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戦国異伝

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第百五十八話 義昭の愚痴その三

「我等十二家の者達は誰も傷ついてはおりませぬ」
「それは何より。ですが」
「はい、我等も力はですな」
「随分と使っていますな」
 天海だけでなく崇伝も述べる。
「伊勢から随分と」
「かなり使っています」
「出来れば最悪でも加賀でどうにかしておきたかったですな」
 高田は難しい顔で二人の妖僧に述べた。
「全く以て」
「はい、このままではです」
「織田家は摂津で本願寺を倒します」
 そうなるとだ、天海と崇伝は述べた。
「石山御坊を陥とします」
「その大軍で」
「疲れが見えますが」
 高田はここで織田家の疲労を指摘した。
「そのことは気になりますが」
「はい、そこです」
「そこを衝くべきかと」
 二人もこのことについてすぐに応えた。
「石山御坊にはまだ陥ちてもらっては困ります」
「そうなれば」
「織田家は摂津まで完全に掌握し」
 そしてだというのだ。
「あの地に城を築きその支配をさらに強くするでしょう」
「そうですな、間違いなく」
「そうなります」
「ですからここはです」
「石山御坊だけは」
「では」
 二人の僧侶の話を受けてだ、それでだった。
 高田は一旦目を閉じてから開きそのうえでだった、こう二人に言った。
「ここは暴れ回りましょう」
「摂津や河内で、ですか」
「そうしますか」
「はい、城を攻めさせるよりこちらが攻めましょう」
 これが高田が今考えている策だった。
「ここは」
「そうすべきですか」
「そうすべきかと」
 こう二人に言うのだった。
「そしていざという時は紀伊まで攻めさせましょう」
「紀伊もですか」
 崇伝は高田のその言葉に眉をぴくりとさせて応えた。
「あの国も」
「いざとなれば」
「紀伊もまた豊かな国、政を行えば相当なものにもなりますが」
「ですな、織田家がそこも手に入れますと」
「織田家は既に加賀も手に入れています」
 一向一揆を破りそうなった、結果として織田家は一向宗との戦いで北陸での勢力を確かなものにさせたのだ。
 そしてだ、それに加えてだ。
「そこで紀伊もとなると」
「織田家の力がさらに強まりますな」
「はい、そうなります」
 それが危険だというのだ、崇伝が危惧するのはこのことだ。
「おそらく摂津、河内、和泉の支配をさらに強めますし」
「それに紀伊もとなると」
「伊勢から瀬戸内に向かう海も手に入れます」
 このこともあった、織田家にとって紀伊を手に入れることはこのことからも非常に大きな意味を持っているのだ。
 そのこともあってだ、崇伝は言うのだ。
「ですからここは」
「紀伊までは」
「そう思いますが」
「確かに紀伊を織田家にやることは大きいです」
 そのことは高田もわかっている、そのことははっきりと言う。 
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