》が持ってる剣はレア武器だって聞いたことがあるし、ますます見逃せないわよねぇ?」
ロザリアの号令に、《タイタンズハンド》のオレンジプレイヤーたちは、一斉に思い思いの武器を構える。
「ショウキさんっ!!」
大丈夫だって…まったく、心配性だな。
俺は日本刀を抜かず、《抜刀術》の構えになる。
基本的に、ソードスキルは剣を抜いていないと発動出来ないため、武器を抜かない敵=諦めた。という方程式が、オレンジプレイヤーの脳内には成り立つ。
だが、むしろ《抜刀術》は、日本刀を鞘に入れておかないと使えない。
ここが隙。
大抵の相手が、油断して、迎撃準備をしているこちらに無策で突っ込んでくるのだ。
「死ねやァァァァ!」
オレンジプレイヤーたちが俺に迫る。
—視ろ。
視ろ、アイツらの武器、鎧、動き…アイツらの全てを視ろ。
目を瞑るな…!
まずは、高速移動術《縮地》にて、突撃してくる《タイタンズハンド》のオレンジプレイヤー達に、逆にこちらから突撃する。
「消えた!?」
前述の通り、目の前の敵が消えるわけだから…視覚に頼る相手には、効果は抜群だ。
—動きが止まった。
《タイタンズハンド》のオレンジプレイヤー達とすれ違う一瞬に—全力で日本刀《銀ノ月》を抜き放つ!
「抜刀術《立待月》!」
高速移動してからの、すれ違いざまの抜刀術。
その剣閃の狙いは、アイツらの…戦闘力。
「う、うわっ!?」
すなわち、アイツらの防具に武器。
全てを切り捨てた。
日本刀を再び鞘にしまい、問いかける。
「…もう戦えないな。さあ、どうする?」
攻撃してきたオレンジプレイヤー達は、まだ放心状態だったが、リーダーの行動は迅速だった。
ロザリアは、すぐさまポケットから転移結晶を取り出した。
「転移—」
「させるか。」
速攻でロザリアの転移結晶を奪い、足で踏み潰す。
…もったいないことしたな…って、こんな時まで貧乏性だな、俺。
そんなことを考えながら、ロザリアをオレンジプレイヤー達のところへ投げ飛ばし、通常の転移結晶より色が濃い結晶を、アイテムストレージから取り出した。
回廊結晶。
ホランドが全財産はたいて買ってきた、指定した場所に飛ぶ結晶だ。
「これで全員、軍の牢獄に行ってもらう。」
そういう約束だからな。
俺の脅しともとれる言葉にも、ロザリアは強気な姿勢を崩さなかった。
「…もし、嫌だと言ったら?」
「死なない程度に両手両足ぶった斬って、回廊に投げ込む。—どっちが良いか、選べ。」
迷いの無い俺の言葉と瞳に、先ほど、武器と防具をたたっ斬られたオレンジプレイヤー達は、揃って自分の両手両足を見る。
—もしも、さっきの剣閃が、両手両足に向いたら…本当に五体満足でいられるか?
そう考えてしまったのだろう、オレンジプレイヤー達の顔が恐怖に染まる。
「コリドー、オープン!」
回廊結晶が砕け散って、転移する空間が現れる。
「畜生…」
オレンジプレイヤー達が続々と入っていき、髪を逆立たせたグリーンプレイヤーもそれに続く。
唯一残ったのが、ロザリアだった。
挑戦的な瞳で、俺を見据えている。
「…やれるもんならやってみなさいよ。グリーンの私に手を出したら、今度はあなたがオレンジに…」
言い終わる前に、ロザリアの服を掴む。
「や、止め—」
「昨日、お前に言わなかったか?…『黙れ』ってさ。」
その言葉と共に、ロザリアはコリドーへと姿を消した。
…いや、投げたんだけどさ。
一呼吸すると、呆然て立ったままのシリカに話しかける。
「怖い思いさせて、ごめんな…事前に言ってた方が良かったんだが…」
シリカは、俺の言葉に対して、フルフルと首を振ってくれた。
その優しさが、今は嬉しかった。
「さ、早く帰ってピナを生き返らせようぜ。」
照れ隠しのように早口で言ったが、シリカは動かなかった。
「どした?」
「その…足が、動かないんです…」
最後に一笑いして、俺はシリカの手をとった。
ビクン!という反応の後、シリカが握り返してくれたのを確認し、アイテムストレージから転移結晶を取り出した。
そして、《風見鶏亭》がある35層の名を唱え、俺とシリカの視界は光に包まれた。
後書き
あと一回、後日談を挟んで、原作で言うところの、《黒の剣士》は終わります。
それと、これからテストなので、前回と違って更新が遅れます。
感想・アドバイス待ってます!
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