魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~
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Ep54願わくば幸せが多くある日々でありますように~Epilogue~
†††Sideなのは†††
――親愛なる大親友シャルちゃんへ。
シャルちゃん、お元気ですか? 私、高町なのはは毎日元気です。シャルちゃんは“界律の守護神”だから元気だよ、って言いそうだけどね。
でもね。ルシル君からね、聞いたんだよ。シャルちゃんのことを。シャルちゃんは新しい人生のために“界律の守護神”を辞めることになっていたって。
だからきっと、シャルちゃんはどこかの世界で、人として過ごしているんだよね? 男の子かな? 女の子かな? でもきっと元気な子になってるって思っているよ。
でも、どうして教えてくれなかったのかな?って、ルシル君から聞いた時思った。きっとみんなもそう。それでね、ルシル君はこう言ったんだよ。
――君たちに忘れないでと言っておきながら、自分は君たちを忘れることになる。シャルはおそらく、それが辛かったんだろう。だから言わなかった、言えなかった。それを察してやってほしい――
シャルちゃん。たとえ私たちのことを忘れてしまっても、私たちがシャルちゃんを忘れない限り、たとえ忘れたとしても、私たちはずっと親友だよ――
「――っと・・・うん」
メールを打つのを中断して一息吐く。送信先の設定はシャルちゃんが昔から使っていた通信端末。
繋がることはこれから先、永遠にないモノだ。でもこのメールは私の心の整理だ。だから送ることもきっとない。それを承知でメールを打ってる。
「セインテスト~、アウト~! ペナルティー、アスレチック一周な~!」
ヴィータちゃんの楽しそうな声が届く。私は声のした方、ルシル君の居る場所へと視線を移す。
ルシル君がルーテシアの設計開発したレイヤー建造物で組まれた訓練場で、ヴィータちゃんにしごかれてる。
そして今、重りを両手足に付けられてウォールアクトをしていたルシル君が手を滑らせて落ちそうになった。
だからペナルティー。アスレチックを一周するように告げられた。
「頑張れぇ~、ルシルパパー!」
「「「頑張ってくださぁ~い!」」」
「頑張ってください」
「おう、ありがとう!」
ルシル君はヴィヴィオとお友達の応援に手を振って応える。そんなルシル君と一緒にフィジカルトレーニングをしてるフェイトちゃんとエリオ、スバルとティアナとノーヴェも応援。
「ル~シル~、ファ~イト~!」
「「「「ルシルさん、頑張れ~!!」」」」
そんな微笑ましい光景から、もう1度通信端末へと視線を映して、メール打ちを再開。
――シャルちゃん。私たちは今、休暇が揃ったことで“カルナージ”にオフトレツアーに来てます。
私とヴィヴィオの高町家。フェイトちゃんとルシル君とエリオとキャロ。はやてちゃんたち八神家に、スバルとティアナとノーヴェの大所帯。
それと、ヴィヴィオのお友達のコロナちゃん、リオちゃん、アインハルトちゃん。そしてイクスちゃん(イクスヴェリアちゃんの愛称ね)も来てるんだよ。
少し話が逸れるけど、イクスちゃんもヴィヴィオ達と同じSt.ヒルデ魔法学院に通うことになったんだ。
今では学校にも馴染んで元気いっぱいに過ごしてるし、イクスちゃんも魔法を少しずつ扱うようになってきたんだ。
それでね、イクスちゃんに今幸せかを聞いてみたんだけど。
――はい。とても幸せです。本当はシャルにも今のわたしを見てもらいたかったです。すごく残念です。でも、シャルは言ってくれました。わたしが楽しく過ごすことこそが、シャルにとっての幸せなんだ、と。ですからわたしは生きます。これからもずっと、ヴィヴィオ達みんなと楽しく――
そう話してくれたイクスちゃんはとっても可愛い笑顔だったんだよ。すごく楽しそうな日々、これもシャルちゃんのおかげだね♪
で、話を戻して。そうだね、まずはあれからのことを話そうか。
早いものでセレスさんたち“反時空管理局組織テスタメント”との最後の戦いから1年と5ヵ月が過ぎました。
というか、まずはこれから伝えるべきだったね。ごめんね。
“テスタメント事件”と称されることになった事件の事後処理はすごく大変だったんだよ?
失った支局やヴァイゼン地上本部の再建、破壊された次元航行艦の建造。
幹部たちに殺害された将校たち、大小様々だけど悪事に手を染めた局員たちの送検。
それに管理局の組織体制、魔法・魔導師絶対主義の見直しなどの上層部内での混乱。
管理世界からのバッシングもすごかった。対応に追われた日々はほとんど眠れなかったし。
今はようやく落ち着いて、以前と同じとまでは言えないけど、管理局は活動しています。
“テスタメント事件”。最重要情報の魔術や魔族に関しては結局伏せた。
数千年以上前の技術だとか説明しても上層部は信じられないと思うし、たとえ信じたとしても、今度はルシル君に矛先が向くと判断されたから。
魔術。魔法以上の効果を有する最古の遺産。もう魔術師じゃないルシル君への詰問ってことになったら困るし、もう魔術を扱える人はいないし、復活させることも出来ない。
だから魔術は伏せた。今回の事件はロストロギア“ディオサの魔道書”によるものとして処理された。
幹部たちのことは包み隠さずに全部報告された。これは必要なことだと思うから。“ディオサの魔道書”によって蘇った期間限定の復讐者にして改革者、と。
それと破壊された施設の再建に関しては、元“ミュンスター・コンツェルン”のおかげで早々に完了した。
えっと、“ミュンスター・コンツェルン”のことも話しておくね。
事件後、コンツェルンは解体しちゃったんだけど、今でも各企業は管理局運営のための資金提供は続けてる。管理局への技術支援・提供だとか、罪滅ぼしって感じでもないけど、そういうことも続けてる。
それがトップだった人の最後の命令だったんだって。でね、驚いたことにセレスさんがコンツェルンのトップ、CEOだったんだよ。道理で“テスタメント”と繋がっているわけだ。2つの組織のリーダーが同一人物、セレスさんだったんだから。
私たち“特務六課”が最後まで明かすことが出来なかった謎が解けた瞬間だった。
それとね、セレスさんが生前にコンツェルンの上層部にいくつか指示を出していたことがあって、それが管理局上層部を少し悩ませることになってたんだけど・・・。
1つ目は、危険地域への航空隊派遣より先に、あの戦闘機部隊“アギラス”を投入すること。
まず非人格型AIに徹底制御された“新世代アギラス”が先発することで、航空隊の人的被害を抑えるというものなの。
“テスタメント事件”に投入されていた人格型AI搭載の“旧世代アギラス”は、元々“新世代アギラス”のテスト機として開発・運用されていたみたい。
空戦魔導師の人数は少ないし危険な仕事だから、管理局は試験運用として3ヵ月の間だけ前線投入したんだ。
(1度同じ空を飛んだけど、確かにあの性能なら文句無し・・・かな)
結果は合格。凄まじい戦果を挙げて、今は元コンツェルンや他の魔導端末メーカーだとかが協力して“アギラス”を製造してる。
まだいろいろと倫理的に問題があるみたいだけど、それでもやっぱり人命には代えられないって話。
正式配置はまだ先だけど、すでに何機かが紛争世界、特に重度の自然災害現場に送り込まれて活躍してる。
2つ目は、“レジスタンス”が装備していた、リンカーコアが無くても扱える魔力・エネルギー銃や特殊弾頭、コート風のバトルスーツの正式運用化。
人員不足の解決法の1つとして、セレスさんが考えていたらしいんだけど。事件中に投入されたこれらの装備もまた、今後の改良型のためのテスト運用だったみたい。
これもいろいろと検討されて、魔導師と装備者の陸戦混成編隊が組まれて試験部隊として今も活動中。
そして、“テスタメント”幹部だったルシル君とリエイスさんのことも話すね。
2人の顔は管理局に知られているし、公務執行妨害や傷害、多くの罪を犯してきた。
ルシル君とリエイスさんは状況からして、加担していたとはいえ無実とはいかなかった。
でも、セレスさんの遺書が見つかったり、リンディさんやクロノ君、騎士カリム達のおかげで重い刑だけは防げたんだ。
ルシル君は以前は管理局員、一佐まで上り詰めたエリートでもあったし、それも手伝って管理局任務の従事に落ち着いた。リエイスさんも同様に管理局任務の従事となったよ。
ルシル君はその実力(空戦形態を含めた神器使用の上級術式を失ったみたいだけど十分強い)で、執務官のフェイトちゃんの戦闘補佐として、シャーリーと3人で海を駆け回ってるよ。
フェイトちゃんは、ルシル君と一緒にいられる時間が増えたことが嬉しそう。でもルシル君が戦うことに悲しんでいたりと複雑そうかな。
フェイトちゃんが事務処理で本局に居る時、ルシル君は特別保護施設で子供たちの面倒を看てる。
どっちかと言うと、そっちがルシル君の本業な感じ。子供たちに大人気だし。
クロノ君も「どういうわけかルシルは子供受けがいい」って褒めてるのかどうかは判らないけどそう言ってたし。
そしてリエイスさんは、はやてちゃんの海上警備部に配属されて、今は“ヴォルフラム”の専属戦力として頑張ってるよ。――
(セレスさん・・・)
蒼く澄み渡る空を見上げて、目を閉じて春の風を感じる。
セレスさんの真実が記された直筆の遺書の内容を思い出す。
管理局の掲げる魔法・魔導師主義の危険性。その主義の所為で発生する被害と犠牲、人員不足。
殉職した局員の遺族が抱く心情。管理局の未来を案じての敵対という形を取った変革活動。
そして、ルシル君とリエイスさんの無実を証明するための情報。2人を洗脳した云々、2人の今後を気遣っていることが書かれていた。
そして逮捕された“レジスタンス”にも温情を以って今後を考えてほしい、とあった。
それらの書かれた日付は、信じるのなら“テスタメント”が活動する以前のものだった。
つまり始めからこういう結果になることを見越しての遺書だったっていうこと。私たちはずっとセレスさんの手の平の上で踊っていたんだと思うと、少し怖かった。
今度は訓練場の開けた場所に居るはやてちゃん達へと視線を移す。
「くっ、さらに腕を上げたな、リエイス・・・!」
「主はやてを守るための術だ。私に出来得るものであれば、どれにでも手を出そう・・・!」
――紫電一閃――
――シュヴァルツェ・ヴィルクング――
シグナムさんの“レヴァンティン”による剣術と、リエイスさんの深紫の魔力を纏わせた拳法による異種格闘戦。建造物の壁を蹴っては空中で衝突を繰り返す、凄まじい攻防戦だ。
「2人とも頑張ってな~!」
「行け行け、リ・エ・イ・ス!」
「押せ押せ、シ・グ・ナ・ム!」
シグナムさんとリエイスさんの模擬戦を見学して、はやてちゃんはリインとアギトと一緒に応援している。
とても楽しそうな3人。はやてちゃんは決戦の後も泣かないようにしていた。でも、セレスさんの遺体を前に1人っきりになったら、はやてちゃんは声を殺して泣いていた。
偶然見かけた私は黙ってその場を後にして、その後、私ももらい泣き。はやてちゃんが泣いているのを見たのはそれっきり。それからはずっと気丈に振舞っていた。
(親友としては、もっと弱いところを見せてもらいたいな~、なんて)
そう思いながらメール打ちを再開しようとしたところで、私の方に向かってくる誰かの気配を感じて指を止める。
「なのはちゃん達は今休憩中かしら?」
「あ、シャマル先生。はい、少しインターバルを挟んで、キャロの射撃訓練の続きをしようと」
シャマル先生だった。シャマル先生は私が通信端末を開いているのも見て、「あ、ごめんなさい。メール中だった?」そう謝ってきたけど、私は「送ることのないものですから」と苦笑しながら返した。疑問符を浮かべるシャマル先生に話す。メールは心の整理のためのもので、送り先もシャルちゃんの通信端末だから送らない、と。
「そう。・・・あ、そうだ。もうお昼も近いから、このまま休憩に入ってもいいと思うんだけど」
「え、もうそんな時間ですか?」
時間を確認すると12時まであと数分。確かに午前の訓練はもう切り上げた方がいい。
少し離れたところでルーテシアやレヴィと話しているキャロに「お昼にするから午前はここまで」と声を掛ける。
キャロは「ありがとうございました!」とお辞儀をして、ルーテシア達と一緒にフィジカルトレ組のところに向かう。
「そう言えばシャマル先生、料理の腕をメキメキ上げてるって、はやてちゃんに聞きましたよ」
「うふふ、そうなの♪ 今日のお昼も何品か作ったから、期待しててね♪」
シャマル先生はそう言って、上機嫌で戻っていった。
はやてちゃんから聞いたところ、リエイスさんが凄まじい勢いで料理の腕を上げたらしくて、それを悔しく思ったシャマル先生も必死に料理の勉強を始めたみたい。
今では趣味が料理だって言うくらいのめり込んでる。でも創作料理の試食で犠牲者が出ていることも・・・あったりする。
医者が病人増やしてどうするだ?ってヴィータちゃんによく怒られてるみたい。
「さてと。私も行こうか」
私も防護服からトレーニングウェアへと戻り軽くストレッチをして、お昼ご飯が用意されているロッジへ向かう。その途中、先に切り上げていたはやてちゃん達と合流。私とはやてちゃんを先頭にしてロッジに向かう。
「もう一歩が届かないな。やはり剣の騎士の名は伊達ではないな」
「そうは言うが、私とレヴァンティンを相手に真っ向から殴り合うお前も尋常ではないぞ」
シグナムさんとリエイスさんの模擬戦は、背後から聞こえる2人の会話からしてシグナムさんが勝ったみたい。
「ホンマ凄かったなぁ。レヴァンティンの腹を裏拳でいなして、片方の拳打で攻撃、それも防がれたら蹴りが飛んでくるんやもんなぁ」
「でも、なかなかいいところまで行ってたですね~」
「いやいや、まだまだ。近接戦でシグナムに勝とうなんざ10年早ぇ」
「「何故アギトがそこまで威張るんだ・・・?」」
シグナムさんとリエイスさんのダブルツッコミ。沈黙。そして笑い声。リエイスさんが加わった八神家は本当に楽しそうだ。隣を歩くはやてちゃんをチラリと見る。はやてちゃんも小さく笑っていた。
(シャルちゃん。シャルちゃんは私たちにたくさんの笑顔をくれたんだよ)
ロッジに着いて少し。先に着いていた私たちが食卓に料理を並べる手伝いをしていると、「お待たせ~!」の声と一緒にフィジカルトレ組が来た。準備も終わってそれぞれが席に着こうとしている中・・・
「ルシルは私の隣でいいよね」「ルシリオンは私の隣でいいな」
フェイトちゃんとリエイスさんの声が重なる。来た。来たよ、この時間が。ルシル君は小さく溜息。フェイトちゃんとリエイスさんの交わる視線の間に火花が散るのが見える。
「フェイト。お前は仕事場でいつも一緒だろう。なら、今の時くらいは私がルシリオンの側に居たとしても構わないだろう?」
「リエイスは家族と一緒でいいんじゃないかな? ね、はやて?」
フェイトちゃんに話を振られたはやてちゃんが「あー・・・」と返答に困ってる。そこにメガーヌさんが登場。ルシル君の隣にまで歩いていって肩をポン。
「あらあら。ルシル君はモテモテね♪ でも二股はダ・メ・よ❤」
「二股をしているわけではありません。リエイス、君ははやての隣でいいじゃないか。私は・・・私は・・・?」
ルシル君が座ろうとしない。というか座れない。ルシル君にみんなの視線が集まっているから。
どこに座るかによってルシル君の今日の今後が決まる。でも、どこに座ってもバッドエンドだな、と思っているのはきっと私だけじゃないはず。みんな座ろうとする体勢のまま硬直状態。
「ほら、ルシル君。私の隣なら大丈夫でしょ♪」
さすがにこのままじゃ料理が冷めると思ったのかメガーヌさんが、椅子を1つ持ってきて、自分が座る椅子の隣に置いた。
「あ、本当に助かります。フェイト、リエイス。私はメガーヌさんの隣にするよ」
心底安堵しきったルシル君の笑み。でもルシル君、たぶんそれもバッドエンドだよ。
「へ~、未亡人さんにも手を出すんだ、セインテスト」
ヴィータちゃんが爆弾を投下、そのまま何食わぬ顔で席に着いた。はやてちゃんたち八神家もヴィータちゃんに続いて静かに席に座っていく。ヴィヴィオ達も「わ、わたし達はここだね」と友達同士並んで座っていく。
「ルシリオンさんがわたしとレヴィのパパになるの? まあいろんなことを知ってて、その話を聴くの好きだからいいけど。ね、レヴィ?」
「ん? うん。まぁ・・お母さんがいいんならいいんじゃない?」
ルシル君に標的が絞られた集中爆撃。ルシル君が小さく「性質の悪いボン○ーマンか、君らは」と呟いて、その顔色が一気に青くなる。2人はきっと面白がってそんなことを言ったんだろうけど、ルシル君にとっては拷問でしかない。
シャルちゃん。シャルちゃんが言っていた“ルシル君を犠牲する”っていうのが今まさに行われてるよ・・・。
「あらあら。こんなおばさんじゃ嫌よねぇ、ルシル君♪ でも、ルシル君が私でも良いって言うんら・・・再婚しても・・・キャッ❤」
なんとルシル君の味方だったはずのメガーヌさんもノリだした。それにしてもすごい演技力。頬を赤らめるのも自然過ぎて恐い。
「な・・・!? いや、何言って、メガーヌさん!?」
「満更でもなさそうじゃねぇか」
「おい! さっきから君は何だヴィータ! 何か恨みでもあるのか!?」
「べ~つに~(笑)」
孤立無援なルシル君。ごめんね、ルシル君。私は、私たちは変なオーラを出してるフェイトちゃんとリエイスさんを止めれそうにないよ。
ルシル君がギギギっていう擬音が背後に見えそうなくらいの感じで、エリオとザフィーラに視線を送る。同性である2人に救援を求めたいみたい。
「ごめんなさい、ルシルさん。僕には強敵すぎます」
「すまん。許せ、セインテスト。我には荷が重すぎる」
だけど、エリオとザフィーラはルシル君から視線をフッと逸らして謝った。私はきっと忘れない。あれほど絶望に染まったルシル君の表情を。
フェイトちゃんがルシル君の側へスキップで寄っていく。あぁ、もうその軽やかなステップが逆に恐怖を煽るよ・・・(ルシル君ビクッてしてるし)。
「ル~シ~ル~♪」
ルシル君の両手を取って、ニコニコしてるフェイトちゃん。その直後、≪Plasma Arm≫と“バルディッシュ”が一言。感電したルシル君の悲鳴がこだまする。バチバチ音をさせて、短く切ってある銀髪が逆立ったルシル君がバタリと倒れた。フェイトちゃん、ヴィヴィオ達が怯えてるからそこそこにしておいてね。
「大丈夫かルシリオン? まったく、酷いことをする女もいるものだ。どれ、私が手厚く看病してやろう。見せてみろ」
すかさずリエイスさんが動く。ルシル君の頭を抱えて膝枕。もう見てられないよぉ。わなわな震えてるフェイトちゃんが恐過ぎだよぉ(泣)
「何をしてるのかな、リエイス?」
「見て判らないか? おまえの電撃でダウンしたルシリオンを看ている」
「いいよ。私がやっちゃったんだから私が看る」
「いいや。おまえに任せるとまた仕出かすかもしれん。ここは私に任せて食事をするがいい。主はやて、少し席を離れます」
「リエイスこそ、はやて達とご飯したら?」
マンガで見たことある光景。ルシル君の両腕を2人が引っ張り合う。私たちはもう関わり合いたくないから「いただきま~す!」とお昼ご飯を食べ始める。
「2人ともいい加減にしてくれ。これくらい自分で治せる」
背後からルシル君の声。何の防御も無く軽傷なんて恐れ入ったよ。綺麗な蒼色の魔力光が一瞬だけ光って消えた。治癒術式のラファエルは健在だ。
結局、ルシル君はメガーヌさんの隣。フェイトちゃんはキャロの、リエイスさんはリインの隣に落ち着いた。
最初は痛い静寂だったけど、ヴィヴィオ達が楽しい話題を振ってきてくれたおかげで楽しい昼食となった。
そして片付け。それぞれ分担して始めるんだけど、さっきの謝罪としてルシル君が一手に引き受けた。
私たちは最初は断ったけど、ルシル君は「いいからいいから」と微笑んで、私たちを送り出した。
まぁそこまで言うなら、と私たちは午後の訓練に備えて一休みさせてもらおう。
「リエイスがいつの間にかおらへん。知らんかな?」
「さっき川に行くって言ってましたけど・・・」
明日の私たち大人組とヴィヴィオたち子供組合同の、オフトレツアー2日目恒例の練習会について話し合っていると、はやてちゃんが辺りを見回しながらそう聞いてきた。
はやてちゃんに答えるノーヴェ。川には、私とフェイトちゃんとはやてちゃん、シグナムさんとヴィータちゃん、ノーヴェ以外のみんなが居るはずだけど・・・。
でもこの場に居る他のみんなはこう思ったに違いない。嘘だな、と。実際私がそう思っているんだし、みんなの表情からして間違いない。行き先はきっと・・・。
「ルシルのトコだ・・・!」
フェイトちゃんがブリッツアクションでマジダッシュ。
私たちは放っておいて、今度は午後の管理局組だけの訓練試合のためのチーム分けを考える。
問題はルシル君をどっちにするか。槍術・双剣術・双銃術、ピンポイントの精密射撃から広範囲制圧攻撃っていうオールレンジ戦を全てこなすルシル君は厄介だ。
しかもルシル君の自作デバイス“ラインゴルト”の補助で、それらを同時に発動できるって反則さ。
――ムーンライトブレイカー――
明日の練習会の組分けにも影響する重要な話だから真剣に考えていると、すみれ色の閃光が空を染めた。あの発光量、レヴィのムーンライトで間違いない。ルシル君が一体何をすればムーンライトを放たれるだけのことになるんだろう。
お仕置きにムーンライトを引っ張りだすフェイトちゃんに軽く戦慄しながらも話しを続けていると、フェイトちゃんとリエイスさんが戻ってきた。
だけどルシル君がいない。きっとあの広い空に旅立ってしまったんだ・・・。南無。
「何もあそこまでしなくてもよかったんじゃないか、フェイト」
「う゛・・・。でも、リエイスの所為でもあるんだから反省してよ」
フェイトちゃんも罪悪感を抱いてる。小さく「私ってここまで独占欲強かったかなぁ?」と呟いた。
「つうかさ、そこまで気になるんだったら、さっさと結婚しちまえよ、お前ら」
頭の後ろで腕を組んで告げるヴィータちゃん。今日のヴィータちゃんはとことん爆撃犯に徹するようだ。あわあわ慌てだした(なんか可愛い)フェイトちゃんを置いて話を進める私たち。
「結婚したとして、ファミリーネームなどはどうするんだ?」
「う~~~ん、フェイト・テスタロッサ・セインテスト・ハラオウン・フォン・シュゼルヴァロード、とか?」
「どこの芸術家の名前だそれは?」
「フォン・シュゼルヴァロードは要らないんじゃないかな・・・?」
私も参加。“フォン・シュゼルヴァロード”は貰いものらしいし、神秘を失って人として在るルシル君が名乗る必要性も感じられない。で、ファミリーネームに関してははやてちゃんが「それはルシル君と要相談やな」と締めた。
「でもそんな・・・結婚ってまだ早いよ」
赤面しながらもやっとの思いで喋るフェイトちゃん。
「早いつってももう26だぜ? 早くしねぇと行き遅れるんじゃねぇか?」
「「うぐ・・・」」
ヴィータちゃんの爆弾にグサリと来る26歳組の私とはやてちゃん。フェイトちゃんは相手がいるからいいけど、相手すらいない私たちには笑い話にもならない。でもいいもん。私には娘のヴィヴィオがいるもん。それでいいんだもん。それにまだ26だもん。まだまだこれからだもん。
「ぅく・・・今まで受けた言葉んなかで1番効いた・・・。でも、結婚かぁ。それもそうやなぁ。それやったらリエイスも諦めるやろ?」
がさりと音がする。私はそっちに視線を移すと防護服姿のルシル君が居た。
「そうですね・・・。一夫多妻制の世界にでも行きましょうか」
何でその発想!? 強敵過ぎだよ、リエイスさん。全員ポカンってしてるし、私もきっとそんな顔してるよ。
「やっと見つけた・・・で? 今は一体何の話をしているんだ・・・?」
「お、生きてたか。いや、お前とテスタロッサの結婚についてだな――むぐぅ!?」
そこまで言ったヴィータちゃんが、その口をフェイトちゃんの両手で塞がれた、ルシル君は聞こえなかったという風に惚けるけど、若干気まずそうだからきっちり聞こえてたみたいだ。フェイトちゃんの顔はもう真っ赤だ。口と鼻を塞がれてるヴィータちゃんも赤くなってきた。
「フェイト、手を離さないとヴィータが昇天するぞ?」
「うぇ? あ! ご、ごめんヴィータ! 大丈夫!?」
「げほっげほっ、殺す気か!? ったく、そろそろ決めろよなぁ」
何はともあれ結婚話に関してはまた後日という旨を念話(もちろんルシル君抜き)で決定。
でもそろそろ決めた方が良いと思うんだけどなぁ、フェイトちゃんとルシル君。
「そうか・・・私は捨てられるのだな。あれほど色々とルシリオンに尽くしたというのに・・・」
これでスムーズに話が進むかと思いきや、ホロリと涙を一滴零すリエイスさんがまた話をそっちに戻そうとしている。フェイトちゃんとはやてちゃんとシグナムさんとヴィータちゃんが硬直。私とノーヴェはこの場から逃げたい一心に駆られる。
「な、何を言い出すんだリエイス・・・?」
そう言いながらルシル君が若干後退。本能か直感か、この場がすでにデンジャーゾーンであることを察知したみたいだ。はやてちゃんが少し背伸びしてルシル君の右肩を、シグナムさんが左肩をわしっと掴む。逃げ道は防がれた。ルシル君が物凄い勢いで汗をかいてる。
「尽くしたって言うとるけど、ルシル君、リエイスに何させたん?」
「いえ、セレスに記憶を隠蔽されていた期間の記憶は無いので判りません」
何故か敬語になるルシル君。
「ひどい、私とあれだけユニゾンになっていながら、用済みとなったらポイなんだな・・・」
泣き崩れるリエイスさん。ホント、1番性格変わったのはリエイスさんだよ。こんな楽しい人じゃなかったよ、“闇の書事件”のとき。というか、一緒になったっていうのはユニゾンのことなんだろうなぁと、ボケーとした頭の中で考える。
「ちょーっと話をしよか、ルシル君」
「だな。いろいろ聞きてぇしな」
「我らの家族を泣かした以上は覚悟はしておけ、セインテスト」
「ちょっ、待ってくれ! 一緒っていうのがユニゾンのことだと気付いているだろ!?」
はやてちゃん達に連行されていくルシル君。そんな4人を見送る私とフェイトちゃんとノーヴェ、そしてリエイスさん。
さすがのフェイトちゃんもユニゾンのことだと気付いているようで何も言わない。それ以前にリエイスさんが「ふぅ」と一息吐いて、今さら「まぁユニゾンのことだが」と呟いた。やっぱり嘘泣きだった。
「今の聞いただろう!? リエイスが認めたぞ! 認めたぞ!」
連行されていくルシル君が声を荒げた。大した地獄耳。だけどはやてちゃん達は止まらない。聞こえたのはルシル君だけだった。
「ふむ。真面目な者をからかうのは確かに楽しいな」
「「「鬼だ・・・」」」
今日のルシル君は、リエイスさんのからかい実験によってボロボロにされてたわけだ。哀れ過ぎるよ、ルシル君(涙)。さすがに同情する。これはあんまりだ。
ノーヴェが「様子見てきます」と告げて去っていくのを見送って、私はリエイスさんの声を掛ける。
「どうしてこんなことを・・・?」
「リエイスはルシルのことが好きじゃなかったの?」
私とフェイトちゃんに振り向くリエイスさん。
「好きは好きだが、それは異性ではなくパートナーとしての好き、なのだろう。いや違う。きっと私は彼を異性としても見ていたのだ。知らぬ間にな。だが私は人間ではない。フェイト、私はお前のように彼を幸せには出来ない。だからこそ、今日のこれは彼への想いを断ち切るためのものだ」
そう言って目の端に涙を浮かべつつも綺麗に微笑んだリエイスさん。嘘泣きじゃなく本当の涙。フェイトちゃんはそんなリエイスさんを抱きしめた。
そんなこんなでルシル君とフェイトちゃんとリエイスさんの三角関係は終わりを告げた。
まぁルシル君は、はやてちゃんとヴィータちゃんの射撃魔法から逃げる的にされていたけど。でも女の子を泣かした罰だと思えば軽いものだと思うよ、うん、私は。
「――で、午後の訓練試合のチーム分けは・・・これや!」
モニターに映し出されるチーム表。参加しないけど応援してくれるために集合したヴィヴィオ達も含めた全員が唖然。一言で言えば、ルシル君VS全員。集団リンチとも言える血も涙も無い分け方だった。
「おい、ちょっと待て。イジメとしても逆に清々しくて泣けるどころか笑えてくるぞ」
「古代の英雄様やったら乗り切らなアカンで? なぁルシル君♪」
はやてちゃん達にも説明したんだけどなぁ、リエイスさんの本心(もちろん本人の許可あり)。でもやっぱり最後に泣いたってことを話したのがまずかったか。
「フッ、仕方ないな」
「そうだね。ここは私たちが頑張ろう」
リエイスさんとフェイトちゃんがルシル君の側へ行く。
それから一悶着(ルシル君がリエイスさんとユニゾンしたり)あったけど、ちゃんとチーム分けをして、試合を開始するためにそれぞれが両陣営に分かれて配置に着く。
だから私も、っとその前に・・・。
――シャルちゃん。私たちはシャルちゃんが守ってくれた今を生きてるよ。
だから最大の感謝をこめて、ありがとう。またどこかで逢えることを楽しみに。
親愛なるシャルちゃんの親友を代表して。高町なのはより――
「なのはママーーー!」
「なのはー!」
「はーい! 今行くよー!」
大きく手を振ってるヴィヴィオとフェイトちゃんに応えて、私はみんなのところへ駆ける。
どうか、願わくば幸せが多くある日々でありますように。
「お待たせー!」
そして、どうかどこかで過ごしているシャルちゃんにも幸せが多くある日々が待っていますように。
5th Episode:シアワセの在処 fin
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✝✝✝Another Epilogue✝✝✝
そこは何かしらの船のブリッジらしき場所。数人のスタッフがそれぞれの座席に座り、各々が黙々と仕事をしている。
そんなスタッフの中で楽しそうに談笑している茶色い髪と水色の髪の2人の少女。
茶色い髪の少女は、自分の仕事場である椅子に座りながら、背後に佇むもう1人の水色の髪をした少女に話しかける。
「でもさぁ、クロノ君とイリスちゃんって相性良いから、結構お似合いだよね~」
茶色い髪の少女に“イリスちゃん”と呼ばれた、青い制服を着た水色の髪の少女。
「エイミィ、あまりに突然すぎて、わたしはどう反応すればいいのか判らないんだけど?」
イリスはそう言って苦笑い。エイミィは「なんとなく」とイリスに振り向いて笑った。イリスは、話しに出てきた“クロノ”がブリッジに居ないことを確認して、エイミィに答える。
「う~ん、それはないよ、エイミィ。それにクロノってわたしのタイプじゃないし」
クロノは知らぬ間に1人の少女にフラれてしまった。エイミィは「あらら。可哀想なクロノ君」と苦笑した。
「タイプとかそういうの初めて聞いた。それじゃあどういう人がタイプなの?」
イリスに男性のタイプを聞こうとする。イリスは怪訝そうな表情を浮かべたが、いつもの大して意味も無い話だとした。
「そうだなぁ、クロノと違って年相応に背が高くて、銀髪で、虹彩異色で、からかいがいのある真面目な人」
「「「「「・・・」」」」」
ブリッジ内がいろんな意味で静寂に包まれた。エイミィの隣に座る青年がチラチラとイリスへと視線を向ける。
「うっわぁ、理想が高いというか、8歳でタイプが具体的すぎて引くというか・・・。そんな人が居れば是非に会ってみたいね。でも、どうしてそんなに具体的なの?」
「さぁ? 気付けばそんな風になってたって感じかな。こうね、心がそういう人を望んでるというかなんというか、だね。だから、クロノはエイミィにあげるよ。2人の方がお似合いだし」
イリスは考える素振りをしながら、物心が付く前から気になっている人物像を語った。そしてクロノを、彼の意思を完全無視してエイミィへと献上しようとしていた。
「あはは。未来の選択肢が一気に限定されちゃった」
そうは言うが満更でもなさそうなエイミィ。
「でもフライハイト家の御令嬢の、男性のタイプが聞けるなんてニュースだよね」
「あー、その御令嬢っていうのが嫌いだから管理局に入ったんだよ。知ってるくせに。古代ベルカから続く騎士の家柄なのに、わたしに女の子らしくしなさい、って。わたしは令嬢云々の前に騎士だって言うの。あんな家に居たんじゃ息がつまるよ」
イリスは不機嫌そうに言い、エイミィは「大変だねぇ、ホント」とイリスの頭を撫でた。イリスは「もう、子供扱いしてぇ~」と頬を膨らませたが、気持ち良さそうにしている。
「でもリンディ艦長やグラシア家やカローラ家のおかげで、こうしてわたしは世界のために戦える」
イリスは艦長席に座るこの艦“アースラ”の艦長リンディに振り向く。リンディはイリスの視線に気付き、ニコッとして小さく手を振って、イリスも少し照れながら手を振り返した。
それから少しして、“アースラ”の目的となる映像がメインモニターに映し出される。映し出されたのは、大樹が動き、その大樹と戦う白の少女と黒の少女とオレンジ色の狼。
「イリス」
「はい、任せてください」
イリスはリンディの呼びかけに応え、ゆっくりと歩を進め転送装置へと向かおうとした時、エイミィが小声で尋ねる。
「あれ? イリスちゃんが行くの? クロノ君は?」
「クロノのようなお堅い融通の利かないのが行ったら話がこじれるかもしれないじゃない。見たところわたしと同年代みたいだし、同じ女の子が行った方がいいと思うんだよね。それに、クロノは動けないじゃない。リンディ艦長有するお茶型決戦兵器を間違って飲んで」
「あ~、そうだったね・・・」
2人はリンディに聞こえないように小声で話す。イリスが転送装置の前にまで来たところで、リンディは彼女に今回の任務を告げる。
「これより現地での戦闘行動の停止、ロストロギアの回収、両名からの事情聴取を」
「任務拝命。了解しました」
そう応えると同時にイリスの服装が変わる。きっちりとした青い制服から全体的に白となったフレアードレス。
中衣も白で統一され、前立てのラインは蒼。上まで閉められたファスナーの飾りには桜の花弁が施されている。アウターは前立てのない白いショートジャケット。白銀の籠手と脚甲。そして右手には彼女の身長と同じくらいの桜色の刀が握られている。
「転送可能領域に到着しました」
「それじゃあ、イリス、お願いね♪」
「はい、リンディ艦長。よし、行こうか、キルシュブリューテ」
≪りょ~か~い、戦って殺りましょう♪≫
イリスの携える刀から陽気な声が発せられる。イリスは“キルシュブリューテ”と名付けられた刀をコツンと叩き、足元に魔法陣を展開させた。
「違うバカ剣。止・め・る・の。まったく、誰に似たのか・・・」
≪貴女です、マイスター≫
「うっさい。もぉ・・・コホン。気を取り直して、イリス・ド・シャルロッテ・フライハイト・・・いってきます!!」
――魂はあらゆる世界と時間を巡り巡って、其が果てなく望む在るべき地へといつかは還る。彼女の魂もまた・・・――
「わたしはイリス・ド・シャルロッテ・フライハイト。個人的にはイリスよりミドルネームのシャルロッテっていうのがお気に入り♪っとと、そうじゃなかった。え~と、あなたの名前は?」
「あ、えっと・・・なのは。高町なのは、です」
「ん。よろしく、にゃにょは♪」
「違っ・・・! な・の・は、です!」
「うん、にゃのは♪」
「な・の・は! もしかしてわざと!?」
「いやいやぁ、よろしく、高町♪」
「名字!? そんなに発音しにくいの!?(泣)」
「泣かない泣かない。冗談よ。高町、なのは・・・。なのは。うん、いい名前ね、なのは♪」
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